秋田県の176人のうち77人が一つの村にいる
協力隊の人数を県の合計で眺めていると、応募先ごとの事情は見えてこない。秋田県の内訳を開いたとき、数の偏り方が他の県とはっきり違っていた。
総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の隊員数等の資料によると、全国の隊員数は8,196人で前年度から286人増えた。取組自治体は1,187団体で、受入可能自治体1,461団体の約81パーセントにあたる。秋田県は隊員176人、受入自治体23団体である。
市町村別の表をたどると、東成瀬村に77人と記されている。県内で2番目に多い能代市の14人の5倍を超え、県庁所在地の秋田市は3人である。県の隊員のうち4割強が、この村ひとつに集まっていることになる。
| 市町村 | 受入隊員数 |
|---|---|
| 東成瀬村 | 77人 |
| 能代市 | 14人 |
| 大館市 | 11人 |
| 大潟村 | 9人 |
| 横手市・にかほ市・羽後町 | 各6人 |
| 大仙市・三種町 | 各5人 |
| 秋田市・男鹿市・仙北市 | 各3人 |
| 秋田県合計 | 176人(23団体) |
総務省の令和7年度資料の市町村別表より作成した。全国の分布から入りたい場合は地域おこし協力隊の地域別ガイドに8,196人の内訳がある。
人口2,704人という母数のほうを見る
77人という数が重いのは、受け入れる側の規模が小さいからである。村の人口は国勢調査で何人なのかを先に置いておきたい。
村が令和8年3月にまとめた東成瀬村人口ビジョンによると、人口は1947年の6,220人をピークに減り続けてきた。2020年10月の国勢調査では2,704人となり、2015年の2,610人から増加に転じている。ビジョンはこの増加の主な要因を、成瀬ダム建設事業による事業者の一時的な転入と書いている。
先の見通しは厳しい。国立社会保障・人口問題研究所が2023年12月に公表した推計では、2050年の人口は1,404人になる。年齢3区分で見ると落ち込みはさらに急である。
| 区分 | 2020年 | 2050年(推計) |
|---|---|---|
| 総人口 | 2,704人 | 1,404人 |
| 生産年齢人口(15〜64歳) | 1,455人 | 503人 |
| 年少人口(0〜14歳) | 206人 | 71人 |
| 老年人口(65歳〜) | 1,043人 | 830人 |
東成瀬村人口ビジョンの表1および表2より作成した。生産年齢人口の2050年値は2020年値の約3分の1にあたる。
この母数に対して隊員が77人いる。人口の2.8パーセント相当という水準で、全国の平均が1自治体あたり7人前後であることと比べると桁が違う。ビジョン自身も、2020年の転入が2000年の1.8倍に増えた要因として、ダム事業と並んで地域おこし協力隊事業を挙げている。人口の統計に現れるところまで来ているということである。
4人から77人まで、増え方には段がある
村は最初から大量に受け入れていたわけではない。村長が議会で読み上げる行政報告を年度順に並べると、増え方の段がはっきり出てくる。
| 時点 | 村の報告にある人数 |
|---|---|
| 令和2年度 | 首都圏3名・県内1名の応募があり全員を採用 |
| 令和3年度 | 4月着任4名と前年度の4名で8名、のち退任により6名 |
| 令和4年度 | 4月から5月1日までに7名が着任 |
| 令和5年度 | 4月から6月1日までに14名が着任し総勢52名 |
| 2023年11月 | 委託による募集で新たに5名が着任 |
| 2024年4月1日 | 13名が着任 |
| 令和7年度 | 77人(総務省資料) |
村の行政報告要旨と辞令交付式の記録、総務省資料より作成した。令和5年度に一気に50人台へ乗っているのが分かる。
財源の側にも跡が残っている。村の令和5年度一般会計予算は前年度比8.9パーセント増の38億6,000万円で、このうち特別交付税は協力隊事業などの算定経費の増加により2億760万円増の3億2,320万円を計上したと行政報告は説明している。隊員を増やすことが村の歳入の組み立てと直結していた。
募集と住居を第三セクターが引き受けた
役場の人数が限られる村で、数十人の募集と受け入れをどう回すのか。ここに村独自の仕組みが入っている。
2023年11月2日の辞令交付式について、村は「東成瀬テックソリューションズ株式会社への協力隊募集管理業務委託により、村地域おこし協力隊が新たに5名着任しました」と記録している。通称なるテックと呼ばれる村出資の会社が、募集と管理の実務を引き受ける形である。
住居の手当ても同じ会社が担っていた。令和5年6月定例会議の行政報告は、なるテックが隊員の急増に伴う住宅不足という村の課題に対して空き家の改修を進めたと述べ、同年12月定例会議の報告では田子内地区の社宅建築が完成したことと、第2期決算が純利益約8万円の黒字だったことを伝えている。新規事業として化粧品の製造販売を事業目的に追加し、翌年2月には新たに5名の採用が内定していた。
住む場所の扱いは応募時にいちばん効く条件である。制度の側で自治体がどこまで持てるのかは協力隊の住居は自治体がどこまで持つかに整理がある。村のように受け入れ側が住宅を作ってから募る例は、要項に住宅の記載があるかどうかで見分けがつく。
村が直接出す募集は、起業までを想定している
委託による募集とは別に、村は会計年度任用職員としての協力隊も出している。要項の書き方に、村が3年をどう見ているかが表れていた。
令和8年度の会計年度任用職員(地域おこし協力隊)の募集要項は、有害鳥獣対策等の1名を募っている。鳥獣の出没情報の整理、監視パトロール、わなの設置と捕獲駆除、追い払い、被害状況の調査、農家への指導助言、猟友会との連携調整までが業務に挙がっている。
| 項目 | 令和8年度の条件 |
|---|---|
| 募集人数 | 1名(有害鳥獣対策等) |
| 雇用形態 | フルタイム、週5日・1日7時間45分 |
| 報酬 | 月額210,000円 |
| 任用期間 | 令和8年8月1日から令和9年3月31日 |
| 応募資格 | 令和8年7月1日現在で20歳以上、普通自動車免許(AT限定不可) |
| 地域要件 | 3大都市圏をはじめとする都市地域等に在住し、採用後に住民票を異動できる方 |
| 受付期間 | 令和8年5月20日から6月30日 |
村の募集要項より作成した。要項は「3年間で野生鳥獣やジビエに関する知識、ノウハウを習得いただき、その後はジビエ関連事業の起業、開業による地域産業の担い手を目指していただきます」と書いている。任期中の作業員ではなく、任期後に村で商売を始める人を探しているという設計である。
在学中に応募できるかは地域要件で決まる。過疎地域などに住んでいる学生は対象から外れる場合があるため、自分の市町村の区分を先に確かめたい。学生のうちから地域に関わる方法を比べたい人は、自治体が直接出すこうした枠と、FLASPOが集めている若者向けのプロジェクトの両方を見ておくと、任期3年に踏み出す前の選択肢が増える。
よくある質問
東成瀬村の隊員は何をしているのか。村の行政報告は、観光資源の発掘や情報発信、文化財保護など多様な活動に従事していると説明している。77人という規模のため、同じ分野に複数の隊員が入る形が成り立ち、先に入った隊員から引き継げる点は小さな受け入れ先と違う。
報酬はどのくらいか。令和8年度に村が直接出した会計年度任用職員の募集は月額210,000円のフルタイムである。なるテックを通じた募集は条件が別に設定されるため、同じ村でも要項を1件ずつ読む必要がある。
いま地方に住んでいても応募できるのか。令和8年度の要項は、3大都市圏をはじめとする都市地域等に在住し、採用後に生活拠点を村へ移して住民票を異動できる方という条件を置いている。過疎や山村に該当する市町村に住んでいる場合は、この枠では対象外になる。
任期後に残れるのか。総務省の同じ資料にある定住状況の調査では、秋田県の任期終了者179人のうち同じ地域に定住したのは100人で、定住率は55.9パーセントだった。全国の70.3パーセントより低い。村単位の定住率は公表されていないため、知りたければ村の担当課に聞くことになる。任期後の進路の全体像は地域おこし協力隊の卒業後に定住できるかで扱っている。
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