議論の前に、1日のうちどれだけ触っているかを置く
SNSと心の関係を語る言葉は多いが、量の前提が共有されていないまま進むことが多い。こども家庭庁の青少年のインターネット利用環境実態調査は、平日1日あたりの利用時間を学校種別に毎年度測っている。令和7年度調査では、いずれかの機器でインターネットを利用していると回答した青少年の平均利用時間は326.6分、つまり約5時間27分だった。前年度より約25分増えている。
学校種で割ると差が大きい。高校生は約6時間44分、中学生は約5時間24分、10歳以上の小学生は約3時間54分である。目的別では趣味・娯楽が最も長く、約3時間1分を占める。
| 区分 | 令和7年度の平均 | 5時間以上の割合 | 令和6年度の平均 |
|---|---|---|---|
| 総数 | 約5時間27分 | 47.6% | 約5時間2分 |
| 高校生 | 約6時間44分 | — | 約6時間19分 |
| 中学生 | 約5時間24分 | — | 約5時間2分 |
| 小学生(10歳以上) | 約3時間54分 | 28.8% | 約3時間44分 |
この時間は複数の機器の利用時間を合算したもので、「使っていない」を0分として平均を出している。睡眠と授業を差し引いた残りの大半が画面の前にあるという規模だと分かれば、心の話をどの土台の上で進めるべきかも決まる。
平均より、長時間側の厚みが動いている
平均の25分増は小さく見えるかもしれない。分布を見ると違う形が出てくる。令和7年度の調査結果(概要)によれば、3時間以上の割合は76.0%、5時間以上は47.6%だった。前年度は3時間以上が70.7%、5時間以上が42.3%、その前の令和5年度は70.8%と40.1%である。
平均が296.9分から302.3分、326.6分と動くあいだに、5時間以上の層は40.1%から47.6%へと7ポイント以上増えた。平均が延びたというより、長時間側の人数が増えて平均を押し上げている。小学生でも同じ傾向で、5時間以上は24.0%、24.7%、28.8%と推移した。
心の状態に関わるのは平均ではなく、この端のほうである。生活の他の予定が入らなくなる水準に何割が入っているかで、見るべき対象の人数が変わる。利用時間を減らす前に、どこに時間が流れているかを測るところから始める考え方は、時間管理アプリの選び方でも触れている。
高校生の4人に1人が、睡眠不足と集中の崩れを経験している
同じ調査には、インターネット上で何を経験したかを尋ねる項目がある。高校生の上位は、迷惑メッセージやメールが送られてきたことがある39.6%、自分が知らない人やお店などからメッセージやメールが来たことがある28.3%、インターネットにのめりこんで勉強に集中できなかったり睡眠不足になったりしたことがある26.2%、インターネットで知り合った人とやりとりをしたことがある21.7%だった。
3番目の項目は、本人の自覚として聞かれている点が重要である。外から見た依存の判定ではなく、集中できなかった、眠れなかったという経験の有無を本人が答えている。高校生の4人に1人がそう答えているという数字は、量の問題が体のリズムとして出ていることを示す。
上位2つは、送られてくる側の経験である。自分の使い方を整えても消えない種類の負荷が、受信箱の形で日常に入ってきている。心の負担をSNSの使い方だけの問題として扱うと、この部分が残ってしまう。
ネットいじめは27,365件。ただし全体の3.6%である
文部科学省の令和6年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」は、いじめの態様を分類して集計している。公表された調査結果によれば、パソコンや携帯電話等を使ったいじめは27,365件で、前年度の24,678件から増えた。
同じ年のいじめの認知件数は概要のとおり769,022件、前年度は732,568件で、児童生徒1,000人当たりでは61.3件である。ネットを使ったいじめが総認知件数に占める割合は3.6%、前年度は3.4%だった。件数は増えているが、構成比としては小さい。
この2つの数字は、どちらか一方だけを引くと話が偏る。27,365件だけを示せばネットが主戦場のように見え、3.6%だけを示せば小さな話に見える。実際には、いじめ全体が過去最多の水準で増えており、そのなかでネットを使うものも増え、比率はわずかに上がった、という形である。学校が把握できた範囲の集計であることも押さえておきたい。発見のきっかけとして最も多いのはアンケート調査など学校の取組による発見で48.0%、本人からの訴えは19.6%にとどまる。
同じSNSが、相談の入口として制度に組み込まれた
負荷の話だけで終わらないのが、この分野の特徴である。令和7年版自殺対策白書の第2章第2節は、電話とSNSを活用した相談事業の経緯を整理している。きっかけは平成29年10月に発覚した神奈川県座間市の事件で、同年12月19日の関係閣僚会議決定を受けて、SNSを活用した相談体制の整備が進んだ。LINEやWebチャットでテキストベースのやりとりを行う形である。
白書によれば、各団体の相談件数を合算した推移は5年間で一貫して増加している。令和3年度の伸びが大きく、コロナ禍を踏まえた体制強化と、24時間365日対応の団体が新たに加わったことが理由として挙げられている。いずれの年度でも女性の相談件数が男性を大きく上回り、ある団体のコラムでは女性からの相談が全体の約75%を占め、男性へのアクセスを広げることが課題だと書かれている。
年齢の傾向も明確である。白書が例として挙げた団体では、年齢階級が低くなるほど相談件数が多く、直近の年度ほど19歳以下の件数が増えている。電話では若年層の男性のほうが多いというデータもあり、手段ごとに届く相手が違うという整理になっている。
なぜテキストの窓口が効くのか、意識調査が答えている
白書は、令和3年度自殺対策に関する意識調査の結果を引いている。悩みを抱えたときに誰かに相談することをためらう理由として、家族や友達など身近な人には相談したくない(できない)悩みだからが52.2%、自分の悩みを解決できるところはないと思っているからが35.0%、専門家に相談したいが相談するハードルが高く感じるからが29.9%だった。
最も多い理由は、相談先が足りないことではなく、近い相手だからこそ言えないという構造である。だとすれば、匿名でテキストを打てる窓口が選ばれるのは自然な帰結になる。SNSを心の負担の原因としてだけ扱うと、この効き方が視界から落ちる。
一方で、2番目と3番目の理由は窓口の存在が知られていないことを示している。厚生労働省はまもろうよこころで電話とSNSの窓口をまとめており、検索事業者と連携した案内も行っている。誰がどのケアを担うのかという整理はメンタルケアとはの側でまとめている。地域で若い世代と接する活動にとっては、この一覧を手元に置いておくだけでも渡せるものが変わる。居場所づくりを進めるFLASPOのような取組でも、使い方の注意より先に窓口の場所を共有しておくほうが実際的である。
よくある質問
利用時間が長いと心の状態が悪くなると言えるのか。こども家庭庁の調査は利用時間と経験の有無を測っているが、因果関係を示すものではない。言えるのは、高校生の26.2%が集中できなかったり睡眠不足になったりした経験を自分で挙げている、という対応関係までである。
家庭でルールを決める意味はあるのか。この調査には家庭のルールの有無と保護者の取組を尋ねる項目が別に置かれている。時間の長短を一律に決める前に、長時間側に入っているかどうかを確かめるほうが優先度が高い。平均の5時間27分ではなく、5時間以上の47.6%という区切りが目安になる。
ネットいじめが見つかりにくいというのは本当か。令和6年度の調査では、いじめの発見のきっかけで本人からの訴えは19.6%にとどまり、学校の取組による発見が48.0%を占めた。ネットを使ったものに限った内訳ではないが、本人から言い出す経路が主ではないという点は共通の課題として読める。
SNSの相談窓口は誰でも使えるのか。白書が整理している事業は、団体ごとに対応日時が決まっており、24時間365日対応のところもある。相談件数は5年間で増え続けているため、混み合う時間帯があることも前提に、電話と併せて複数の経路を知っておくのが現実的である。
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