コミュ力と就活|82.4%が選ぶ評価項目を面接でどう示すか

コミュ力と就活|82.4%が選ぶ評価項目を面接でどう示すか

選考で見られている順位を、資料で確かめる

求人票にも説明会にもコミュニケーション能力という言葉が並ぶ。ただ、それが何番目に重い項目なのかを数字で確かめた学生は多くない。日本経済団体連合会の「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」は、経団連の企業会員1,376社に尋ね、597社から回答を得ている(回答率43.4%)。

この調査は「選考にあたって特に重視した点」を20項目から5つ選ぶ形で聞いた。首位はコミュニケーション能力の82.4%で、報告書には16年連続で第1位と記されている。主体性が64.3%で10年連続の第2位、チャレンジ精神が48.9%で3年連続の第3位だった。

順位 重視した点 選んだ企業の割合
1 コミュニケーション能力 82.4%
2 主体性 64.3%
3 チャレンジ精神 48.9%
4 協調性 47.0%
5 誠実性 43.4%
6 ストレス耐性 35.2%
7 論理性 23.6%
17 語学力 6.2%
18 履修履歴・学業成績 4.4%
19 留学経験 0.5%

読むときに押さえておきたいのは回答企業の構成だ。調査は2018年7月20日から9月7日に行われ、回答した597社のうち従業員1,000人以上が71.4%を占めている。大企業に寄った集計であることは前提として外せない。

5社に4社が5つの枠の1つをここに使っている。一方で語学力は6.2%、履修履歴・学業成績は4.4%、留学経験は0.5%にとどまった。準備にかかる費用も時間も大きい項目のほうが、選ばれる割合は低い。

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「5つ選ぶ」形式が教えてくれること

この調査の作りを押さえておくと、数字の読み方が変わる。20項目のうち5つしか選べないため、企業は優先順位を強制的に明かしている。82.4%という値は、ほとんどの企業が限られた枠を割く価値があると判断したことを意味する。

同時に、コミュニケーション能力と協調性が別の項目として並んでいる点も見逃せない。話せることと、周囲と足並みをそろえられることが、集計上は切り離されている。面接で話し続けた人が通らないことがあるのは、この分け方が働いているためだ。

上位に並んだ5項目には共通点がある。コミュニケーション能力も主体性もチャレンジ精神も、持っているかどうかではなく、どう振る舞ったかで示される性質のものだ。対して下位の語学力や履修履歴、留学経験は、書類に書ける所有物である。企業は所有物より振る舞いの記録を優先したことになる。

そして語学力や成績との順位差は、学生側の時間配分に直結する。資格の勉強や留学の実績を積むより、質問への答え方を整えるほうが、企業が重視すると答えた項目に近い。もちろん職種によって語学が必須の求人はあるが、全体の傾向としては逆の配分をしている学生が多い。新卒就活の流れでは、準備の順番を段階ごとに整理している。

面接で示せるのは、会話の軽さではなく答えの形

では限られた面接時間で、この項目はどう示されるのか。評価する側が見ているのは、聞かれたことに対する答えになっているかどうかである。盛り上げた回数や沈黙を埋めた回数ではない。

経済産業省の社会人基礎力は、チームで働く力を発信力・傾聴力・柔軟性・情況把握力・規律性・ストレスコントロール力の6つに分けている。面接の場で同時に試されるのは、このうち傾聴力と発信力だ。質問の意図を取り違えずに受け取り、結論から順に返す。この往復が成立していれば、声の大きさは評価の中心にならない。

具体的には、質問に対して結論を先に置き、根拠を一つか二つ添え、聞かれていないことは足さない形が扱いやすい。「学生時代に力を入れたことは何か」に対して、活動の説明から始めて5分話すより、担った役割と結果を先に述べたほうが、受け取る側の負担が軽い。質問の型ごとに答えの骨格を用意する手順は面接の答えを構造で組み立てるで扱っている。

沈黙への対応も練習の対象にできる。意図が読めない質問が来たときは、推測で話し始めるより「お聞きになっているのは進め方のことでしょうか、それとも結果のことでしょうか」と確かめたほうが安全だ。確認できることは、傾聴力が働いている証拠として受け取られる。

言葉遣いは当日ではなく準備で決まる

面接で崩れやすいのは、内容より言葉の形である。文化庁が2025年3月に実施した令和6年度「国語に関する世論調査」(全国16歳以上、有効回収3,498人)では、自分の言葉の使い方に気を使っている人が80.9%を占めた。

その人たちが挙げた項目の上位は「改まった場で、ふさわしい言葉遣いをする」82.3%、「敬語を適切に使う」70.1%、「差別や嫌がらせと受け取られかねない発言をしない」66.0%、「年齢が離れた人に意味が通じるように発言する」57.3%である。面接官は世代の違う相手なので、4つ目の項目がそのまま当てはまる。

学内で通じる略語やサークルの固有名詞は、説明なしでは伝わらない。「ゼミの代表としてOB会との日程調整を担当した」のように、役割を一般の言葉に置き換えておけば、相手が業界や学部を知らなくても届く。これは当日の機転ではなく、前日までの書き換え作業で済む部分だ。

敬語についても、場数より確認で足りる。入室時と退室時の言い方、相手の社名と自分の大学名の扱い、質問を聞き返すときの一言を決めておけば、崩れる箇所の大半は塞がる。

自己評価の低さは、不利の証拠ではない

選考でこの項目が首位だと知ると、自分には向かないと感じる人が出てくる。こども家庭庁の令和4年度「こども・若者の意識と生活に関する調査」では、15歳から39歳の7,035人のうち「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」に肯定で答えた人が56.3%、「誰とでもすぐ仲良くなれる」が52.8%だった。半数近くが、この二つに自信を持てていない。

ただし、この自己評価と選考の評価軸は同じものではない。企業が5つの枠を割いたのは初対面での打ち解けの速さに対してではなく、業務を回すうえでやり取りが成り立つかどうかに対してである。同じ調査では「表情やしぐさで相手の思っていることがわかる」の肯定が76.1%、「その場に合った行動がとれる」が80.8%あった。受け取る側の力はすでに高い水準で自己評価されている。

足りないと感じている部分は、答えの形を決めておくことで埋められる。即興の話術を身につける話ではないため、準備した学生のほうが有利に働く。コミュ力のメリットでは、この力が実際に効く場面の範囲を扱っている。

練習の相手は選考の場以外にも置けると楽になる。学外の活動で年齢や立場の違う人と段取りを組む経験は、面接で話す材料と、言葉を置き換える訓練を同時に残す。FLASPOのような地域との関わりは、その両方を兼ねる場になりやすい。

よくある質問

Q. コミュ力は本当に選考で一番重視されているのか。A. 経団連の2018年度調査では82.4%で第1位、報告書に16年連続と記されている。ただしこれは経団連の企業会員597社の回答であり、業種や規模の偏りは残る。応募先の求める人材像と併せて読むのが確実だ。

Q. 資格や語学より優先してよいのか。A. 同じ調査では語学力が6.2%、履修履歴・学業成績が4.4%、留学経験が0.5%だった。語学が要件になっている職種を除けば、答え方の準備に時間を回したほうが重視される項目に近い。

Q. 話すのが苦手だと面接は通らないのか。A. 見られているのは質問に対する答えになっているかである。結論を先に置く形を決めておけば、話し出しの速さや声量は中心の基準にならない。

Q. グループディスカッションでは何を示せばよいか。A. 発言の回数ではなく、議論が止まった箇所を動かした事実が残るかどうかだ。論点を整理する、時間配分を提案する、反対意見を要約して確かめるといった動きは、協調性の項目にも重なる。

Q. 質問の意図がわからないときに聞き返してよいのか。A. 聞き返して構わない。推測で答えて的を外すより損が小さく、相手の意図を確かめる動作そのものが受け取る力の証拠になる。


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