寄附が集まる自治体には二つの型がある
人気の自治体という言い方は、実は二つの別の強さを混ぜている。たくさんの人から少しずつ集める型と、少ない人数から大きな額を受け取る型である。総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)」の上位団体の数字を、受入額を件数で割って見ていくと、この違いがはっきり出る。
令和7年度の全国平均は1件あたり約2万2,300円だった。これを基準線に置くと、上位の自治体は平均より下の価格帯で件数を積む側と、平均の2倍以上の単価で額をつくる側に分かれる。どちらが優れているという話ではなく、地域に何があるかで取れる型が決まる。
| 型 | 1件あたりの目安 | 上位20団体の例 | 額の源になっているもの |
|---|---|---|---|
| 件数で積む型 | 1万2,000〜1万8,000円 | 千葉県銚子市、静岡県焼津市、北海道別海町 | 日常的に消費される魚介や乳製品、小分けや定期便 |
| 平均前後の型 | 1万8,000〜2万3,000円 | 宮崎県都城市、北海道紋別市、北海道根室市 | 肉やカニなど単価が中程度で指名買いされる産品 |
| 単価で積む型 | 4万円以上 | 山梨県甲府市、新潟県南魚沼市、愛知県名古屋市 | 宝飾品や酒、米の大容量など高額帯の品ぞろえ |
全国1位の大阪府泉佐野市は135万件で230.4億円、1件あたり約1万7,000円で、件数で積む型の最も大きな例にあたる。一方で名古屋市は35万件で174.5億円に届いており、単価は約4万9,600円になる。同じ上位5位のなかで、寄附一件の重さが3倍近く違う。
強い自治体は産地を自分の中に持っている
上位20団体を地図に置くと、北海道の町が4つ入り、宮崎県から2つ、山梨県から3つ、静岡県から2つという並びになる。顔ぶれに共通するのは、返礼品の元になる一次産業が自治体の区域内にあることだ。白糠町や別海町は酪農と漁業、都城市は畜産、気仙沼市は水産というように、品物を外から仕入れずに揃えられる。
この条件が効くのは、費用の構造上の理由がある。全団体の募集費用のうち、返礼品の調達に使われたのは受入額の26.5%で、金額では3,528億円にのぼる。返礼品は地方税法で寄附額の3割以内と定められているため、調達の原価を抑えられる自治体のほうが、同じ3割の枠でより良い品を出せる。産地が内側にあれば、仲介の段数が減って原価が下がる。
逆に、区域内に目立つ産品がない自治体は、この土俵では勝ちにくい。地場の事業者と組んで加工品をつくるか、品物ではなく使い道で選ばれる形に切り替えるかの判断が必要になる。返礼品の選び方そのものはふるさと納税おすすめ返礼品TOP10と失敗しない選び方にまとめがある。
使い道を具体的に示せる自治体が増えている
返礼品の競争だけを見ていると見落とすが、寄附の使い道の設計もこの数年で明確に進んだ。令和7年度は寄附の使途を選べる自治体が1,749団体、全指定団体の98.2%に達している。分野を選べる団体が1,684団体で94.6%、さらに具体的な事業まで選べる団体は586団体、32.9%である。
なかでも伸びているのが、目標額と募集期間を定めて特定の事業に寄附を募るクラウドファンディング型だ。令和7年度は516団体が実施し、プロジェクトは1,547事業、集まった額は333億円だった。前年度は451団体、1,228事業、227億円だったので、事業数は3割近く増えている。1事業あたりの平均は2,000万円台である。
使い道で選ばれる型は、産品を持たない自治体にとって現実的な道になる。子どもの医療費、学校の設備、動物の保護、災害からの復旧といった具体の対象があれば、返礼品の還元率では比較されにくい。寄附の実績と活用状況の両方を公表している団体は1,521団体、85.4%まで来ており、使い道を示すこと自体が標準になりつつある。
入り口の設計は、ほぼポータルサイトに移った
寄附を受け取る窓口の作り方も、人気を左右する要素である。令和7年度はポータルサイトを経由した受入額が1兆2,947億円で、全体の97.2%を占めた。前年度は94.5%だったので、1年で2.7ポイント上がっている。自治体の独自サイトから直接寄附を集める比率は、もはや3%に満たない。
その代わりに運営事業者へ支払う額も積み上がる。令和7年度の支払総額は2,433億円で、受入額に対して18.8%にあたる。このうち調達と送付に相当する分を除いた額は1,490億円で、割合では11.5%になる。内訳では掲載や運営の委託料などの事務費等が1,246億円と最も大きい。
掲載するサイトを増やせば露出は増えるが、手数料と事務の負担も増える。寄附者の側から見ても、どのサイトを使うかで申請の手順や付与される特典が変わる。サイト選びの基準はふるさと納税のポータルサイトはどう選ぶ?2026年10月改正後の基準で整理している。
人気は年度ごとに入れ替わる
上位に並んだ自治体がそのまま来年も同じ位置にいるとは限らない。都道府県の単位でも、兵庫県は令和6年度の582億円から令和7年度は354億円へ39.2%減った。市区町村の単位では、前年度に首位だった自治体が翌年に大きく順位を落とすことも起きている。単年の大口の寄附や、災害時に集まる支援の寄附が入ると、その年だけ額が跳ねる。
制度の側にも天井がある。返礼品は寄附額の3割以内、募集に要する費用の総額は総務省告示で5割以内と定められており、令和7年度の全国の経費率は47.9%だった。上限に近いところまで使い切っている状態なので、返礼品を厚くする方向で差をつける余地は残り少ない。
そうなると、次に効くのは品物以外の部分になる。使い道の具体性、事業の報告の丁寧さ、産地としての物語、寄附者と地域の継続的な関わり。順位表の数字より、こうした設計が積み上がっているかどうかが、翌年も選ばれるかを決める。地域が何を目指して寄附を募っているかを調べる手がかりはFLASPOでも扱っている。
寄附する人の数は増え続けている。令和8年度課税で住民税の控除を受けたのは1,151万人で、前年度の1,081万人から70万人増えた。新しく始めた人は、まず知っている地名や過去に旅行で行った土地を探す傾向がある。順位の上位にいることよりも、名前を思い出してもらえる関係をどれだけ持っているかが、翌年の寄附につながる。
この観点では、返礼品を送って終わりにしない設計が効いてくる。事業の進み具合を寄附者へ知らせる、翌年の募集で前年の成果に触れる、現地を訪ねる機会を用意するといった積み上げは、額の順位には出ないが再寄附の率を押し上げる。寄附を一度きりの取引ではなく、関係人口の入り口として扱っている自治体が強い。
よくある質問
人気の自治体はどうやって調べますか。総務省の現況調査に全団体の受入額と件数が載っている。受入額の上位20団体は市区町村別にまとめられており、件数で割れば1件あたりの額も出せる。ポータルサイトの人気順は返礼品単位の集計なので、自治体の規模とは別の指標になる。
単価の高い自治体のほうが良い品ですか。価格帯が違うだけで、質の差とは言い切れない。宝飾品や酒のように単価の高い品が揃う地域は1件あたりの額が上がる。1万円台の自治体は控除上限が小さい人でも使いやすく、どちらが向くかは自分の上限額で決まる。上限の考え方はふるさと納税の控除上限額はどう決まる?住民税所得割の2割という天井で確認できる。
小さな町が上位に入れるのはなぜですか。人口の規模は受入額の上限にならない。白糠町や別海町のように人口が1万人を下回る町でも、産品の供給力と事務の体制が整えば200億円規模を扱える。むしろ区域が小さいほど、産地と役場の距離が近く、調達の調整が速いという利点が働く。
使い道を選べる自治体を選びたいのですが。選べる団体は98.2%にのぼるため、ほとんどの自治体で何らかの指定ができる。ただし分野の指定にとどまる団体が多く、具体的な事業を選べるのは32.9%である。事業単位で決めたいなら、クラウドファンディング型のプロジェクトを探すのが近道になる。
経費の割合は自治体ごとに分かりますか。全国の合計は公表されているが、団体ごとの経費率は現況調査の公表資料からは直接読み取れない。自治体が自ら公表している資料を見るしかない。活用状況まで公表している団体は85.4%あるので、気になる自治体の公式サイトを確かめたい。
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