募集が出る市町村は、先に決まっている
求人サイトを開いて「地域」「副業」と打ち込んでも、出てくるのは都市の在宅案件ばかりという経験は珍しくない。地域と関わる副業の募集が薄いのは需要が無いからではなく、入口が普通の求人市場の外に置かれているからである。
総務省の「地域活性化起業人」の資料は、制度を使える自治体を三大都市圏外の市町村と、三大都市圏内でも条件不利地域を有する市町村・定住自立圏に取り組む市町村・人口減少率が高い市町村に限り、その数を1,433市町村と書いている(総務省「地域活性化起業人等について」)。送り出す側にも線が引かれ、三大都市圏外の政令市・中核市・県庁所在市に所在する企業の社員を使える受入団体は1,375市町村とされる。
この線は、自治体が負う経費に特別交付税が付くかどうかの線である。原資が付かない市町村は募集を出しにくい。つまり「どこで探すか」の前に「どこなら募集が成り立つか」が決まっている。過疎地域の指定状況は過疎地域の都道府県別一覧で確かめられる。
契約として副業に入る枠は、最低ラインが数字で決まっている
勤め先に籍を置いたまま自治体と契約する形は、地域活性化起業人の「副業型」にあたる。同じ資料は、勤務日数と時間を月4日以上かつ月20時間以上、受入自治体での現地滞在日数を月1日以上、契約期間を6か月から3年と定めている。退職した個人を対象とする「シニア型」も同じ条件で並んでいる。
自治体側に入るお金も上限がある。受入れ期間中の経費は報償費等が上限100万円、旅費が上限100万円で、合計の上限は1人あたり200万円。受入れ前の経費は1団体100万円を上限に措置率0.5、本人が発案・提案した事業の経費は1人100万円を上限に措置率0.5となる。企業から社員を送り込む「企業派遣型」の上限が1人610万円であることと比べると、副業型は桁が一つ小さい枠に収まっている。
探す側にとって大事なのは、この数字が募集要件にそのまま出てくる点だ。月4日・20時間・現地1日が守れない働き方では、そもそも応募が通らない。制度の人数や内訳は地域活性化起業人の内訳を扱った記事でも追っている。総務省はこの制度に登録制のマッチングプラットフォームを設けており、自治体側の課題と、副業に関心のある個人の側が提供できることを、それぞれ登録して突き合わせる場になっている。
稼ぎながら滞在する枠は、年ごとの実施自治体を見て探す
二週間ほど休みを作れるなら、働いて収入を得ながら滞在する枠もある。総務省の資料は、ふるさとワーキングホリデーを概ね2週間から1か月の滞在と説明し、平成28年4月から令和8年3月までの参加者を6,856名と記している(総務省「ふるさとワーキングホリデーについて」)。
実施規模は年によって動く。令和7年度は59団体で877名、令和6年度は66団体で858名。令和3年度の303名から人数は増えたが、取り組む自治体の数は令和6年度の66団体を頂点に減っている。参加者の約9割が満足し、約9割が再訪意向を示したとも書かれている。
探し方の実務は単純で、年度ごとの実施自治体一覧を当たることになる。令和7年度は岩手県・福島県・鳥取県・沖縄県といった県単位の実施に加え、高知県内の十数市町村が名を連ねた。自治体に入る経費の上限は1団体あたり15,000千円に全参加者の延べ滞在日数×5千円を足した額で、措置率は0.5。募集の告知は専用のポータルサイト furusato-work.jp と、年4回程度のオンライン合同説明会に集まる。参加の流れそのものはふるさとワーキングホリデーの解説記事にまとめている。
就労先の種類も資料に例示がある。農業や特産品の加工、旅館・ホテル、酒造業、窯業などの製造業、スキー場や伝統工芸販売といった観光業が並ぶ。受入側の繁忙期に合わせて人手が要る仕事が中心で、自分の職能をそのまま持ち込む副業とは性格が違う。令和7年度の実績では宮城県気仙沼市が110名、徳島県鳴門市が50名、新潟県南魚沼市が48名を受け入れた一方、茨城県水戸市は内定直結型の設計で4名にとどめている。人数の多寡は地域の規模より、プログラムの狙いの違いに近い。
学生には大学ごと入る道が新しく開いている
在学中であれば、個人で応募する前に大学の窓口を見るほうが早い場合がある。令和7年度に立ち上がった「ふるさとミライカレッジ」は、自治体が大学等と連携して学生のフィールドワークを受け入れる形を支える仕組みで、令和8年度はモデル事業を定額500万円×15か所程度で実施している(総務省「ふるさとミライカレッジについて」)。
採択された15団体の組み合わせは具体的だ。青森県八戸市が早稲田大学・慶應義塾大学・武蔵野大学、奈良県明日香村が大阪成蹊大学・阪南大学ほか5大学、徳島県美波町が大阪大学・神奈川大学・日本大学といった形で並ぶ。令和8年3月に運用が始まったマッチングウェブサイトには、令和8年8月末時点で96自治体・113大学が登録している。
予算の付き方も見ておきたい。令和9年度の概算要求額は205百万円で、令和8年度当初の18百万円に令和7年度補正の187百万円が乗る形から、本体予算へ移そうとしていることが読める。学生の関わり方の選び方についてはFLASPOでも地域とのプロジェクトを扱っている。
対面で探す場所もある。総務省は東京駅八重洲口に「移住・交流情報ガーデン」を平成27年3月28日に開設し、移住相談会やフェアの会場として無料で使える空間と、地域おこし協力隊の資料を置く棚を設けている。令和9年度の概算要求額は100百万円で、令和8年度当初と同額である。ミライカレッジのマッチングイベントも令和8年度は仙台・福岡・愛知・大阪・東京の5会場で順に開かれており、画面の向こうではなく人に会って聞ける機会は残っている。
3つの枠を並べて、自分の時間に合う入口を選ぶ
同じ「地域で副業」でも、求められる時間の形が違う。月単位で継続的に関わるのか、まとまった休みを一度に使うのか、大学の活動として入るのかで、見に行く窓口が変わる。
| 枠 | 期間・最低条件 | 自治体への措置上限 | 募集を探す場所 |
|---|---|---|---|
| 地域活性化起業人(副業型・シニア型) | 契約6か月〜3年/月4日以上かつ月20時間以上/現地滞在月1日以上 | 期間中200万円/人(報償費等100万+旅費100万) | 総務省のマッチングプラットフォーム、自治体の募集 |
| ふるさとワーキングホリデー | 概ね2週間〜1か月の滞在 | 15,000千円/団体+5千円×延べ滞在日数(措置率0.5) | ポータルサイト、年4回程度の合同説明会 |
| ふるさとミライカレッジ | 大学等との連携プロジェクト(学生のフィールドワーク) | 15,000千円/団体+5千円×延べ滞在日数(措置率0.5)/モデル事業は定額500万円 | マッチングウェブサイト、大学の窓口 |
注意したいのは、どの枠も参加者の飲食費が対象経費から外れている点である。滞在費や移動費は自治体の経費として扱える一方、食べるぶんは自分で持つ前提になっている。募集要項に「滞在費負担」と書かれていても、生活費がまるごと消えるわけではない。
よくある質問
勤め先の許可は必要か。副業型は自治体と個人が契約する形なので、所属企業の就業規則に従う必要がある。制度側が企業の同意を代行してくれるわけではない。
報酬はどのくらいか。副業型で自治体に入る報償費等の上限が1人100万円であることから、通年で関わっても月あたりの水準は限られる。収入を主目的に置くより、関わりを作る費用が賄われると考えるほうが実態に近い。
住民票を移す必要はあるか。移す前提なのは地域おこし協力隊で、副業型やワーキングホリデーは生活の拠点を移さずに関わる枠である。両者の違いは任用の形とお金の出方に表れる。
募集が見つからない地域に関わりたいときはどうするか。1,433市町村の外にある市町村は制度の原資が付かないため、自治体の単独事業か民間の仲介を探すことになる。制度の枠から外れていると分かれば、探す場所を切り替えられる。
社会人でもミライカレッジに入れるか。対象は学生のフィールドワークであり、社会人は副業型かワーキングホリデーのほうが近い。大学院に在籍している場合は、所属大学が連携先になっているかを確かめる価値がある。
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