世代が入れ替われば解決するという見通し
この分野の議論では、最後に必ず同じ結論が置かれる。いまの若い世代は意識が違うから、時間が経てば自然に変わる、という見通しである。人口の入れ替わりに期待する考え方で、心強くはあるのだが、国の統計を並べてみると話はそう単純ではない。
変わったところと変わっていないところが、同じ世代の中に同時にある。希望する生き方の答えは十数年で大きく動いた。一方で、18歳で選ぶ進路の男女比はほとんど動いていない。職場での役割分担についての考え方も、年齢が下がるほど薄まるという形になっていない。この三つを順に見ていく。
前提として、何が社会的に作られた性別の割り振りなのかという整理はセックスとジェンダーの違いの記事に置いた。ここでは若い世代の数字だけを扱う。
理想の生き方は2021年に逆転した
国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査は、18歳から34歳の未婚者に理想とする生き方を尋ね続けている。選択肢は、仕事を続けながら子どもを育てる両立コース、いったん辞めて子育て後に再び働く再就職コース、専業主婦コース、子どもを持たないコース、結婚しないで働き続けるコースの五つである。
令和7年版の男女共同参画白書がまとめた推移では、未婚女性の理想は2015年の時点で再就職が34.6パーセント、両立が32.3パーセントと再就職が上に立っていた。それが2021年には両立34.0パーセント、再就職26.1パーセントと入れ替わる。専業主婦コースは同じ期間に18.2パーセントから13.8パーセントへ下がった。
変化の幅がより大きいのは男性側である。将来のパートナーに期待する生き方として両立を挙げた未婚男性は、2015年の33.9パーセントから2021年の39.4パーセントへ伸び、再就職は37.4パーセントから29.0パーセントへ落ちた。専業主婦を期待する回答は6.8パーセントまで下がっている。1987年の調査では男性の37.9パーセントが専業主婦を期待していたのだから、三十数年で五分の一以下になった計算になる。世帯の実態でも、2024年の共働き世帯数は専業主婦世帯数の3倍を超えている。
見落とされやすいのが、結婚を前提としない選択の伸びである。結婚しないで仕事を続けるコースを理想に挙げた未婚女性は、2015年の5.8パーセントから2021年には12.2パーセントへ倍増した。子どもを持たない生き方を選ぶ回答も4.1パーセントから7.7パーセントへ増えている。両立か再就職かという二択の枠組み自体が、若い層では自明でなくなりつつある。
進路の分かれ目は18歳にある
希望が変わったのなら進路も変わるはずだが、ここで数字の動きが止まる。文部科学省の学校基本調査をもとに白書が整理した、大学の学部に在籍する学生のうち女子が占める割合を分野別に見ると、全体の平均と個別の分野のあいだに大きな開きがある。
| 専攻分野 | 女子学生の割合(2024年度・学部) |
|---|---|
| 専攻分野計 | 45.9% |
| 薬学・看護学等 | 70.1% |
| 人文科学 | 64.0% |
| 教育 | 59.1% |
| 農学 | 46.8% |
| 医学・歯学 | 39.5% |
| 社会科学 | 37.3% |
| 理学 | 28.3% |
| 工学 | 16.7% |
全体では45.9パーセントで、進学そのものに男女差はほとんどない。ところが分野に落とすと、薬学・看護学等の70.1パーセントから工学の16.7パーセントまで、53ポイント以上の幅で分かれる。白書の第4分野も、女子学生の割合が高いのは薬学・看護学等と人文科学、低いのは工学と理学だと述べている。
この偏りが重い理由は、卒業後の進路と賃金に直結するからである。どの分野を選ぶかは、賃金水準の高い職種に入れるかどうか、研究職に進めるかどうかをほぼ決めてしまう。意識が変わっても、18歳の時点で分野が分かれていれば、その後の職業構成は同じ形のまま再生産される。女性が工学系の仕事に入っていく経路についてはプログラミングと女性の記事でも触れている。
20代の職場意識は一枚岩ではない
では意識のほうはどうか。内閣府男女共同参画局が2022年に20代から60代の1万906人へ行った調査は、41項目の思い込みを性別と年代に分けて集計している。家庭の役割分担に関する項目では、男性のうち20代と60代で大きな差があり、若い層のほうが同意が少ないという形が確認できる。
ところが職場の項目になると向きが変わる。報告書は、「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」について、20代から30代の男性で「そう思う」傾向が強いと指摘している。職場領域の項目全体でも、20代男性で同意の割合が高いものが多く見られた。年齢が下がるほど薄まるという前提は、少なくとも昇進の場面では成り立たない。
家庭については先行して変わり、職場については変わっていない。この食い違いは、就職して数年のうちに職場の慣行を学習した結果だと読むこともできるし、競争の場面では別の判断が顔を出すと読むこともできる。どちらにしても、採用した若手を放っておけば自然に是正されるという期待は、この集計からは支えられない。
学校は平等に見えて、社会はそう見えない
もう一つ、若い世代の経験の形を示す数字がある。2024年の世論調査で男女の地位の平等感を分野別に尋ねた結果である。女性の回答では、社会全体について「平等」と答えた人が12.2パーセントにとどまる一方、学校教育の場については67.4パーセントが「平等」と答えた。男性でも社会全体は21.9パーセントである。
学校という場だけを取り出せば、おおむね平等が実現していると受け取られている。つまり多くの人は、平等な場所で十八年を過ごしてから、そうではない場所へ出ていくことになる。入口で初めて差に出会うため、それが自分の能力の問題に見えてしまう。世代が若いほど落差の体験が強くなるという構造でもある。
この落差を埋める手当ては、意識の啓発よりも進路選択の手前に効く施策のほうが届きやすい。工学系の進路を具体的に見せる機会、研究職の働き方を知る機会、地元で働く選択肢の提示といった地道な取り組みである。国際比較での日本の位置はジェンダーギャップ、政策側の数値目標はジェンダー平等の記事で確認できる。地域での暮らし方と働き方を若い世代に見せる取り組みはFLASPOでも紹介している。
よくある質問
若い世代の意識はやはり変わっているのですか
生き方の理想については明確に変わっています。未婚女性の理想で両立が再就職を上回ったのは2021年の調査で、男性が将来のパートナーに期待する形でも同じ年に逆転しました。ただし職場の昇進に関する項目では、20代から30代の男性で同意の傾向が強いという結果が出ています。
工学の16.7パーセントという数字はいつのものですか
2024年度の学校基本調査にもとづく数字で、大学の学部に在籍する学生のうち女子が占める割合です。修士課程では15.8パーセント、博士課程では20.1パーセントとなっています。
進学率そのものに男女差はあるのですか
学部全体では女子学生が45.9パーセントを占めており、進学段階での差はほとんどありません。差が生じているのは進学するかどうかではなく、どの分野を選ぶかの段階です。
学校教育の場が平等だと思われているのは良いことではないのですか
それ自体は望ましい評価です。問題は社会全体への評価との落差で、女性では12.2パーセントしか平等だと答えていません。平等な環境から急に差のある環境へ移るため、戸惑いが本人の適性の問題に見えやすくなります。
企業が若手の採用で気をつける点はありますか
採用した時点で意識が整っているとは限らない、という点です。昇進や抜擢の場面で性別が判断に混じりやすいことが調査で示されているため、候補者名簿の作り方や評価項目を手順として決めておくほうが確実です。
専業主婦を望む若い人はいなくなったのですか
いなくなってはいません。2021年の調査でも未婚女性の13.8パーセントが専業主婦コースを理想に挙げています。選ぶ人が減ったという話で、選択肢として消えたわけではありません。
この数字はどこで確認できますか
生き方の希望は男女共同参画白書の特集部分、分野別の女子学生割合は同じ白書の科学技術・学術の章にそれぞれ図として載っており、どちらも元データのファイルが公開されています。思い込みの項目別集計は内閣府男女共同参画局の調査研究報告書で読めます。
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