出かけている割合は、学生の世代がいちばん高い
旅行に出る余裕ができるのは就職してからだ、と考えている人は少なくない。ところが国の統計はその感覚とずれている。宿泊をともなう国内旅行を実施した人の割合は、いちばん若い層でいちばん高い。
観光庁が国会への報告としてまとめた令和7年版観光白書の概要版は、観光・レクリエーション目的の国内宿泊旅行経験率を年代別に示している。2024年の速報値で20代以下が64.0パーセント、70代以上が30.7パーセントと、倍以上の開きがある。白書は若年層ほど経験率が高く堅調に回復していると述べ、経験率の低い高齢層が増えることが国内旅行市場全体を押し下げていると分析している。
同じ資料は、年間の旅行回数が二極化していることにも触れている。まったく行かない層と多く行く層がともに増え、10代から20代では実施の傾向が強まり、70代では下がった。若い世代の内側でも、出かける人と出かけない人に分かれているということになる。
以下では、学生が握っている時間の使い方、足を止めている家計の側、同世代が選んでいる旅の中身、そして混雑を避けられる行き先という順に確かめていく。
いちばん持っているのに使えていないのが曜日の自由
宿と交通の値段は、泊まる日によって大きく動く。ここで効いてくるのが、授業やアルバイトの配置を自分で組み替えられる立場である。ところが実際の行動はその強みを使い切っていない。
観光庁が2025年1月に全国の16歳から79歳までの男女3,000人に対して行ったオンライン調査では、観光目的の国内旅行をどの曜日に実施したかを年代別に聞いている。20代は「すべて休日」が24.3パーセント、「休日が多い」が35.5パーセントで、約6割が休日側に寄っていた。「平日が多い」と「すべて平日」を合わせても17.3パーセントにとどまる。
| 年代 | すべて休日 | 休日が多い | 休日・平日同じくらい | 平日が多い | すべて平日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10代 | 29.9% | 32.6% | 24.3% | 7.6% | 5.6% |
| 20代 | 24.3% | 35.5% | 23.0% | 13.2% | 4.1% |
| 40代 | 31.8% | 29.5% | 18.0% | 16.5% | 4.2% |
| 70代 | 6.7% | 11.9% | 17.1% | 53.0% | 11.3% |
対照的なのが70代で、「平日が多い」が53.0パーセント、「すべて平日」が11.3パーセントを占める。混雑と価格の両方を避けられる時間帯を実際に使っているのは、退職後の世代だということになる。
白書は10代から50代の約6割が主に休日に旅行していることを挙げ、旅行需要の平準化を課題として示している。裏返せば、平日の宿と座席には空きが残っている。試験期間の前後や長期休暇の端にあたる平日へ1日ずらすだけで、同じ行程でも支払う額が変わる。
足を止めているのは時間ではなく家計の側
白書は、観光目的の国内宿泊旅行をしなかった理由も年代別に集計している。20代から60代では仕事などで休暇がとれないことと家計の制約があることが上位に並び、70代以上では自分の健康上の理由が前に出る。
学生に当てはめると、前の制約はいくぶん緩い。授業と部活動とアルバイトの配置次第で、平日の2日や3日を空けること自体は成り立つ。残るのは家計の側で、ここは工夫した分が金額になって返ってくる。
観光庁の旅行・観光消費動向調査2025年年間値(確報)では、国内の宿泊旅行の1人1回当たり旅行支出が72,412円だった。ここには参加費、交通費、宿泊費、飲食費、買物代、娯楽等サービス費が含まれる。宿に払う額ではなく、家を出て帰るまでの合計という定義である。
内訳のうち交通費と宿泊費は出発前に確定し、飲食費と買物代は現地で動く。先に決まる2つを低いところで固定してから、現地で使う額の上限を決めておくと、帰ってから足りなくなる事態を避けられる。
月々の支出を把握していないと、旅行に回せる上限もそもそも立たない。大学生のお金管理と節約では、意志の強さに頼らず支出を決める手順を扱っている。旅行は単発の出費に見えて、実際には数か月の積み立てで成り立つ買い物に近い。
同世代の関心は温泉より交流とイベントに向く
行き先を決める段になると、検索結果の上位に並ぶ温泉地と定番の観光名所で候補が埋まってしまう。しかし同世代の関心は、やや別の方向を向いている。
白書が示した、過去と比べて増えたまたは今後増やしたい宿泊旅行の年代別集計では、どの年代でも温泉と現地のグルメが上位に来る。そのうえで10代から20代は、趣味のイベントへの参加、アウトドアやスポーツ、現地の人との交流や地域貢献といった項目で他の年代を上回った。高齢層は温泉や自然、家族の親睦に寄る。
この差は予算の組み方にも影響する。音楽フェスや農作業の体験が目的なら、宿は寝るだけの場所でよく、浮いた分を参加費や移動費に回せる。逆に宿そのものを目的にするなら、泊数を1泊に削って設備の整った部屋を選ぶという判断になる。どちらが正しいという話ではなく、目的を先に決めると配分が自動的に決まるという話である。
関心のある分野から行き先を探す手もある。学生向けのコンテストや企画の情報をまとめたFLASPOのような場で、題材になっている地域を手がかりにするやり方だと、観光情報からは出てこない場所が候補に入ってくる。旅行のメリットを統計から整理した記事も、動く理由の側から同じ問いを扱っている。
混雑を避けたいなら、宿泊者の内訳が手がかりになる
価格と混雑を同時に避けたいとき、曜日のほかにもう1つ動かせる変数がある。それが地域である。訪日外国人の増加は全国に等しく及んでいるわけではない。
白書が引く宿泊旅行統計調査では、2024年の延べ宿泊者数は全国で6億5,028万人泊だった。このうち三大都市圏は2億9,763万人泊で、外国人が38.2パーセントを占める。一方、三大都市圏以外の道県にあたる地方部は3億5,264万人泊で、日本人が85.8パーセントである。
| 区分 | 延べ宿泊者数 | 日本人の割合 | 外国人の割合 |
|---|---|---|---|
| 全国 | 6億5,028万人泊 | 74.8% | 25.2% |
| 三大都市圏 | 2億9,763万人泊 | 61.8% | 38.2% |
| 地方部 | 3億5,264万人泊 | 85.8% | 14.2% |
三大都市圏とは東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8都府県を指す。この8都府県から外れた土地では、宿を埋めているのがいまも日本人である。白書は、地方部の旅行需要は日本人が下支えしていると書いている。
予約が取りにくい、値段が読めない、写真の行列に並ぶことになる。こうした悩みの多くは8都府県に集まっている。学生の予算で2泊を組むなら、地方部の鉄道沿線をたどる行程のほうが、同じ金額で見られるものが多くなる場面は少なくない。
よくある質問
宿泊で7万円という平均は高すぎないか。この金額は2泊3日で新幹線と旅館を使う層まで含んだ平均であり、学生の旅行が届かないのは当然である。自分の計画がこの数字の何割に収まるかを見る目安として持っておく程度でよい。
日帰りでも意味はあるのか。同じ確報では日帰り旅行の1人1回当たり支出が20,000円で、宿泊の3割以下にとどまる。宿泊費と移動の負担を避けて回数を重ねたい人には、現実的な選び方になる。
平日に行くと具体的に何が変わるのか。宿の料金設定と交通の混雑が変わる。白書が平準化を課題に挙げている通り、休日に需要が集まる構造そのものは変わっていないため、ずらした側に余地が残る。
荷物は何を基準にそろえるか。近年は機内に持ち込める物と宿に置かれる物の決まりが動いているため、量より先に可否を確かめる順番になる。旅行の持ち物では、変わった品目を国の資料から整理している。
はじめての一人旅はどこから決めるか。目的を1つだけ決めて、そこから曜日と地域を逆算するのが早い。見たいものが先に決まっていれば、宿のランクも泊数も自動的に絞られていく。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
