副業のマッチングはどこで起きているか|公的拠点45道府県と成約1,859件

地域の仕事を副業で受けたいと思って検索すると、登録を促す民間のマッチングサイトがいくつも並ぶ。案件がすぐ見えるのは便利だが、その手前に公の側が置いた窓口があることはあまり知られていない。入口ごとに何が違うのかを、公表されている件数で比べてみる。

45道府県に、企業と人材をつなぐ拠点が置かれている

内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局と内閣府地方創生推進室が令和7年5月22日にまとめたプロフェッショナル人材事業の資料によれば、45の道府県が「プロフェッショナル人材戦略拠点」を設置している。各拠点は地域企業の経営者を訪ね、経営課題を聞き取ったうえで、どんな人材が要るのかを言葉にする役割を担う。

整理されたニーズは、拠点と提携する人材紹介会社へ渡る。求人票が先にあるのではなく、企業の課題を掘り起こしてから募集の形を作るという順番だ。この事業はデジタル田園都市国家構想総合戦略のなかで、デジタル人材の地域還流を進める施策として位置づけられている。

積み上げの規模も示されている。制度が始まった平成27年度からの累計で、相談は120,008件、成約は32,496件に達した。常勤雇用だけでなく、副業や兼業を含めた多様な形での引き合わせを進めるとも明記されている。民間サイトの件数と並べて語られることは少ないが、母数としては小さくない。

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成約の3割が、副業と兼業に変わった

年度ごとの推移を見ると、この5年で中身が入れ替わってきたことがわかる。同じ資料に載っている成約件数と、そのうち副業・兼業が占める件数を並べる。

年度 成約件数(件) うち副業・兼業(件) 副業・兼業の割合
令和2年度 3,363 336 10.0%
令和3年度 4,293 767 17.9%
令和4年度 4,584 964 21.0%
令和5年度 5,240 1,303 24.9%
令和6年度 6,399 1,859 29.1%

全体は3,363件から6,399件へ、およそ1.9倍になった。伸びを押し上げたのは副業・兼業のほうで、336件から1,859件へ5.5倍に増えている。構成比は10.0パーセントから29.1パーセントまで上がった。常勤での転職が減ったのではなく、常勤が3,027件から4,540件へ増えたうえに、副業・兼業がそれを上回る速さで積み上がった形だ。

地域企業の側から見れば、年収の高い専門人材を常勤で抱えるのは重い。資料でも、任せる仕事が常にあるわけではないという事情が挙げられている。必要な業務を必要な時だけ委託できる形が、体力に劣る企業の現実解として広がったという説明になっている。

月収10万円以下が85パーセントという水準

金額の感覚を持っておきたい。令和5年度の事業実績をもとにした集計では、副業・兼業で関わる人の月収は10万円以下が85パーセントを占めた。10万円台が8パーセント、20万円台が2パーセントと続き、残りはごく少数である。常勤雇用の年収が400万円以下42パーセント、400万円台31パーセントに分布しているのとは、桁が違う。

任される仕事の中身も分かれている。常勤雇用では生産性向上が43パーセントで最も多いのに対し、副業・兼業では販路拡大が40パーセントで首位に立つ。経営管理が24パーセント、生産性向上が18パーセント、事業分野拡張が15パーセントと続く。外から来る人には、社内の仕組みを作り替える役より、売り先を増やす役が回りやすいということだ。

需給の向きも押さえておきたい。資料は副業・兼業の求人倍率が1倍以下であると指摘しており、企業にとっては探しやすい環境にあると説明している。受け入れた企業の64.3パーセントが業績や生産性の向上につながったと答えた、という結果も併記されている。副業の側から見れば、競争相手は多いが受け入れた側の評価は悪くない、という読み方になる。収入の組み立て方は地方の副業者比率を扱った記事とあわせて考えたい。

自治体が直接契約する副業は、別の枠で数えられている

相手が企業ではなく役所である場合、使われる仕組みは変わる。総務省の令和7年度 地域活性化起業人の状況等によれば、この制度で地域に関わった人は1,215人で、内訳は企業派遣型904人、副業型299人、シニア型12人だった。受け入れた自治体は企業派遣型が477団体、副業型が148団体、シニア型が10団体である。

副業型の条件は総務省の制度説明資料に書かれている。勤務日数と時間は月4日以上かつ月20時間以上で、リモートでの従事も認められる。受け入れた自治体には特別交付税措置があり、報償費等と旅費を合わせて1人あたり上限200万円という枠が置かれている。制度の輪郭は派遣の決まり方を整理した記事に詳しい。

年齢の分布も公表されている。1,215人全体では40歳台が26.5パーセントで最も多く、30歳台24.6パーセント、50歳台23.4パーセント、20歳台14.6パーセント、60歳以上10.9パーセントと並ぶ。男女比は男性77.9パーセント、女性22.1パーセントだった。20歳台が7人に1人いる構成は、若い世代に閉じた制度ではないことを示している。

サイトを開く前に確かめる三つのこと

入口が複数あるぶん、同じ「地域の副業」という言葉でも中身が揃わない。最初に見分けたいのは契約の形である。企業と結ぶ業務委託なのか、自治体が結ぶ委嘱や会計年度任用職員なのかで、報酬の出方も税金の扱いも変わる。募集ページに契約形態が書かれていなければ、問い合わせて確かめる価値がある。

二つ目は、その案件がどこから出てきたかだ。拠点を経由する案件は、企業訪問でニーズを言語化したうえで人材紹介会社へ渡る流れをとる。民間サイトに自社で直接掲載する企業もある。前者は課題の整理が済んでいる確率が高く、後者は掲載までが速い。どちらが良いかではなく、準備の度合いが違う。

三つ目は期間である。副業型の自治体案件には月4日以上という下限があり、企業の委託案件には3か月といった区切りが置かれることが多い。終わりが決まっている仕事に、終わらない関わりを期待すると齟齬が出る。学生のうちから地域と接点を作りたいなら、FLASPOのような場で先に関係を持っておくほうが、副業の募集が出たときに動きやすい。

よくある質問

「プロフェッショナル人材戦略拠点はどこにあるのか」。45の道府県に設置されている。都道府県の産業振興を担う部署や、地域の金融機関と連携して運営されている例が多く、窓口の名称は自治体ごとに異なる。まずは居住地や関わりたい地域の道府県名と拠点名で探すのが早い。

「学生でも副業の案件に応募できるのか」。業務委託の形であれば年齢や在学は制度上の壁にならないが、拠点が扱う案件は企業の経営課題に直結するため、実務経験を求めるものが大半である。地域活性化起業人の副業型は、企業等に所属する社員が副業として従事する枠なので、在学中の学生はそのままでは対象にならない。

「月収10万円以下が大半なら、生活の足しにはならないのではないか」。この事業で引き合わされる副業は、収入の柱を作るための仕組みではない。資料でも、常勤で25万円かかる業務を3万円から5万円の3か月契約で頼める点が企業側の利点として挙げられている。関わり方を増やす手段として見るほうが実態に合う。

「成約32,496件のうち、どれが副業なのか」。この数字は平成27年度からの累計で、常勤雇用を含む。年度ごとの内訳が公表されているのは令和2年度以降で、直近の令和6年度は6,399件のうち1,859件が副業・兼業だった。累計のまま比率を語ると実態より低く見えるので注意したい。

「どの時期に探せばよいか」。自治体の副業型は年度単位で募集されることが多く、春と秋に案内が出る傾向がある。企業側の委託案件は通年で動くため、拠点や紹介会社に登録しておいて声がかかるのを待つ形になる。急ぐ理由がなければ、両方に線をつないでおくのが無難だ。


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