シラバスに「地域」と書かれた授業が増えた実感はあるのに、それが全国でどれだけ開かれているのかは意外と出てこない。理由のひとつは、国の調査にサービスラーニングという欄がないことだ。文部科学省は別の名前で数えていて、その数字を並べ替えると、地域に出る授業の広がりと手薄なところが見えてくる。
国の調査には、この名前の項目が立っていない
文部科学省は毎年度、全国の大学に教育内容の改革状況をたずねている。令和5年度の調査は786大学が回答し、回答率は99パーセントに達した。この調査にはアクティブ・ラーニングやキャリア教育の実施状況が細かく並ぶが、サービスラーニングという選択肢は置かれていない。
近いものは二つある。ひとつが「ボランティア活動を取り入れた授業科目」、もうひとつが「大学と企業等とで連携して実施する、企業の課題解決や製品開発等を題材とした授業科目」、いわゆるPBLである。地域の課題に学生が入って単位になる授業は、現場ではひとまとめに語られても、統計の上ではこの二つに割り振られて数えられている。
この分かれ方は、数字を読むときの前提になる。地域の高齢者の生活支援に入る授業はボランティアの側に、商店街の商品開発に入る授業はPBLの側に乗りやすい。同じ地区で同じ学生が動いていても、相手が自治会か企業かで集計上の居場所が変わる。だから「サービスラーニングを導入している大学は何校か」という問いには、公的な統計から一つの答えを出せない。
ボランティアを授業にした大学は、478から509へ
数えられている側を見ていく。ボランティア活動を取り入れた授業科目を開設していると答えた大学は、令和元年度が478大学で約64パーセント、令和5年度が509大学で約67パーセントだった。4年で31大学、3ポイントほどの増加である。
伸びの小ささは、見方によって評価が変わる。上限に近いところまで行き渡ったとも読めるし、残った3割の大学には別の事情があるとも読める。大学院のみを置く大学は母数から外されているので、この3割は学部をもつ大学のなかの3割だ。
| 取組 | 令和元年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|
| ボランティア活動を取り入れた授業科目の開設 | 478大学(約64%) | 509大学(約67%) |
| ボランティア活動を支援するセンター等の設置 | 36.7% | 38.2% |
| 教育課程内のキャリア教育の実施 | 726大学(約98%) | 747大学(98%) |
| 教育課程内のPBLの実施 | ― | 344大学(約45%) |
| 教育課程外のPBLの実施 | ― | 167大学(約22%) |
比較のために能動的学修の数字を置くと、アクティブ・ラーニングを取り入れた授業を実施している大学は97.0パーセントである。教室のなかで学生を動かすところはほぼ全ての大学に行き渡っているのに、教室の外に出す授業は7割弱で止まっている。壁は方法論ではなく、外に出たあとの段取りにあると見るのが自然だ。
支える人の側は、3大学に1つしかない
授業があることと、それを回す体制があることは別である。学生のボランティア活動を支援するためのセンター等を設置している大学は38.2パーセントで、令和元年度の36.7パーセントからほとんど動いていない。科目は67パーセントの大学にあるのに、専門の窓口は4割に届かない。
この差が学生に何をもたらすかは想像しやすい。受け入れ先を探すところ、保険に入るところ、事故が起きたときに誰が間に立つかというところが、担当教員一人の手持ちの人脈に乗る。教員が異動すれば受け入れ先との関係も切れ、翌年の履修者は同じ地区に入れないことがある。
全学の支援体制のなかでの順位を見ると、就職支援のセンター等が84.1パーセント、アドバイザー制が58.4パーセント、全学共通の教養教育のセンター等が38.0パーセント、初年次教育のためのセンター等が26.7パーセントである。ボランティアの窓口は、教養教育のセンターと同じくらいの位置づけで整備されている。就職支援と比べて半分以下という並びは、地域に出る授業が大学の中でどこに置かれているかをそのまま示している。
企業と組むPBLは課程内45パーセント、課程外22パーセント
もう一方の数え方も見ておきたい。教育課程内でキャリア教育を実施している大学は747大学、98パーセントに達する。そのなかで企業の課題解決や製品開発を題材にしたPBLを置いているのは344大学、約45パーセントだった。
内訳を同じ調査で並べると、勤労観や職業観の育成を目的とした授業科目が676大学で約89パーセント、資格取得や就職対策を目的としたものが649大学で約85パーセント、将来の設計を目的としたものが645大学で約85パーセントとなる。PBLはキャリア教育のなかでは少数派の取り組みで、ジョブ・カードを扱う授業の37大学ほどではないが、主流からは一段離れている。
教育課程の外に出ると比率はさらに下がる。課程外でキャリア教育を行う大学は724大学で95パーセントあるのに、課程外のPBLは167大学、約22パーセントにとどまる。単位の外側で企業や地域と組む取り組みは、学生の自主性に委ねられて数が伸びにくい。裏返せば、単位になる形に落とせた大学だけが外部との連携を続けられている。
学生の側から、どの授業を選ぶかの判断材料にする
これらの数字は、履修を決める前の確認項目に翻訳できる。見るべきはシラバスの美文ではなく、受け入れ先が固定されているか、支援の窓口が学内にあるか、単位の中か外かの三点である。窓口があれば担当教員が変わっても関係が残り、単位の中なら時間の確保が制度として守られる。
地域に入る授業は、相手にとっても負担のある取り組みだ。受け入れ側が毎年同じ説明を繰り返す羽目になれば、関係は数年で切れる。学生が履修前に地区の課題を自分で調べ、終わったあとに成果を残す形をつくれるかどうかが、次の年の後輩が入れるかどうかを決める。学生と地域をつなぐ取り組みを扱うFLASPOでも、継続する枠と単発で終わる枠の差はここに出ると見ている。
国の制度の側も、授業の外枠を少しずつ整えている。大学と地域の連携には特別交付税の枠が用意され、滞在日数や経費の区分が決められている。履修する授業がそうした公費の枠に乗っているなら、旅費や滞在費の扱いが安定していて、学生の自己負担が読める。募集要項や募集案内に財源の名前が出ているかどうかは、地味だが有効な判断材料になる。
よくある質問
サービスラーニングとボランティア科目は同じものですか。
重なりますが同じではありません。学んだ内容を地域の活動に当て、その経験を授業に戻す往復があるものがサービスラーニングと呼ばれます。国の調査はこの往復の有無を問わず、ボランティア活動を取り入れた授業科目として数えています。
導入している大学の数を一つの数字で言えますか。
公的な統計からは言えません。文部科学省の調査に該当する選択肢がなく、近いものがボランティア科目の509大学とPBLの344大学に分かれています。両者には同じ授業が入りも抜けもするため、足し合わせた数には意味がありません。
単位にならない課外活動でも効果は同じですか。
続きやすさが違います。教育課程外のPBLが167大学、約22パーセントにとどまる一方、課程内は344大学あります。単位の中に入れた取り組みのほうが時間と予算の裏づけを持ち、翌年も同じ地区に入れる確率が高くなります。
地方の大学のほうが機会は多いのでしょうか。
この調査は設置者や地域別の内訳をこの項目では示していないため、断定はできません。確かめられるのは学内の体制の有無で、ボランティア活動の支援センター等がある大学は全体の38.2パーセントです。志望校の一覧でこの窓口の有無を調べるほうが、所在地で推測するより確実です。
出典:文部科学省「令和5年度の大学における教育内容等の改革状況について(概要)」(PDF)、文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について(令和元年度)」。関連記事:大学のフィールドワークに国が出す枠、大学のゼミが地域に入る450件、農業体験をガクチカにするには。
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