協力隊の副業は任用形態で決まる|フルタイムは許可制、パートは制限の外

同じ隊員でも、副業の扱いが三通りある

地域おこし協力隊の募集要項を何本か並べて読むと、副業について書いてあることが揃っていない。禁止と読める書き方もあれば、許可を取れば可能とする書き方もあり、何も触れていないものもある。ばらつきの理由は自治体の気分ではなく、隊員をどの形で迎えるかという任用形態の違いにある。

総務省の資料では、隊員は地方公共団体から委嘱を受けて地域協力活動を行う人として説明されており、活動期間は概ね1年以上3年以下、令和8年度からは最大5年とする特例も置かれた。実務上の形は、自治体が一般職の会計年度任用職員として任用する雇用型と、個人と委託契約を結ぶ委託型に分かれる。そして雇用型は、フルタイムかパートタイムかでさらに扱いが変わる。

形 副業・兼業の扱い 残る縛り
会計年度任用職員(フルタイム) 地方公務員法第38条の営利企業への従事等の制限がかかり、任命権者の許可が必要 職務専念義務、信用失墜行為の禁止など服務の規定
会計年度任用職員(パートタイム) 営利企業への従事等の制限の対象外 職務専念義務、信用失墜行為の禁止などの服務規則は適用
委託契約(委託型) 自治体と隊員の間に指揮命令系統がない 実態が労働者と判断されれば労働関係法令が適用

つまり同じ「協力隊員」という呼び名でも、副業の自由度は三段階ある。応募先を比べる段階で見るべきは報償費の額より先にこの一行で、ここが決まらないと任期中にどこまで動けるかが読めない。制度の骨格は総務省がまとめた地域おこし協力隊の資料に整理されている。

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38条は禁止ではなく、許可制である

フルタイムの会計年度任用職員にかかる地方公務員法第38条は、営利企業への従事等を一律に禁じる規定ではない。従事する場合に任命権者の許可を必要とする仕組みで、総務省はその許可にあたって、公務に支障を来したりするおそれがないよう十分留意しつつ、勤務形態等を勘案して必要に応じ弾力的な運用を行うことが可能だとしている。

運用の工夫として紹介されているのが、許可権者の置き方である。現場の状況を把握している所属の管理職を許可権者とすることで効率化を図っている自治体があり、隊員についても普段の活動に精通している担当課の管理職とすることが考えられると書かれている。副業の相談先が人事課ではなく担当課になるなら、話の通り方は実務的に変わる。

パートタイムの場合はそもそも38条の制限の対象外になる。ただし無条件ではない。職務専念義務や信用失墜行為の禁止といった服務規則は適用され、勤務時間の長短にかかわらず営利企業への従事等を一律に禁止することは適切ではないとしつつ、職務専念義務に支障を来すような長時間労働を行わないよう指導することは考えられるという整理になっている。制度上は開いているが、活動に穴があく働き方は止められる。

ここまでの記述はいずれも総務省が公開している地域おこし協力隊のよくある質問にある。なお臨時的任用は、災害復旧や一時的な事務量の増大などに限られる制度であるため、隊員の任用形態としては想定されないとも書かれている。募集要項に臨時職員と読める記載がある場合は、実際の身分を確認したほうがよい。

委託型は、自由と引き換えに線引きを自分で負う

委託契約で迎えられる場合、自治体と隊員の間に指揮命令系統はない。勤務時間の管理を受けないので、空いた時間を自分の事業に使う自由度はいちばん高い。その代わり、何をどこまでやるかの線を自分で引くことになる。

総務省が注意点として挙げているのは労働者性である。形式的な契約形式のいかんに関わらず、実態として労働者であると判断されれば、労働基準法や労働安全衛生法といった労働関係法令が適用される。判断は勤務場所および勤務時間の拘束性、業務遂行上の指揮監督の有無などを総合的に勘案して個別具体的に行われ、疑義がある場合は労働基準監督署へ問い合わせることも考えられるとされている。

これは隊員にとって不利な話ではない。毎日決まった時刻に役場へ出て、指示された作業をこなす状態が続いているなら、契約書の表題が委託であっても労働者として扱われる余地があるという意味になる。委託だから残業代も労災もないと説明されたときに、確かめる先がある。

逆に、委託の形を活かすなら拘束の薄さを前提に動く必要がある。任期後の収入の立ち上がりを含めた見通しは報償費が止まる日から先を扱った記事で整理した。報償費が入っているうちに何を作れるかが、委託型を選ぶ意味になる。

兼業が認められても、経理は分けなければならない

許可が出たあとに効いてくるのが会計の扱いである。総務省は、兼業や副業として隊員の業務に従事する場合、地域おこし協力隊の業務の範囲と経理、それ以外の業務の範囲と経理を明確に区別し、隊員としての活動実績を適正に把握・管理する必要があるとしている。

そして、協力隊以外の業務について報償費等を支出することはできないと明記されている。報償費は公費であり、令和8年度の特別交付税措置では隊員1人あたりの活動経費が550万円を上限とし、うち報償費等が350万円、その他の活動経費が200万円という内訳になっている。自分の事業の作業時間に対して、この枠から支払われることはない。

実務では、活動日誌と自分の仕事の記録を分けて付けるところから始まる。車やパソコンや作業場を共用しているなら、按分の考え方を担当課と先に決めておきたい。隊員に対する報償費等の額は、業務内容や就業実態等を踏まえて適正な範囲とする必要があるとも書かれているため、兼業の時間が増えれば報償費の側が見直される可能性もある。

手取りや生活費まで含めた全体像は協力隊の給料を扱った記事に出ている。副業の収入を足して生活を組む前に、報償費がどの性格のお金かを押さえておくほうが、あとで揉めない。

総務省が兼業を後押しする理由は、任期後にある

制度の側が兼業に前向きなのは、隊員の便宜のためではない。よくある質問には、兼業等を通じて隊員が任期中から起業や就業に向けた準備をし、ひいては任期終了後に活動地域への定住・定着を図ることも重要だと書かれている。任期は最長でも3年、特例でも5年で終わる。終わった後に残るかどうかが制度の成果になる。

令和7年4月に公表された定住状況の調査では、平成31年度から令和5年度までの直近5年間に任期を終えた8,034人のうち、同じ地域に定住した者が5,539人で68.9%だった。内訳は活動地と同一市町村内が4,477人で55.7%、近隣市町村内が1,062人で13.2%である。他の地域へ転出した者は1,893人で23.5%だった。

同一市町村内に定住した4,477人の進路を見ると、兼業の意味が見えてくる。

任期後の進路 人数 割合
起業 2,077人 46.4%
就業 1,542人 34.4%
就農・就林 525人 11.7%
事業承継 55人 1.2%
その他・不明 278人 6.2%

定住した人の半分近くが起業している。古民家カフェや農家レストランといった飲食サービス業が279名、工芸を含む美術家やデザイナーや写真家が203名、ゲストハウスなどの宿泊業が187名と続く。任期が切れた日に事業を立ち上げるのは無理があるので、準備は任期中に進むことになる。その準備を制度上可能にしているのが兼業の許可である。

資金の側にも仕掛けがある。令和8年度の措置では、隊員等の起業・事業承継に要する経費が1人あたり100万円を上限として措置され、任期2年目から任期終了後3年以内の起業・事業承継が対象になる。新たな雇用の創出等の要件を満たす場合は、令和8年度から上限が200万円に引き上げられた。隊員数は令和7年度に8,196人、取組自治体は1,187団体で、受入可能自治体1,461団体の約81%に達している。

よくある質問

応募前に副業の可否はどこで確認できるのか。募集要項の任用形態の欄が出発点になる。会計年度任用職員と書かれていればフルタイムかパートタイムか、委託と書かれていれば契約の内容を問い合わせる。許可制の場合は、誰が許可権者で何を出せばよいかまで聞いておくと、着任後の段取りが読める。

許可が下りない場合はあるのか。38条は公務に支障が出ないかを見る仕組みなので、活動時間と重なる働き方や、立場上の利害がぶつかる相手との取引は通りにくい。活動の時間帯を外し、内容が地域の仕事と競合しない形で出すほうが説明しやすい。

学生のうちから関わる入口はあるのか。応募前に活動や生活を体験する仕組みとして、おためし地域おこし協力隊と地域おこし協力隊インターンが用意されている。令和8年度の措置では、どちらもプログラムに要する経費が1団体あたり100万円を上限として措置される。隊員の年齢層は20歳代と30歳代で約6割を占めており、大学の在学中から接点を持つ人もいる。

副業の収入は任期後の見通しにつながるのか。定住した隊員の進路では起業が46.4%と最も多く、任期中に作った仕事をそのまま続ける形が主流になっている。若い世代の任期後の動きは20代と30代の隊員を扱った記事にまとめた。地域と関わる入口を探す段階では、FLASPOのような仲介の仕組みから情報を取るのも手になる。

兼業の相手は地域の外でもよいのか。制度は相手の所在地を限定していない。遠隔の仕事を続けながら地域協力活動に当たる形も、業務の範囲と経理を分けられるのであれば成り立つ。ただし地域での信用は現地での振る舞いで決まるため、外の仕事ばかりが見える状態は避けたい。


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