構想が実装に移った日付がある
関係人口の先行きを占うなら、2026年3月27日を押さえておきたい。この日、総務省はふるさと住民登録制度のガイドライン第1.0版を公表すると同時に、モデル事業の対象自治体を決めた。目標が掲げられた段階から、実際に動かす自治体が名指しされる段階へ移ったことになる。
公募には161団体が手を挙げた。審査を経て選ばれたのは、都道府県と市町村が組む連携モデルが7道県、単独で取り組む個別市町村モデルが21市町村である。連携モデルの域内では37の市町村が個別にも応募しており、これらは道県と同時に採択する扱いになった。1,700を超える自治体のうち161という応募数は、熱狂というほどではないが、制度が動く前の段階としては少なくない。
制度そのものの開始時期について、総務省のふるさと住民登録制度のFAQは、2026年度中の開始を目指して準備を進めていると記している。つまりモデル事業は、本番の前に仕組みを試す場として置かれている。ここで何がうまくいかなかったかが、そのまま次の設計に跳ね返る。
選び方についても説明が残っている。林総務大臣は同じ日の閣議後記者会見で、提案内容のほか人口規模や地域のバランスも踏まえて選んだと述べている。先進的な自治体だけを並べても、本番で全国に広げるときの参考にならないという判断だろう。
選ばれた顔ぶれの偏りを読む
連携モデルの7道県は、域内で一緒に動く市町村の数が大きく違う。北海道だけが16市町を抱え、残りは2から7の範囲に収まる。
| 道県 | 域内の個別応募市町村 | 提案の軸 |
|---|---|---|
| 北海道 | 16市町 | 振興局を拠点に広域で市町村を支援 |
| 宮城県 | 3市町 | 市町村間を行き来する広域的関係人口 |
| 富山県 | 2市 | 県独自のモデル事業を併せて展開 |
| 長野県 | 7市町村 | アドバイザー配置と会員制度の活用 |
| 和歌山県 | 2市町 | 交通費負担軽減の実証を踏まえた来訪促進 |
| 鳥取県 | 4市町 | 県と市町村の既存制度を深める |
| 高知県 | 3市町村 | 地域支援企画員と担い手活動のマッチング |
個別市町村モデルの21団体は規模の幅が広い。最小は山梨県小菅村の616人、最大は愛知県豊橋市の366,089人で、600倍近い開きがある。人口の少ない村と中核市が同じ枠に並ぶのは、制度が特定の規模を前提にしていないことの表れでもある。既に手持ちの仕組みを持つ自治体が目立つのも特徴で、岐阜県飛騨市は会員17,000人超のファンクラブと参加者5,000人超の担い手マッチング事業をアプリ上で一元化すると提案している。
名前の挙がった団体を数え直すと、7道県と21市町村に、連携モデルの域内で個別にも応募した37市町村を足して65になる。応募した161団体の4割ほどが何らかの形で先行する計算で、残りは制度の開始を待つ側に回る。先に試した側の報告が、後から入る自治体の手間を減らすかどうかが問われる。
二段構えの登録が、関わりの密度を測る
仕組みの中心にあるのは登録の形である。ベーシックとプレミアムの二段構えで、要件も扱いも分かれている。
| 項目 | ベーシック登録 | プレミアム登録 |
|---|---|---|
| 要件 | 関心のある自治体を登録するだけ | 年3回以上の担い手活動など |
| 本人確認 | 不要(任意でマイナンバーカード) | マイナンバーカードで必須 |
| 登録できる数 | 上限なし | 3団体まで |
| 住所地の登録 | 可能 | 不可 |
| 更新 | 不要 | 原則1年ごと |
注目したいのはプレミアムの3団体という上限と、1年ごとの更新である。関係人口は広げるほど良いという語られ方をしてきたが、この制度は濃い関わりの側に意図して枠をはめている。手を広げるのではなく、どこに腰を据えるかを選ばせる設計といえる。市区町村を登録すると、本人の同意があれば所属する都道府県も同時に登録される仕組みも用意されている。
更新を毎年求める点も効いてくる。関わりが途切れた人は自然に外れるため、登録者数がそのまま実態を映しやすい。数だけを追うと自治体は入口を広げたくなるが、プレミアムの側は絞る方向に作られているため、両方を同時に追う形になる。
自治体側に流れるお金の形
制度が続くかどうかは、受け入れる側の懐事情で決まる面が大きい。令和8年度の財政措置は三つに分かれている。情報発信や受入環境の整備などの取組経費は特別交付税の対象で、事業費1,000万円を上限とし、措置率は0.5、財政力による補正がかかる。
二つ目が人である。ふるさと住民コーディネーターを置く場合、専任なら1人あたり500万円、兼任なら1人あたり40万円が上限として措置される。情報発信や企画運営、登録した人からの相談対応を担う役回りで、制度の良し悪しがこの人の働きに左右される部分は小さくない。三つ目は、自治体独自のサイトやアプリをふるさと住民アプリとつなぐ改修費で、こちらはデジタル活用推進事業債の対象になる。
システムの利用料についても線が引かれている。令和9年度までに参加する自治体には一定期間の負担を求めず、令和10年度以降の扱いは今後検討するとされている。早く入るほど負担が軽いという設計は、様子見を続ける自治体に期限を意識させる。登録制度をめぐる自治体側の動きは関係人口のデジタル窓口は誰が回すのかでも触れたが、独自に積み上げてきた仕組みをどう接続するかが当面の課題になる。
提案書に若い世代がどう書かれているか
採択された提案を読むと、学生や若年層を名指しした団体がいくつもある。岩手県陸前高田市は、大学生や若者にアプリを通じたボランティア参加を促すだけでなく、コンテンツの企画に関わる機会を設けて担い手を育てるとしている。長崎県佐世保市は市内15の高校等と連携協定を結び、地域課題の探究学習を進めることで、将来の還流と定着につなげる構えである。
この二つに共通するのは、来てもらうことより、決める側に入れることを先に書いている点だ。イベントの参加者として数えるだけなら従来の交流施策と変わらない。企画に関与させる、学習の題材にするという形は、関わりの回数を増やすのではなく、関わりの質を変えようとしている。若い世代の関わり方の傾向はZ世代と関係人口はどこで接するかで数字を追ったが、入口の作り方そのものが制度の中に入ってきたのは新しい。
学生の側から見ると、年3回以上という担い手活動の目安は、長期休みを使えば届かない水準ではない。FLASPOのように学生と地域をつなぐ取り組みを入口にして、登録まで進む動線も考えられる。制度の現在地そのものは関係人口の現状を数字で確かめるにまとめてある。
よくある質問
登録するとふるさと納税のような返礼品がもらえるのか。登録そのものに対する返礼品はない。プレミアム登録者向けのサポートとして想定されているのは、イベントへの招待、祭りでの役割、被災時の優先的な避難受入、公共施設の住民並みの利用、移動や宿泊の支援などで、現地に行かなくても受け取れる物品の提供は禁じられている。
出身地やゆかりのない地域でも登録できるのか。できる。FAQは、地域に関心があれば誰でも利用でき、登録は無料だと明記している。ベーシック登録については住所地の自治体も対象に含まれる。
担い手活動は誰が決めるのか。自治体が指定する。指定の考え方として、人口減少などを背景とした担い手不足への対応であること、公共性や地域への貢献が十分に認められることの二点が示されており、民間団体の活動も考え方に合えば対象にできる。
モデル事業に選ばれなかった自治体は参加できないのか。モデル事業は先行して試す枠であり、制度の開始後は利用申請を経て参加する形になる。手続きの詳細は全国説明会や特設サイトで順次案内されるとされている。
マイナンバーカードを持っていないと使えないのか。ベーシック登録は本人確認が不要で、カードがなくても登録できる。カードが必須になるのはプレミアム登録と、その年ごとの更新の場面である。
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