子育て世代の移住先選び|0〜4歳の移動9万6544人を実数で読む

子育て世代の移住先選び|0〜4歳の移動9万6544人を実数で読む

子どもを連れて移る先を選ぶとき、人気ランキングの順位はあまり助けにならない。順位は希望を聞いた結果であって、保育の空き具合や支援金の額とは別の軸で並んでいる。しかも実際に子どもを連れて県境を越えた世帯は、2025年に前年より減っている。国の統計と相談窓口のアンケート、支援金の要件を並べ直すと、子育て世代が先に見るべき数字がどこにあるかがはっきりする。

県境を越えた0〜4歳は、どの年齢層よりも大きく減った

総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告 2025年結果によると、2025年に都道府県の境を越えて移動した人は251万5,731人で、前年より7,518人、0.3パーセント減った。この全体の小さな減り方の裏で、未就学児の動きだけが大きく落ちている。

年齢5歳階級別に見ると、0〜4歳の都道府県間移動者数は9万6,544人だった。前年の10万3,978人から7,434人、7.1パーセントの減少で、減少数も減少率も20階級のなかで最大である。5〜9歳も5万804人で3,892人の減、10〜14歳は2万8,027人で1,732人の減と、学齢期の子どもも同じ方向に動いた。一方で親の世代は逆だった。25〜29歳は53万3,880人で4,362人の増、30〜34歳は31万4,556人で4,198人の増である。動く本人は増えているのに、連れて移る子どもの数は細っている。子育て期の移動が全国的に活発になっているという前提から入ると、最初の読みを外すことになる。

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東京圏は、0〜4歳だけ16年続けて出ていく側にある

日本人移動者で見た東京圏、つまり埼玉・千葉・東京・神奈川の4都県は、2025年に11万2,738人の転入超過だった。30年続けて人が集まり続けている地域である。ところが年齢で割ると、様子はまったく違う。

転入超過が最も多いのは20〜24歳の8万443人で、次が25〜29歳の2万3,546人、その次が15〜19歳の2万1,469人である。進学と就職で入ってくる流れが太い。これに対し、0〜4歳と55歳から74歳までの各階級は、年齢別の集計が始まった2010年以降、16年続けて転出超過になっている。つまり東京圏は、独身で入ってきた人が子どもを持った段階で出ていく構造を16年抱えたままということになる。子育てを機に東京圏を離れる選択は、少数派の冒険ではなく統計に定着した流れである。移住の現状を数字で確かめる記事と並べると、相談件数の伸びと実際の移動の差も見えてくる。

窓口に来る30代と40代の希望は、北関東に寄っている

では子育て期の世帯はどこを候補にしているのか。認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの2024年の移住相談の傾向と移住希望地ランキングは、年代別に希望地を集計している。2024年の移住相談は6万1,720件で、前年の5万9,276件から4.1パーセント増え、4年続けて過去最多となった。回答者は1万9,021人である。

順位 30代 40代 窓口相談の全体
1位 群馬県 10.1% 群馬県 10.0% 群馬県
2位 静岡県 8.3% 静岡県 7.0% 静岡県
3位 栃木県 6.6% 長野県 6.6% 栃木県
4位 長野県 6.5% 栃木県 6.4% 長野県
5位 福岡県 4.2% 北海道 4.0% 福岡県
ふるさと回帰支援センター「2024年 窓口相談者 年代別 移住希望地ランキング」より上位5位を抜粋。パーセントは当該年代の回答に占める割合

30代と40代は上位4県の顔ぶれがほぼ同じで、群馬・静岡・栃木・長野に集まる。センターは群馬が初めて1位になった背景として、報道をきっかけに20代から30代の相談が増え、伸び伸びと子育てをしたい層が増えたことを挙げている。栃木についても、住宅の費用を抑えられる点が相談増の要因だと説明している。ただしこれは窓口に来た人の希望であって、転入した実数ではない。候補を絞る段階の参考として読み、確かめる作業は次の2つの節に回したい。

子ども1人で100万円変わる、国の移住支援金

候補地を比べるときに金額の差が一番大きく出るのは、国の地方創生移住支援事業である。内閣府の移住支援金の案内によれば、支給の上限は世帯での移住が100万円、単身での移住が60万円で、移住先で地域課題の解決につながる社会的事業を起業した場合は200万円になる。

子育て世帯にとって大きいのは加算である。18歳未満の子どもを連れて移る場合、子ども1人あたり最大100万円が上乗せされる。以前は1人あたり最大30万円だったものが引き上げられた。単純に積めば、子ども2人の世帯なら世帯分と合わせて300万円という計算になる。財源は国が2分の1、移住先の都道府県と市町村が4分の1ずつを負担する仕組みで、だからこそ実施していない自治体もある。対象になるのは、一定期間以上東京23区に住んでいた人、または東京圏から23区へ通勤していた人で、移住先はその自治体が事業を実施している東京圏外に限られる。2021年度からは、移住前の仕事を移住先でテレワークとして続ける人も対象に入った。金額と要件は自治体ごとに差があり、申請期間も定められているので、候補を2つか3つに絞った時点で移住先の窓口に直接当たるのが早い。地方移住の補助金をまとめた記事も合わせて見ておきたい。

待機児童の全国値は、移り先の空きを教えてくれない

保育の見通しを全国の数字で判断すると、ほぼ確実に読み違える。こども家庭庁の保育所等関連状況取りまとめによると、2026年4月1日現在の待機児童数は2,435人で、前年より181人増えた。待機児童がいる市区町村は189で、前年より22減っている。つまり総数は増えたのに、待機が発生している自治体の数は減った。

待機児童が100人以上いる自治体は3つで、前年より2つ増えた。全国の利用定員は302万人、利用児童数は265万人で、定員充足率は87.7パーセントと前年より0.7ポイント下がっている。全国では定員の1割以上が埋まっていないのに、少数の自治体に待機が集中しているという形である。ここから言えるのは、移住先を選ぶときに見るべきは全国値ではなく、その市区町村の、しかも希望する年齢区分の空き状況だということだ。0歳児と1歳児で空きが大きく違う自治体は珍しくない。学区の広さ、病児保育の有無、小児科までの距離は、どれも市町村より小さい単位で決まる。地域の暮らしの情報を集める段階では、FLASPOのように地域と関わる入口を使いながら、現地の人に聞いてしまうのが確実である。

よくある質問

希望地ランキングの上位県を選べば安全か。残念ながら順位と実数は一致しない。2025年に転入超過となったのは東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府など7都府県だけで、残る40道府県は転出超過だった。希望地の上位に並ぶ群馬県は1,516人、静岡県は6,711人、栃木県は2,011人の転出超過である。人気があることと、人が増えていることは別の話だと押さえておきたい。順位の読み方は都道府県別の移住先ランキングの記事で詳しく扱っている。

子どもが小学校に上がる前に動くべきか。統計は、実際に多くの世帯がそう動いていることを示している。0〜4歳の都道府県間移動は9万6,544人で、10〜14歳の2万8,027人の3倍を超える。入学や転校の負担を避けて未就学の時期に動く判断が、数の上では多数派である。ただし未就学児の移動は前年より7.1パーセント減っており、増え続けているわけではない。

支援金は移住してから申請できるのか。申請期間は自治体が定めており、転入後の一定期間内に限られる。金額や給付要件も移住先によって異なるため、内閣府の案内でも事前に自治体へ確認するよう求めている。先に転居を決めてから調べると、使えたはずの加算を取り逃すことがある。

保育の空きは移住前にどこまで分かるのか。待機児童数と定員充足率は市区町村ごとに集計されており、こども家庭庁は保育提供体制のダッシュボードでも公開している。年度途中の入所は4月より難しくなるため、転居の時期を4月に合わせられるかどうかが実務上の分かれ目になる。


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