検索しても出てこないのは、その名前の統計が存在しないからである
地域を比べる作業を始めると、だいたい早い段階で「この県は若い人が多いのか」という問いにぶつかる。そこで若者人口比率という言葉で探し始めると、民間のまとめ記事ばかりが並んで、肝心の元の表にたどり着かない。理由は単純で、公的統計にその名前の指標がないからだ。
ないのは名前だけで、材料はそろっている。国が毎年公表している表を組み合わせれば、十五歳から二十九歳の割合でも、二十代だけの割合でも、自分で計算して出せる。ただし、どの表から取るかで答えがずれる。ずれる理由を知らずに数字だけ引いてくると、比べてはいけない県同士を並べることになる。
ここで扱うのは、どの表を開き、どの区分を使い、どこで解釈を間違えやすいかという手順である。県の順位を暗記する話ではないので、材料と落とし穴のほうを覚えて帰るつもりで読んでほしい。
公式に用意されている年齢の区分は三つしかない
出発点は総務省統計局の人口推計である。毎年10月1日現在の人口を推計して公表しており、2024年10月1日現在の結果では、全国の15歳未満が11.2%、15歳から64歳が59.6%、65歳以上が29.3%だった。15歳未満は過去最低、65歳以上は過去最高の水準である。
この三つが、年少人口・生産年齢人口・老年人口と呼ばれる公式の区分だ。都道府県別の両端を並べると次のようになる。
| 区分 | 全国 | 最も高い都道府県 |
|---|---|---|
| 15歳未満(年少人口) | 11.2% | 沖縄県 15.8% |
| 15〜64歳(生産年齢人口) | 59.6% | 東京都 66.8% |
| 65歳以上(老年人口) | 29.3% | 秋田県 39.5% |
| うち75歳以上 | 16.8% | 秋田県 22.0% |
並べてみると、三つの区分が別のことを測っているのがわかる。15歳から64歳の割合が最も高いのは東京都の66.8%で、これは若さではなく働く年齢層の集まり方を示している。15歳未満の割合が最も高いのは沖縄県の15.8%で、こちらは出生の多さを反映する。同じ資料は、15歳未満の割合が75歳以上の割合を上回るのが沖縄県だけだとも記している。
つまり、若い県を探すつもりで生産年齢人口の順位を見ると、学生や子どもではなく働き手の流入を見てしまう。逆に年少人口の順位を見ると、大学生の年代はまるごと外れる。三つの区分には二十歳前後を切り出す枠がないので、知りたいのが大学生の世代なら、この三区分では足りない。
十五歳から二十九歳を出したいときに開く表は三つある
五歳階級まで下りれば、必要な年齢層を自分で足し合わせられる。候補になる表は三つで、それぞれ性格が違う。国勢調査は五年ごとの全数調査で、最も細かく、市区町村まで下りられる。国勢調査のページから結果の系統をたどるのが確実だ。人口推計は毎年の値が出るので、調査の谷間の年を埋められる。
三つ目が住民基本台帳である。総務省の住民基本台帳に基づく人口のページには、年齢階級別人口を都道府県別にまとめた参考資料が置かれている。日本人住民、外国人住民、その合計の三通りに分かれているのが特徴で、外国人を含めるかどうかを自分で選べる。毎年1月1日現在なので、年度の区切りで比べたいときにも合う。
どれを選ぶかは、比べる相手で決まる。市区町村まで下りるなら国勢調査、毎年の動きを追うなら人口推計、外国人住民の扱いを分けたいなら住民基本台帳という順に考えると迷いにくい。実際の表はe-Statで品目を指定して落とすのが早い。将来の姿まで見たいときは、国立社会保障・人口問題研究所の日本の地域別将来推計人口が五歳階級で2050年までの値を出しているので、現在の比率と将来の比率を同じ階級で並べられる。
一点だけ注意がいる。三つの表は基準日も対象の定義も違うので、国勢調査の値と住民基本台帳の値を同じ折れ線に並べてはいけない。比率を時系列で見るなら、同じ系統の表だけでつなぐ。
比率は分子ではなく分母で動くことがある
若者の割合が下がったという文を見たとき、実際に何が起きたのかは二通りある。若者の数が減った場合と、高齢者の数が増えて全体が膨らんだ場合だ。割合は分母に総人口を置くので、後者でも数字は下がる。地域の説明としては正反対の話なのに、比率だけを見ていると区別がつかない。
同じ人口推計は、そこを切り分ける材料も出している。2024年10月1日現在で人口が増えたのは東京都と埼玉県の2都県だけで、45道府県は減少し、そのうち減少率が1%以上の県が18あった。注目したいのは、自然増減が47都道府県すべてで減少だったという点である。生まれる数より亡くなる数が多い状態は、例外なく全国に広がっている。
一方で、社会増減が増加だった都道府県は24あった。福井県、奈良県、宮崎県の3県は、前年の減少から増加に転じている。つまり人口が減っている県でも、入ってくる人のほうが多い県は半数ある。若者比率を語るときに効くのはこの社会増減のほうで、進学と就職の移動がここに現れる。都道府県別の人口で見た並びと重ねると、比率の上下が人の出入りのどちらに由来するかを分けて読める。
実務的には、比率と実数と増減の三つを同じ表に並べるのが安全である。比率だけでは原因がわからず、実数だけでは県の大きさに引きずられる。三つそろえてはじめて、その県で若い世代に何が起きているかという文が書ける。
学生の住民票が、県境の数字をずらしている
大学生の世代を数えるとき、最後に残る問題が住所の扱いである。国勢調査は住民票の届出ではなく、ふだん住んでいる場所で数える。令和7年国勢調査の概要によれば、対象になるのは本邦に常住している者で、常住とは3か月以上にわたって住んでいるか、住むことになっている状態を指す。学校の寄宿舎に住んでいる学生は、その寄宿舎で調査される。
住民基本台帳はこれと違い、届け出られた住所がそのまま集計される。実家に住民票を残したまま下宿している学生は、国勢調査では下宿先の県に、住民基本台帳では実家の県に数えられる。十八歳から二十二歳の層は移動が最も多い年代なので、この差は無視できる大きさにならない。
どちらが正しいという話ではなく、問いによって使い分ける。その県のキャンパスに何人いるかを知りたいなら国勢調査の側が合い、行政サービスの対象として何人いるかを知りたいなら住民基本台帳の側が合う。移住や関係人口の施策を読むときに混同すると、施策の対象人数を取り違える。二十代の移動の実像は若者の一人暮らしと単独世帯でも扱っている。
この食い違いは、数字を集める側の不備ではなく、学生という立場が二つの場所に足をかけていることの反映である。地域と学生の関係を追っているFLASPOの立場からすると、ここは消すべき誤差ではなく、関わり方が制度の形に収まりきらないことの表れとして読める部分でもある。
よくある質問(FAQ)
若者の範囲は何歳から何歳までと決めればよいか。公的に固定された定義はないので、使う制度に合わせるのが実務的である。移住支援や就職支援の対象年齢が決まっているなら、その区切りに合わせて五歳階級を足す。比べる相手の資料が十五歳から二十九歳を使っているなら、同じ範囲に揃える。範囲を自分で決めたときは、本文のどこかに必ず書いておく。
政令市や町村まで下りたいときはどうするか。市区町村別の年齢別人口は国勢調査が持っているので、そちらを使う。毎年の値は住民基本台帳の市区町村別の表で補える。人口推計は都道府県までなので、市町村の比較には向かない。
外国人住民を含めるべきか。目的次第である。地域の担い手や消費の規模を見るなら含めたほうが実態に近く、日本人の人口構造の変化だけを追うなら分けたほうが見やすい。住民基本台帳の表が三通りに分かれているのは、この選択を使う側に委ねているからである。
将来の比率はどこまで信じてよいか。将来推計は仮定の置き方で変わるので、幅のある見通しとして扱う。地域別将来推計人口は2020年の国勢調査を基礎に五年ごとの値を出しており、傾向の向きを見る用途には使える。移住先を検討する材料として読む場合は、都道府県別の移住先ランキングのように希望と実数のずれも合わせて見ておくと、推計の数字を過大に読まずに済む。
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