投資の始め方|つみたて投資枠375本から1本を選ぶまでの手順

投資の始め方|つみたて投資枠375本から1本を選ぶまでの手順

口座を開く前に、動かせるお金の線を引く

証券口座の申込画面まで進んだところで手が止まる、という話を聞くことがある。商品名が並ぶ一覧を見ても、どれを選べば正しいのか決める材料が自分の側にないからである。順番が入れ替わっているだけで、最初に決めるのは商品ではなく、しばらく使う予定のない資金がいくらあるかという家計の線引きになる。

総務省統計局の家計調査によると、2025年平均の消費支出は二人以上の世帯で1世帯当たり1か月314,001円、単身世帯で173,042円だった(総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」)。収入が止まった場合に生活を続けるための現金を3か月から6か月分と考えるなら、二人以上の世帯で約94万円から188万円、単身世帯で約52万円から104万円を預金に置いておく計算になる。

この分を確保したうえで残る金額が、値動きのある資産に回せる上限である。先に現金を置く理由は精神論ではない。相場が下がっている時期に生活費が不足すると、下がった値段で売る以外の選択肢がなくなるためだ。損失が確定する場面は、商品選びの失敗よりもこの形で起きやすい。

半年後に使う予定のある学費や引っ越し費用も、同じく預金側に置く。手取りから固定費を引いて余力を測る手順は、お金の管理方法をまとめた記事の考え方がそのまま使える。

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制度を決めてから、中身の商品を見る

回せる金額が出たら、次はどの器に入れるかを決める段階になる。同じ投資信託を買っても、置く口座によって税金と引き出しやすさが変わるため、商品より先に器を決めたほうが迷いが少ない。

器 年間に入れられる額 利益への課税 引き出し
NISAのつみたて投資枠 120万円 非課税 いつでも可能
NISAの成長投資枠 240万円 非課税 いつでも可能
iDeCo 加入区分ごとに上限が異なる 拠出時に所得控除、運用益は非課税 原則60歳まで不可
課税口座 上限なし 課税(損益通算と繰越控除が可能) いつでも可能

NISAは2つの枠を併せて年間360万円まで、生涯で保有できる額は1,800万円(このうち成長投資枠は1,200万円)までと決まっている。非課税で持てる期間に期限はなく、売却した分の枠は翌年以降に再び使える(金融庁「NISAを知る」)。

老後資金だけを目的にするならiDeCoの所得控除が効くが、60歳まで引き出せない点は家計の自由度を下げる。使う時期が未定の資金から始めるなら、まずNISAのつみたて投資枠に置き、必要になれば売れる状態を保つほうが無理がない。

手続きは1人1口座、変更は年単位

NISAの口座は、金融機関をまたいで同時に複数持つことができない。1人につき1口座で、つみたて投資枠と成長投資枠を別々の会社に分けることもできない。この制約があるため、申込先は最初に少し考えておく価値がある。

金融機関を変えたい場合は年単位の手続きになる。いま使っている会社に金融商品取引業者等変更届出書を出して勘定廃止通知書を受け取り、新しい会社の非課税口座開設届出書と一緒に提出する。届出書を出せるのは、変更後の口座を使いたい年の前年10月1日からその年の9月30日までで、その年の枠で既に買い付けていればその年分は変更できない(国税庁「NISA口座の新規開設又は変更に関する手続等について」)。

申込に必要なのは本人確認書類とマイナンバーの確認書類である。提出後に二重口座がないかを税務署が確認する仕組みがあり、同じ年に2つの口座を開いた場合はあとから無効になる。利用できるのは、その年の1月1日時点で18歳以上の居住者に限られる。

2027年1月からは0歳から17歳までもつみたて投資枠を使えるようになり、未成年の年間投資枠は60万円、保有できる額は600万円となる。ただし未成年の間は金融機関の変更ができないため、子ども名義で始める場合は最初の選択がより長く続くことになる。

375本の対象商品をどう絞るか

つみたて投資枠で買える投資信託は、2026年10月15日時点で375本ある。内訳は次のとおりで、金融庁が届出を受けた一覧として公表されている(金融庁「つみたて投資枠対象商品」)。

区分 国内 内外 海外
公募投信(株式型) 67本 36本 97本
公募投信(資産複合型) 6本 155本 3本
ETF 5本 — 6本

375本という数は多いように見えるが、この枠に入るには法令上の条件を満たす必要がある。毎月分配型や信託期間が20年未満のもの、デリバティブ取引を使う一定の商品は対象から外れている。長く持つ前提に合わない形の商品が、制度の側で先に落とされていると考えればよい。

残る判断材料のうち、事前に確かめられる確実な数字が運用管理費用である。同じ時点の集計では、投資先を国内とする指定インデックス投信の信託報酬は平均0.27%、内外や海外を投資先とするものは平均0.33%で、法令上の上限はそれぞれ0.5%と0.75%に設定されている。相場の先行きは読めないが、この費用は毎年確実に引かれるため、ここを低く抑える判断だけは最初からできる。

なお、実際に買える商品は金融機関ごとに異なる。375本すべてを扱っている会社はなく、選びたい1本が申込先で買えるかどうかは口座を開く前に確認しておきたい。値動きの性質をどう見るかは投資のリスクを種類ごとに整理した記事で扱っている。

最初の1年は、金額を小さく始めて止めない

積立額は、手取りから固定費と預金に残す分を引いた残りの範囲で決める。月1万円でも制度の使い方は変わらない。むしろ最初の数か月で額を上げすぎて、家計が窮屈になって解約する形が一番もったいない。つみたて投資枠は年間120万円なので月10万円まで入るが、上限を使い切ることが目的ではない。

買い付けは自動で引き落とす設定にしておく。毎月の判断を挟まないほうが、相場が下がった月に買い付けを止めてしまう事故を防げる。評価額を毎日見る必要もない。点検は年に1回、積立額が家計に合っているかと、同じ資産ばかりに偏っていないかを確かめれば足りる。

制度を使う人は増え続けている。金融庁の集計では、NISA口座は2025年12月末で2,821万口座、買付額は累計71兆円に達した。政府は2027年12月末までに3,400万口座・56兆円を目標としており、買付額のほうは既に目標を超えている(金融庁「NISAの利用状況」)。

数が増えることは、同じ商品が良いという根拠にはならない。それでも、口座を開く手間や制度の分かりにくさが以前より下がっていることは確かである。働き方や暮らす場所を組み替えながら資産を育てたい人には、FLASPOが扱う地域と仕事の情報も判断の材料になる。

よくある質問

いくらから始められるのか。金融機関によって最低金額は異なり、月100円や1,000円から設定できるところもある。金額の大小より、引き落としが続く範囲に収めることが先に来る。半年続けて家計に無理がなければ、そこから増やせばよい。

一括で買うのと毎月積み立てるのでは、どちらが有利か。将来の値動きが分からない以上、どちらが有利かは事後にしか決まらない。積立が持つ利点は、買う時期を分けることで一度の判断に結果が左右されにくくなる点にある。高い時期にまとめて買ってしまった、という後悔を避けやすい形である。

銀行と証券会社のどちらで開くべきか。制度の中身は同じだが、取り扱う商品の本数と種類が違う。株式やETFを買う可能性があるなら証券会社に限られる。投資信託の積立だけなら銀行でも足りるが、候補の1本が扱われているかは事前に確かめたい。

始めてすぐ値下がりしたらどうするか。買った直後に下がることは珍しくない。積立を続けているなら、下がった月は同じ金額でより多くの口数を買っている。判断が必要になるのは、生活資金に手をつけそうなときだけで、その場合は積立額を下げるか一時的に止める。

どれくらい勉強してから始めるべきか。制度の枠と手数料の見方、自分が何年使わない資金を入れているか、この3つが分かれば最初の1本は選べる。残りは少額で動かしながら覚えるほうが早い。何のために増やすのかを先に整理したい場合は、投資で得られるものを整理した記事から読むと順序がつながる。


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