受け取った年に、そのまま所得になる
補助金が振り込まれたとき、返さなくていいお金だから税金もかからないと考えてしまうことがある。実際は逆で、返還を求められない収入は、その年の所得として数えられるのが原則である。法人なら益金、個人事業なら事業所得の総収入金額に入る。黒字の事業者が設備投資のために受け取った場合、入金した年の利益が膨らみ、翌年の納税額が跳ね上がる。
ここで分かれ目になるのが、何に対して支払われたお金なのかという点である。事業に関して受けるものは事業の収入に含まれ、事業をしていない個人が受ける一時金は一時所得として扱われる。国税庁の質疑応答事例では、自治体が勤続年数の節目に保育士へ支給する支援金について、所得税法第三十四条第一項の一時所得に該当すると示されている。対価としての性質を持たない一時のお金は、この区分に落ちる。
税目ごとの扱いも一枚に並べておくと、見通しが立ちやすい。消費税だけは他と逆の向きになる。
| 受け取る側 | 所得税・法人税 | 消費税 |
|---|---|---|
| 法人 | 益金に算入。固定資産に充てた分は圧縮記帳で繰延べ | 不課税 |
| 個人事業主(事業に関するもの) | 事業所得の総収入金額に算入 | 不課税 |
| 個人(事業と関係のない一時金) | 一時所得。特別控除は最高50万円 | 不課税 |
一時所得なら、五十万円までは税金が出ない
個人が事業と関係なく受け取った支援金は、計算の仕組みそのものが事業の収入と違う。国税庁は一時所得の金額を、総収入金額から収入を得るために支出した金額を引き、さらに特別控除額を引いて求めるとしている。特別控除額は最高五十万円である。そして求めた金額の二分の一だけを、給与などほかの所得と合わせて総所得金額に入れる。
この二段構えは効き方が大きい。六十万円の支援金を受け取り、それを得るために十万円を使ったとすれば、六十万円から十万円と五十万円を引いて残りはゼロになる。税額は出ない。百万円を受け取り経費がなかった場合でも、五十万円を控除した残り五十万円の半分、つまり二十五万円が課税の対象に乗るだけである。
ただし差し引ける支出の範囲は狭い。国税庁は、その収入を得るために直接要した金額に限られると注記している。引っ越しや移住にかかった費用がどこまで入るかは個別の判断になり、同じ年に別の一時所得があれば特別控除は合わせて五十万円で打ち止めになる。移住に伴う支援金の金額そのものは地方移住の補助金はいくらで確かめられる。
設備に使った分だけは、先に送れる
入金した年に利益が膨らむ問題を避ける仕組みが、法律のなかに用意されている。所得税法では第四十二条と第四十三条がこれにあたり、固定資産の取得または改良に充てるために国または地方公共団体から補助金や給付金の交付を受け、その目的どおりに資産を取得または改良した場合、その部分を総収入金額に算入しないこととされている。法人では圧縮記帳と呼ばれ、法人税法第四十二条が同じ役目を担う。
気をつけたいのは、税金が消えるわけではないという点である。特例を受けた資産の取得費は、取得や改良にかかった金額から算入しなかった補助金額を差し引いた残額になり、減価償却費はこの小さくなった取得費を基に計算する。毎年の償却費が減るぶん、将来の所得が増える。負担の総額は変わらず、時期だけが後ろにずれる。
手続きも条件になっている。確定申告書に一定の事項を記載し、国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書を添えて所轄の税務署長に提出しなければならない。対象は固定資産に充てた部分だけで、専門家への謝金や技術導入費といった経費に充てた部分には使えない。詳細は国税庁のタックスアンサーNo.2202に載っている。
消費税はかからないが、申請額は減らされる
消費税の扱いだけは所得税や法人税と向きが逆になる。国税庁は、寄附金や祝金、見舞金、国または地方公共団体からの補助金や助成金等を、課税の対象とならない取引の例として挙げている。理由は一般的に対価を得て行う取引ではないからだと書かれている。商品やサービスを渡した見返りではないので、受け取っても売上には立たない。
ところが、ここから補助金の申請額に跳ね返る論点が出てくる。補助事業で払った経費のうち消費税分は、課税事業者であれば仕入税額控除を通じて取り戻せる。取り戻せる額まで補助してしまうと二重になるため、小規模事業者持続化補助金の公募要領は、交付申請書の記入にあたって消費税等仕入控除税額を減額して申請しなければならないと定めている。課税事業者は消費税および地方消費税の相当額をあらかじめ補助対象経費から外しておく。
逆に、免税事業者や簡易課税の事業者、インボイス発行事業者となる小規模事業者向けの二割特例を使う事業者は、控除で取り戻せないため消費税分を対象経費に含めて申請し、その内容で交付決定を受けられる扱いになっている。自分がどの立場かで申請書の数字が変わるので、見積を作る前に確かめておきたい。
補助事業が終わると、控除できた消費税額を交付元へ報告する手続きが続く場合もある。多くの交付要綱では、仕入控除税額が確定した時点で報告を求め、金額があれば相当額を返還させる仕組みになっている。ゼロであっても報告書の提出が必要とされることがあり、事業が終わったあとに宿題が残る形になる。
返還になると、年一割強の加算金が付く
税金の話を詰めるときに、同時に見ておきたいのが返還の規定である。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の第十九条は、交付決定の取消に伴って返還を命じられた場合、受領の日から納付の日までの日数に応じ、年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならないと定めている。納期日に遅れれば、同じ利率の延滞金も重なる。
偽りその他不正の手段により交付を受けた場合は、同法第二十九条で五年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金、あるいはその併科と定められている。交付の目的と違う用途に使った場合も別の条で罰則が置かれている。悪意がなくても、報告の内容が交付決定の条件に合わなければ返還の対象になりうる。
だからこそ記録が効く。小規模事業者持続化補助金では、補助事業に関係する帳簿および証拠書類を事業終了日の属する年度の終了後五年間保存し、事務局や会計検査院の求めにいつでも応じられるようにしておく義務がある。地域の仕事と暮らしを追うFLASPOでも、申請より入金後の管理で苦労する声をよく聞く。支援制度の全体像は地域起業の支援制度で並べている。
よくある疑問
赤字なら税金はかからないのか。所得が出なければ所得税や法人税の負担は生じないが、補助金そのものは収入として計上する必要がある。赤字額が縮むことで、翌期以降に繰り越せる欠損金が減る場合はある。
確定申告はいつ必要になるのか。事業所得として受け取った個人事業主は通常の申告に含める。会社員が事業と無関係の一時金を受け取った場合、一時所得の金額から特別控除を引いた残りがゼロなら申告は要らないが、残る場合は申告の対象になる。
補助金に源泉徴収はされるのか。一般に支給の時点で税金が引かれることはなく、受け取った額がそのまま入金される。あとから自分で申告して納める形になるため、入金額をすべて使い切ると納税時に資金が足りなくなる。
消費税の申告では補助金をどう書くのか。不課税なので課税売上にも非課税売上にも入らない。課税売上割合の計算にも影響しないが、補助金で買った資産の仕入税額控除については交付元への報告や返還を求められることがある。
住民税にも影響するのか。所得税の計算に乗った金額はそのまま住民税の課税所得にも反映されるため、翌年度の住民税や国民健康保険料が上がることがある。所得税だけを見て資金を残しておくと、翌年の請求で足りなくなる。
どこを読めば確かめられるのか。一時所得の計算式は国税庁のタックスアンサーNo.1490、消費税の扱いは同No.6157にある。判断に迷う金額なら、交付元の窓口と税務署の両方に当たるのが早い。
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