大阪や京都に勤めながら、週末に通える距離の地域で何かを始めたい。そう考えて協力隊を調べ始めると、府県ごとの落差に驚くことになる。三重から和歌山までの二府五県を令和7年度の公表値で並べると、同じ関西のなかに百人規模の県と三人の府が同居していた。
二府五県で566人、全国の6.9パーセント
令和8年4月24日に公表された総務省の集計で三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山を足すと、隊員は566人になる。全国8,196人に占める割合は6.9パーセントで、人口の一割半を抱える地域としては小さい。
受け入れ自治体は108団体で、全国1,187団体の9.1パーセント。隊員の割合を自治体の割合が上回るため、一か所あたりは5.2人と全国平均の6.9人を下回る。少人数ずつ広く受け入れている構図で、二桁を抱える自治体は限られる。
全国の規模は令和7年度に8,196人まで伸び、取組自治体は1,187団体になった。受け入れが可能な1,461団体の約81パーセントが実際に受け入れている段階なので、これから枠が急に増える余地は大きくない。関西で探すなら、いま出ている募集の性格を見分けるほうが現実的だ。地域別の全体像は地域別の受け入れをまとめた記事で並べている。
兵庫134人に対して大阪は3人
府県別に並べると、落差の大きさが目に入る。最多と最少で四十倍以上ひらいている。
| 府県 | 隊員数(人) | 受入自治体数(団体) | 1自治体あたり(人) | 定住率 |
|---|---|---|---|---|
| 兵庫県 | 134 | 17 | 7.9 | 75.8% |
| 三重県 | 124 | 20 | 6.2 | 61.3% |
| 和歌山県 | 105 | 27 | 3.9 | 73.2% |
| 奈良県 | 95 | 16 | 5.9 | 73.4% |
| 滋賀県 | 56 | 13 | 4.3 | 67.9% |
| 京都府 | 49 | 13 | 3.8 | 70.6% |
| 大阪府 | 3 | 2 | 1.5 | 60.0% |
| 関西2府5県 | 566 | 108 | 5.2 | 70.8% |
| 全国 | 8,196 | 1,187 | 6.9 | 70.3% |
大阪の3人は能勢町2人と岬町1人で、府内の受け入れはこの二町だけである。制度の対象が過疎や山村などの要件に当たる市町村に絞られているため、政令市や近郊の住宅地に枠が出ることはない。府県ネットワークの一覧でも、大阪府だけ組織が載っていない。
兵庫の134人は但馬と丹波に寄っている。豊岡市37人が府県全体でも最多で、新温泉町18人、丹波篠山市15人、養父市11人が続く。一か所あたり7.9人は二府五県で唯一全国平均を超える数字で、複数の隊員が同時に動いている現場が多い。
奈良は吉野郡の村、和歌山は紀南の町に薄く広がる
同じ百人前後でも、置かれ方は県ごとにまるで違う。奈良の95人を見ると、十津川村8人、川上村10人、下北山村10人、上北山村6人、天川村7人、野迫川村7人、東吉野村7人と、吉野郡の村だけで58人を数える。県全体の六割がこの一帯に入っている計算だ。奈良市15人という例外を除けば、南部の山村が受け入れの主役になっている。
和歌山は性格が逆で、27団体に105人が散っている。一か所あたり3.9人は関西で最も薄い。紀美野町12人、白浜町10人、紀の川市9人、橋本市8人、田辺市7人が上位で、県そのものが直接抱える枠も7人ある。那智勝浦町6人、広川町6人、すさみ町5人、高野町5人と、数人規模の配属が紀北から紀南まで連なる。
京都の49人は13団体で、京丹後市18人、南丹市5人、京丹波町6人、福知山市4人が中心となる。京都市にも2人いるが、受け入れの対象になるのは市街地ではなく山あいの区域である。滋賀の56人は近江八幡市17人、長浜市9人、愛荘町8人が上位で、湖東と湖北に寄っている。三重は尾鷲市28人が突出し、南伊勢町11人、いなべ市10人、名張市9人が続く。
定住率70.8パーセントは全国とほぼ同じ
任期の後に残るかどうかで見ると、関西は全国の水準に並ぶ。令和2年4月から令和7年3月までの五年間に任期を終えた隊員は二府五県で695人おり、うち492人が同じ地域に定住した。率は70.8パーセントで、全国の70.3パーセントとほぼ重なる。
府県別では兵庫75.8パーセントが最も高く、奈良73.4パーセント、和歌山73.2パーセント、京都70.6パーセントと続く。低いのは三重61.3パーセントと大阪60.0パーセントだが、大阪は分母が5人しかないため率として扱う意味が薄い。三重は142人が任期を終えており、数字として読めるなかで最も残りにくい県になっている。
残った人の暮らし方は全国の内訳から見える。活動地と同じ市町村に定住した5,038人のうち、2,296人が起業し、1,753人が就業、583人が就農や就林に進んだ。就農の中身は農業477人、林業54人、畜産業20人、漁業と水産業12人で、海沿いの配属でも漁業に入る人は多くない。任期後の選び方は卒業後の定住を扱った記事に整理した。
近さを使うなら、二地域の関わりから始める手もある
関西の枠を選ぶ利点は、都市と地域の距離が短いことだ。豊岡市や京丹後市は大阪から鉄道で三時間前後、吉野郡や紀北町でも日帰りができる範囲にある。任期中に都市側の人脈を手放さずに済むのは、任期後に商いを立てるときの支えになる。
府県のネットワークも六つの府県にそろっている。一般社団法人兵庫県地域おこし協力隊ネットワークが令和2年6月、一般社団法人三重県地域おこし協力隊サポートデスクが令和3年2月、奈良県地域おこし協力隊ネットワークが令和5年3月、わかやま地域おこし協力隊ネットワークが令和5年1月、京都府地域おこし協力隊ネットワークが令和5年12月、一般社団法人しがごとまるごと協力隊ネットワークが令和6年2月に立ち上がった。
三年の任期にいきなり入るのが不安なら、短い関わりから試す道がある。令和7年度は「おためし地域おこし協力隊」の参加者が全国で1,450人、インターンが1,414人で、前年度から三割前後増えた。都市に住んだまま地域と関わりを持つ入口としては、FLASPOのような仕組みも使える。
よくある質問
三重は関西に入れてよいのか。近畿地方という区分では三重を含めた二府五県で数えるのが一般的で、本稿もそれに合わせた。東海として扱う資料もあるため、他の集計と見比べるときは対象県を確かめたい。三重を外すと関西は442人・88団体になる。
大阪府内で協力隊として働けるのか。能勢町と岬町の2団体で計3人という規模なので、募集が出る年は限られる。府内にこだわるより、兵庫の但馬や京都の北部、和歌山の紀北まで広げたほうが選択肢は増える。いずれも活動地に住民票を移すことが条件になる。
一か所あたりの人数が少ないと不利なのか。和歌山の3.9人や京都の3.8人のように薄い県では、配属先に先輩隊員がいない可能性が高い。役割を自分で組み立てる自由はある反面、相談先が担当課に限られやすい。府県のネットワークがある県なら、そこを足場にできるかを採用前に聞いておきたい。
三重の定住率が低いのはなぜか。公表資料に理由の説明はない。読み取れるのは、尾鷲市28人のように一つの市へ大きく配属している県であること、任期を終えた人数が142人と兵庫の198人、奈良の158人に次ぐ規模であることだ。母数が大きい県は率が平均に近づきやすく、極端な数字が出にくい点も押さえておきたい。
報酬はどの府県でも同じか。報償費は国の財政措置の範囲で各自治体が決めるため、同じ関西でも金額や住居支援の形はそろわない。募集要項では額面だけでなく、住居費や車の費用をどちらが負担するかまで見ておく必要がある。手取りの考え方は給料の内訳を扱った記事で確かめられる。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
