現地で過ごす日数が、先に決まっている
都市部の会社に勤めたまま地方の役場で働く仕組みを使うと、月のうち何日をその町で過ごすかが契約の前に決まる。総務省の推進要綱は、企業派遣型について、派遣期間の各月で受入自治体の開庁日の半分以上を区域内での業務に充て、全期間を通してもその半分を超えることを求めている(総務省「地域活性化起業人制度推進要綱の一部改正について」令和8年3月23日・総行応第68号)。
副業型とシニア型は条件が違う。月4日以上かつ月20時間以上の勤務に相当する業務に従事し、受入自治体での滞在日数が月1日以上であることが要件だ。企業派遣型は半月ずつ現地にいる働き方、副業型は月に一度は顔を出す働き方である。どちらも、泊まる場所をどうするかという話が避けられない。
しかも、制度は「よそから来る人」に限って対象にしている。企業派遣型と副業型は、派遣や契約の時点で現に受入自治体の区域に勤務している人を除く。シニア型は現にその区域に居住している人を除いたうえで、企業を退職した日からおおむね5年以内という条件も付く。もともと近くに住んでいる人は使えないため、住まいは必ず新しく手当てすることになる。
要綱の対象経費に、住居費の項目はない
では国の財政措置はどこまで面倒を見るのか。要綱の別紙は、特別交付税の対象経費を三つに分けている。受入れの期間前に要する経費、期間中に要する経費、そして起業人が発案・提案した事業に要する経費である。期間中の経費として例示されているのは、企業派遣型なら派遣元企業に対する負担金等、副業型とシニア型なら報償費等、それに研修を受講するための旅費や負担金だ。
| 型 | 期間前の経費 | 期間中の経費 | 発案した事業の経費 |
|---|---|---|---|
| 企業派遣型 | 上限100万円/団体(措置率0.5) | 上限610万円/人(令和8年度から引き上げ) | 上限100万円/人(措置率0.5) |
| 副業型・シニア型 | 上限100万円/団体(措置率0.5) | 報償費等100万円/人+旅費100万円/人(合計200万円) | 上限100万円/人(措置率0.5) |
この区分のどこにも、家賃や宿舎という言葉は出てこない。令和8年4月に出た協定・契約締結の手引も、条件を調整する項目として負担金・報償費等と旅費の支払い方法と時期を挙げるだけで、住居の扱いには触れていない(総務省「地域活性化起業人の活用に向けた協定・契約締結の手引」令和8年4月)。算定の対象になる人の数にも上限があり、同一の派遣元企業から複数名が派遣される場合は受入自治体1団体あたり2名までとされている。
期間前の経費として挙がっているのも、募集やPRにかかる費用、派遣の意向がある企業や本人を現地に案内するためのバスや会場の使用料である。受け入れる前の準備は見てもらえるが、来た人がどこで寝るかは経費の例示から外れている。さらに、受入自治体から従前より給与等を支払われている者や、派遣期間中の主たる勤務地が区域内にない者は算定の対象から除かれる。
家賃相当額を別立てで示した市がある
国の経費区分に項目がないことは、自治体が家賃を持てないことを意味しない。佐賀県小城市は、過疎指定を受けている芦刈地区を起点に観光事業の活性化を進める人材を企業派遣型で募ったとき、費用負担の内訳を三つに分けて示した。派遣期間が6か月となる年度について、給与相当額の上限を4,516,000円、旅費相当額の上限を69,000円、家賃相当額の上限を450,000円とする、という書き方である(小城市「企業人材を募集しています(地域活性化起業人制度)」)。
6か月で45万円なら、月あたり7万5千円が上限ということになる。企業派遣型で国が見るのは1人あたり610万円までの一般財源なので、給与相当額と旅費相当額、家賃相当額を合わせた支出がその範囲に収まれば、家賃分も措置の内側に入る。つまり住居費は、独立した枠としてではなく、負担金等の総額の一部として処理されている。
逆に言えば、家賃を負担するかどうかは募集要項の書きぶりで決まる。要項に家賃相当額の行がなければ、宿の費用は自分で見るのが原則になる。応募は市町村の公募から始まるで触れたとおり、入口の文面が条件のすべてになる制度である。
副業型は旅費の枠で滞在をまかなう
石川県珠洲市は、地域おこし協力隊員の伴走支援にあたる人材を副業型で募っている。費用負担のうち報償費は年間100万円を限度とし、旅費については「本業務に必要な移動及び滞在のために支出した実額」を年間100万円を限度として負担すると書いた(珠洲市「副業型地域活性化起業人を募集します」)。移動と滞在を一つの枠にまとめているため、泊まる費用は旅費として精算される。
京都府笠置町の副業型の要項も、報償費等と旅費をそれぞれ年間100万円まで、合計200万円を上限として負担するとし、別に事業活動費を100万円まで見るとしている。勤務形態は月4日以上かつ月20時間以上で、うち町内で月1日以上滞在することと明記されていた。要綱の要件をそのまま要項に落とした形で、住居費の行は置かれていない。
月に1日か2日の滞在であれば、宿に泊まるほうが部屋を借りるより安い。旅費の枠で滞在費を見るという整理は、この働き方の実態に合っている。一方で企業派遣型のように毎月開庁日の半分以上を現地で過ごす場合、宿泊の積み上げはすぐに旅費の枠を超えるため、小城市のように家賃相当額を別に示すほうが収まりがよくなる。
協力隊との違いと、応募前に確かめる点
同じ総務省の制度でも、地域おこし協力隊は住居の借上費が措置の対象に入っている。隊員は任期の間その地域に住民票を移して住むため、住まいが制度設計の前提に組み込まれているからだ。両者の違いは協力隊の住居は自治体がどこまで持つかと読み比べると分かりやすい。起業人は会社に在籍したまま通う形なので、住むことそのものが要件になっていない。
応募する側が確かめる点は三つに絞られる。家賃や宿泊費の負担が要項に書かれているか、旅費の枠に滞在費が含まれるか、現地にいる日数の要件を自分の勤務と両立できるか。期間は6か月以上3年以内で、同一の人物が同じ自治体で対象となるのは通算3年が上限、同時期に起業人として関われるのは1つの市町村だけという制限もある。
受け入れる側は、住まいの手当てを協定の条件調整の段階で詰めておくことになる。制度の概要や対象団体の範囲は総務省の制度ページで確認できる。地域の仕事に関わる入口を探している学生なら、FLASPOのような窓口から現場の募集を当たるという方法もある。
同じ派遣元企業から続けて受け入れる場合も、制度の対象は3年が上限になる。ただし前回の対象期間が終わってから1年が経てば、同じ企業からの受入れでも再び対象になる。住まいを長く確保するつもりで契約を組むと、この区切りに合わなくなることがある。
よくある質問
家賃を自治体が負担してくれる募集はどれくらいあるのか。公表された集計はない。確かめられるのは個々の要項の文面だけで、小城市のように家賃相当額を明記する例と、笠置町のように旅費だけを示す例が並んでいる。応募前に要項の費用負担の項を読み、記載がなければ自治体に問い合わせるしかない。
空き家や町営住宅を貸してもらえるのか。要綱にその定めはない。自治体が独自に用意する場合は要項や協定で示されるため、同じ型の募集でも扱いは自治体ごとに違う。制度として保証されたものではないと考えておくのが安全だ。
受入自治体の近くに住んでいる人は使えないのか。企業派遣型と副業型は、派遣や契約の時点でその区域に勤務している人を対象から外している。シニア型は現にその区域に居住している人を外しており、在職時から転居していない場合などの例外が要綱に書かれている。自分が該当するかどうかは、勤務地と居住地の両方で判定される。
旅費の上限は年度の途中から始めると変わるのか。変わる。珠洲市も笠置町も、年度の途中から始まる場合は限度額を月割りで計算すると明記している。笠置町の要項は10月から始めた場合に100万円の6か月分として50万円になる例まで示している。半年分の活動に年間の上限がそのまま付くわけではない。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
