賃貸でも持ち家でも、住まいにかけるお金が多すぎるのか少なすぎるのかは、自分の家計簿を眺めても判断できない。比べる相手が必要になる。ところが平均値を調べると、今度は数字が低すぎて拍子抜けすることが多い。原因は調査の作りにあって、見るべき統計を取り違えると相場を見誤る。国の調査にある実額を並べて、賃貸と持ち家それぞれの水準と、自分の上限を決める手順を組み立ててみる。
平均の住宅費が実感と合わない理由
総務省統計局の家計調査(2024年平均)によると、2024年の二人以上の世帯の住居費は1か月あたり18,088円だった。消費支出300,243円に対して6.0%にすぎない。単身世帯でも住居費は23,373円で、消費支出169,547円の13.8%にとどまる。賃貸で暮らしている人の家賃と比べると、明らかに桁が足りない。
ずれは三つの事情から生まれている。第一に、この調査の「住居」は家賃地代と設備修繕・維持を合わせた費目で、家賃を払わない持ち家の世帯も同じ平均に入っている。第二に、住宅ローンの元金返済は消費支出として数えない。第三に、持ち家に住む人が家賃を払っていると仮定して計算する帰属家賃も含まれていない。
つまり18,088円は賃貸の相場ではなく、持ち家と賃貸が混ざった全体の姿を表した値である。相場を知る目的なら、賃貸に入居した世帯だけを調べた統計と、住宅を買った世帯だけを調べた統計を別々に当たるほうが早い。以下では国土交通省と住宅金融支援機構の調査を使い、借りる場合と買う場合を分けて確かめる。
借りる場合は中央値のほうが使える
国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査は、前年度に民間賃貸住宅へ入居した世帯に家賃や契約の中身をたずねている。入居した住宅の月額家賃は平均77,677円、中央値は70,000円だった。平均が中央値を7千円あまり上回るのは、都市部の高額な物件が平均を押し上げるためで、入居した世帯の半分は7万円以下に収まっている。自分の家賃を当てるなら、中央値のほうが肌感覚に近い。
毎月の負担は家賃だけで終わらない。共益費の平均は4,441円で、家賃と足すと8万2千円台になる。反対に負担を下げる要素もある。勤務先から住宅手当を受けている世帯は23.8%で、受けている世帯の平均額は月31,428円。4世帯に1世帯は、手当のぶんだけ実質の支出が軽い。
入居世帯の平均世帯年収は486万円で、構成比では「400万円未満」が33.9%と最も多い。年収400万円台で家賃7万円台というのが、いまの民間賃貸のおおよその重心である。ただし地域差は水準そのものを変えるので、全国平均を自分の街に当てはめる前に地元の相場を見ておきたい。地域ごとの開きは都道府県別の家賃相場に整理してある。
買う場合は総額と月々の返済に分けて見る
購入側の相場は、物件価格ではなく所要資金で見るのが実務に近い。土地代や諸費用まで含んだ総額だからである。住宅金融支援機構の2024年度フラット35利用者調査によると、利用者の平均世帯年収は669万円。住宅の種類別の所要資金と、そのうち機構の融資でまかなった額は次のとおりだった。
| 融資区分 | 所要資金 | 融資金 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 注文住宅 | 3,936万円 | 3,080万円 | 856万円 |
| 土地付注文住宅 | 5,007万円 | 4,251万円 | 756万円 |
| 建売住宅 | 3,826万円 | 3,260万円 | 566万円 |
| マンション | 5,592万円 | 4,033万円 | 1,559万円 |
| 中古戸建 | 2,573万円 | 2,208万円 | 365万円 |
| 中古マンション | 3,033万円 | 2,365万円 | 668万円 |
差額は自己資金や別の借入でまかなう部分にあたる。マンションは所要資金が最も高いうえに差額も1,559万円と大きく、手元の資金が結果を左右しやすい。反対に中古戸建は所要資金2,573万円で差額365万円と、必要な自己資金が小さい。中古住宅の利用割合は前年度から7.4ポイント増えて34.8%になり、平均築後年数は中古戸建23.3年、中古マンション30.3年まで伸びている。
月々の負担を示すのが総返済負担率で、1か月あたりの予定返済額を世帯月収で割った値である。2024年度の平均は23.2%、前年度から0.2ポイント下がった。融資区分別では土地付注文住宅が26.8%で最も高い。国土交通省の調査では注文住宅を取得した世帯の年間返済額が144.8万円、世帯年収に占める割合が18.4%となっており、調査の対象も分母も違うぶん数字はそろわないものの、2割前後が選ばれている水準だと読める。
自分の上限を二つの向きから決める
相場がわかっても、そのまま自分に当てはめられるわけではない。上限の決め方には向きの違う二つの方法がある。ひとつは実際の平均をそのまま掛ける方法で、総返済負担率23.2%を税込みの月収に当てる。年収別に計算すると次のようになる。
| 年収(税込み) | 月収に換算 | 23.2%に当たる額 |
|---|---|---|
| 400万円 | 約33.3万円 | 約7.7万円 |
| 500万円 | 約41.7万円 | 約9.7万円 |
| 600万円 | 約50.0万円 | 約11.6万円 |
| 669万円 | 約55.8万円 | 約12.9万円 |
年収を12で割った月収に23.2%を掛けた計算値で、669万円はフラット35利用者の平均世帯年収にあたる。借りる場合もこの表を流用できるが、家賃には共益費と更新料が乗り、買う場合には管理費・修繕積立金・固定資産税が乗る。同じ数字でも後ろに付くものが違う。
もうひとつは残りから決める方法である。手取りの月収から住まいの費用を引き、残った額で生活が回るかを確かめる。家計調査では、住居費を除いた消費支出は単身世帯で146,174円、二人以上の世帯で282,155円だった。この水準を確保できるかどうかが、平均値より実務的な歯止めになる。先に貯める額を決めてしまう手もあり、仕組みの作り方は貯金の習慣化にまとめている。
相場より高いときに動かせるもの
重さの感覚は統計にも出ている。国土交通省の調査では、家賃について「非常に負担感がある」と「少し負担感がある」を合わせると52.9%にのぼる。住宅選びで妥協した点としては「価格・家賃(予定より高くなった)」が27.2%で最も多かった。半分を超える世帯が重いと感じ、4分の1あまりは予算を超えて決めている。
手を入れられる余地は三つある。ひとつは入居時の一時金で、敷金・保証金があった世帯は57.7%、礼金があった世帯は42.6%、仲介手数料があった世帯は44.2%だった。いずれも「1か月ちょうど」が最も多い。裏を返せば、敷金のない物件が4割、礼金のない物件は6割近くあることになる。
ふたつめは広さと距離の取り替えである。民間賃貸に移った世帯の延べ床面積は、住み替え前の63.8平方メートルから入居後49.7平方メートルへ14.1平方メートル狭くなり、通勤時間は片道平均33.2分で住み替え前より7.4分短くなっていた。狭さを引き受けて近さを買う形になっている。
みっつめは住む場所の前提そのものを動かすことだ。勤務先の近くという条件を外せば、同じ家賃で選べる範囲は広がる。拠点を一つに固定しない暮らし方なら、FLASPOのように地域をまたぐ活動と費用がどう噛み合うかを先に確かめておくと、住居費の上限そのものを引き直せる。
よくある質問
家賃は手取りの3割までという目安は正しいのでしょうか。公的な調査にこの基準そのものは出てこない。参考になるのはフラット35利用者の総返済負担率23.2%で、分母は税込みの月収である。手取りを分母にすれば同じ支払額でも割合は上がるため、3割という言い方だけが独り歩きしやすい。分母が税込みか手取りかを確かめてから使いたい。
平均より家賃が高い部屋に住んでいます。見直すべきでしょうか。家賃の水準は地域で大きく動くので、全国平均との比較だけでは判断できない。確かめる順番としては、住宅手当の有無、共益費を含めた総額、住居費を引いた後に残る生活費の三つである。残りで生活が回っているなら、平均より高いこと自体は問題にならない。
初期費用はいくら見ておけばよいですか。国土交通省の調査では敷金・保証金、礼金、仲介手数料のいずれも「1か月ちょうど」が最多だった。家賃7万円なら各1か月で21万円、ここに前家賃と火災保険、引っ越し代が加わる。敷金や礼金のない物件を選べばこの部分は圧縮できる。
中古住宅のほうが負担は軽いのでしょうか。所要資金だけを見れば中古戸建が2,573万円で最も低く、必要な自己資金も小さい。ただし平均築後年数は23.3年で、修繕や設備の更新が早く来る可能性がある。購入後にかかる費用を含めて比べる必要がある。
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