直近に入った契約の4分の1は、新規ではなく転換だった
見直しという言葉は曖昧だ。入り直すのか、削るのか、別会社に移るのか。実際に何が起きているかは、生命保険文化センターの2024年度の全国実態調査が加入方法を聞いている。直近に加入した民間の生命保険のうち「新規に加入」は58.8%(前回60.4%)で、「下取り制度(転換制度)を利用して加入」が25.3%(前回22.4%)だった。
転換の比率は前回より2.9ポイント上がっている。4件に1件は、既にある契約を元手にして別の契約へ組み替えた結果だということになる。加えて2021年からの3年間に解約や失効を経験した割合は10.0%(前回10.3%)で、見直しの一部は契約を手放す形で表れている。
誰を通じて動いているかも偏りがある。加入時の情報入手経路は「生命保険会社の営業職員」が44.8%で最も多く、加入経路としても営業職員が56.7%を占めた。次が保険代理店の窓口や営業職員で15.7%、通信販売は7.8%にとどまる。向こうから声がかかって始まる見直しが多数派なので、自分の側に判断の基準を持っておく意味は大きい。
入口は保障額ではなく、払込額のずれから探す
どこから手をつけるか迷ったら、金額の二つの数字を並べるのが早い。世帯が1年間に実際に払い込んでいる保険料の平均は35.3万円、これに対して現在の保険料を含めて「払える」と考えている支出可能保険料は29.7万円(前回31.8万円)だった。平均で5.6万円、払えると思う額を超えて払っている。
保障の中身への評価も割れている。加入している生命保険の保障内容について「充足感あり」は53.2%で、「充足感なし」は34.2%(前回31.5%)と増えた。払いすぎている感覚と、足りていない感覚が同じ調査に同居している。これは金額の総量ではなく、配分がずれている状態を示していると読める。
では何を増やし何を減らしたいのか。今後増やしたい準備項目は「世帯主の老後の生活資金の準備」が34.6%で最多、次が「配偶者の老後の生活資金の準備」29.6%だが、「特にない」も35.6%ある。一方で減らしたい項目は「特にない」が69.5%と大半を占めた。増やす方向には具体的な希望があるのに、減らす方向の検討はほとんど進んでいない。見直しが保険料の増加につながりやすい理由がここにある。
手段は五つ、変わるものと失うものが違う
見直しは「解約して入り直す」だけではない。いまの契約を残したまま調整する方法が複数あり、どれを選ぶかで保険料と保障、そして積み立て部分の扱いが変わる。手段ごとの性格を並べると次のようになる。
| 手段 | 変わること | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 特約の中途付加 | いまの契約に保障を足す | 保険料が増える。クーリング・オフの対象外 |
| 減額 | 保険金額を下げ、保険料も下がる | 下げた部分は戻せない |
| 払済保険へ変更 | 以後の払い込みを止め、保障額を小さくして続ける | 特約が消えることが多い |
| 転換(下取り制度) | いまの契約の積立部分を元手に新しい契約へ組み替える | 予定利率が契約時のものから入れ替わる |
| 解約して新規加入 | 契約を終えて別の契約を結ぶ | 解約返戻金が払込額を下回る場合がある。年齢で保険料が上がる |
表のうち転換がいちばん分かりにくい。古い契約の積立部分を頭金のように使って新しい契約に移す仕組みなので、保険料の上がり方は抑えられる。ただし予定利率も新しい契約のものに替わる。高い予定利率で結んだ古い契約を手放す形になることがあるため、元の契約の条件を確認しないまま進めるのは危うい。4件に1件がこの方法である以上、確認の有無が差になる。
減額と払済は、保障を削って保険料を軽くする方向だ。どちらも契約そのものは生き残るので、年齢が上がってから入り直すより不利になりにくい。支出可能保険料を超えて払っているなら、解約より先にこの二つを検討する順番になる。
転換にはクーリング・オフが効き、更新と中途付加には効かない
申し込んだあとで考え直せる期間がある。生命保険文化センターの説明では、クーリング・オフの期間は初日を含めて8日が一般的で、会社によって10日、15日、30日へ延ばしている例もある。起算日は、クーリング・オフに関する書面を受け取った日か申込日の、どちらか遅い日だ。
重要なのは、適用されない場合が決まっていることだ。医師の診査を受けた契約、保険期間が1年以下の契約、既にある契約への特約の中途付加、そして更新は対象から外れる。逆に新規の加入と転換は対象に入る。見直しの手段のうち、やり直せるものとやり直せないものが分かれている点は、表のどの行を選ぶかに直結する。
細かい条件は会社や商品、払込方法によって異なるので、申込書と一緒に渡される書面で確かめるのが確実だ。8日という短さを考えると、その場で結論を出さずに持ち帰るほうが安全な場面は多い。公的な保障がどこまで効くかを先に押さえておく手もある。範囲は公的保険と民間保険を比べた記事で整理している。
会社を替えるとき、制度の側で守られている範囲
勧められた側が全部を見抜く前提にはなっていない。金融庁の資料によれば、平成26年改正の保険業法で募集する側に情報提供義務と意向把握義務が課され、平成28年5月末に施行された。契約が自分に合うかを判断するために必要な情報を提供することと、顧客の意向を把握して提案することが義務になっている。複数の会社の商品から勧める場合は、比較できる商品の概要と、その商品を勧める理由の説明も求められる。
勧められた理由を聞き返すのは、だから特別な要求ではない。説明する側の義務の裏返しであり、転換のように条件が入れ替わる手段ではとくに意味を持つ。意向把握は提案の前後で照らし合わせる形になるので、最初に伝えた希望と最終の設計図が合っているかを自分でも確かめておきたい。
会社が破綻した場合の備えもある。保険契約者保護機構は平成10年12月1日に生命保険と損害保険で別に設立され、破綻した会社の契約の移転などに資金援助を行う。補償限度は責任準備金の一定割合で、死亡保険や生存保険は原則90%までだ。破綻時の予定利率が過去5年間つねに基準利率の3%を超えていた高予定利率契約は、90%から予定利率と基準利率の差の5年分の総和の半分を引いた率になる。機構の借入限度額は生命保険で4,600億円、損害保険で500億円と定められている。家計の備え方はFLASPOでも扱う領域である。
よくある質問
見直しのきっかけはいつがよいのか。必要額が動く出来事に合わせるのが基本で、子どもの誕生や進学、住宅の購入、転職、独立がその節目にあたる。調査では今後増やしたい準備として老後の生活資金が34.6%で最多だったが、増やす検討だけ進めると払込額が支出可能保険料を超えやすい。減らす側も同じ回に数えておきたい。
転換は損なのか。一概には言えない。保険料の上がり方を抑えられる反面、予定利率が新しい契約のものに替わる。古い契約の予定利率と、新しい設計で得られる保障の中身を並べて比べる必要がある。判断材料が足りないと感じたら、8日のクーリング・オフが効く手段であることを思い出せばよい。
保険料を下げたいが保障は残したい場合はどうするか。減額と払済保険への変更が、その目的に最も近い。減額は保険金額を下げて保険料を軽くし、払済は以後の払い込みを止めて保障額を縮める。どちらも契約を手放さないため、年齢による保険料の上昇を受け直さずに済む。
医療保障は入り直したほうがよいのか。医療保険・医療特約の世帯加入率は95.1%(前回93.6%)で、先進医療特約は54.0%にとどまる。新しい商品のほうが給付の範囲が広い場合はあるが、入り直すと年齢に応じた保険料で計算される。中途付加で足せるなら、そちらが先の選択肢になる。公的給付の範囲は健康保険の給付をまとめた記事で確かめられる。
出典は公益財団法人生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査 速報版」と「クーリング・オフ制度とは」、金融庁「保険契約者保護機構について」および「平成26年改正保険業法に係る政府令・監督指針」による。
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