大学院のデメリット|二年の学費138万円と修了後10.1%の行き先

大学院のデメリット|二年の学費138万円と修了後10.1%の行き先

払う学費の横に、受け取らなかった給与が並ぶ

進学の費用を学費だけで見積もると、金額が半分以下に見えてしまう。国立の水準は法令から出る。国立大学等の授業料その他の費用に関する省令第二条は、大学院の研究科の授業料の年額を535,800円、入学料を282,000円、検定料を30,000円とする標準額を置いている。修士課程の二年分なら合計1,383,600円になる。同省令第十条は、特別の事情があるときに標準額の百分の百二十までを各法人が定められるとしているため、授業料が642,960円まで上がる余地も制度上は残っている。

見落とされるのは、その二年間に働いていれば入っていた給与である。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、二十歳から二十四歳の大学卒の所定内給与額が男女計で月263.9千円だった。二十四か月分に換算すると6,333,600円になる。学費と合わせれば、修士課程の二年で動く金額は770万円前後という計算である。賞与も残業代も含まない所定内給与の額なので、実際の手取りの機会損失はこれより大きい。奨学金で学費を手当てする場合は、この二つを足した総額に対して返還計画を立てることになる。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

修了後に行き先が決まっていない割合は、学部より高い

学位があれば進路が安定する、という前提は統計に出ていない。文部科学省の令和7年度学校基本調査によると、令和7年3月の修士課程修了者77,633人のうち就職者は60,674人で、修了者に占める割合は78.2%である。同じ時期の大学学部卒業者584,304人では就職者449,638人の77.0%だった。差は1.2ポイントにすぎない。一方で、進学でも就職でもないことが明らかな人の割合は、修士課程修了者が10.1%、学部卒業者が7.2%となっている。修了の側が2.9ポイント高い。

区分 卒業・修了者 進学者 就職者 進学も就職もしていない者
大学学部卒業者 584,304 74,329(12.7%) 449,638(77.0%) 42,120(7.2%)
修士課程修了者 77,633 8,670(11.2%) 60,674(78.2%) 7,818(10.1%)
博士課程修了者 16,278 218(1.3%) 11,388(70.0%) 3,582(22.0%)
令和7年度学校基本調査(令和7年3月の卒業者・修了者、単位は人)

この区分には、進学準備中の人や就職準備中の人、家事の手伝いをしている人が入る。母数が小さいぶん一人あたりの重みは大きく、修士課程では7,818人がここに計上されている。雇用契約期間が一か月以上一年未満の有期雇用労働者は649人で0.8%、一時的な仕事に就いた人は163人で0.2%だった。学部卒の就職活動と比べて応募できる求人の幅が狭くなる分野では、専攻がそのまま進路の制約になる。学部のうちに進路の幅を確かめておきたい場合は大学の卒業要件と履修計画で整理した逆算の順番が参考になる。

賃金の差で取り戻すには、十年以上かかる計算になる

では差額でいつ埋まるのか、という順で考えてみる。同じ賃金構造基本統計調査で大学院卒と大学卒の所定内給与額を比べると、二十歳から二十四歳では298.8千円と263.9千円で差は34.9千円、二十五歳から二十九歳では335.0千円と296.4千円で差は38.6千円である。年額に直すと418.8千円と463.2千円になる。先に出した770万円前後をこの水準で割ると、十六年から十八年ぶんが必要という答えになる。

差が大きくなるのは後の年齢である。三十歳から三十四歳では406.1千円と340.3千円の65.8千円差、四十五歳から四十九歳では617.8千円と458.4千円の159.4千円差まで開く。回収の時期が三十代以降に寄る以上、二十代のうちは支出だけが先に立つ構造になる。しかもこの差は進学そのものの効果とは言い切れない。調査の学歴別の表は職種の構成を揃えていないため、学位を前提とする職業に就いた人が平均を引き上げている分が含まれている。自分が進む分野の求人で同じ差が付くかどうかは、この統計からは読み取れない。

二年で修了できるという保証はない

在学が延びる条件は、思っているより具体的に書かれている。大学院設置基準第十六条は修了の要件として、二年以上の在学、三十単位以上の修得、必要な研究指導を受けること、そして修士論文または特定の課題についての研究の成果の審査および試験に合格することを並べている。単位が揃っても最後の審査と試験が残る。ここを通らなければ在学は延び、その分の授業料が追加される。学部の卒業が単位の積み上げでほぼ決まるのとは、つまずく場所が違う。

延びたときの負担の計算方法も省令にある。第六条は、当該年度の在学期間が十二か月に満たない者の授業料を、年額の十二分の一に在学した月数を乗じて徴収することを原則としている。半年の延長なら267,900円が目安になる。研究の進み方も自分だけでは決められない。設置基準第十三条第二項は他の大学院や研究所で研究指導を受けることを認めているが、修士課程の学生についてはその期間を一年までとしている。指導教員との相性や研究室の設備が合わなかったときに、外へ逃がせる幅には上限があるということである。在学を止める選択をした場合の費用は休学のデメリットで扱った学費の扱いと同じ論点になる。

博士課程へ進むと、出口はさらに細くなる

修士の先を視野に入れるなら、数字の落ち方を先に見ておきたい。令和7年3月の博士課程修了者16,278人のうち、就職者は11,388人で70.0%である。進学でも就職でもないことが明らかな人は3,582人の22.0%で、修士課程の10.1%の二倍を超える。雇用契約期間が一か月以上一年未満の有期雇用労働者も1,019人で6.3%あり、修士課程の0.8%とは水準が違う。任期付きの職から始まる割合が高い分野の事情が、ここに現れている。

時間の長さも効いてくる。設置基準第四条は博士課程の標準修業年限を五年とし、前期二年と後期三年に区分する形を認めている。学部を出てから数えると九年になる。しかも同調査の注記では、博士課程の修了者に、所定の修業年限以上在学して単位を修得したあと学位を取得せずに満期退学した人が含まれている。70.0%という就職者割合は、学位を得た人だけの数字ではない。修士課程修了者のうち進学した人は8,670人で11.2%だが、この先に何が待っているかを知らずに決める段階ではない。

よくある質問

文系の大学院は避けたほうがよいのか、という問いが多い。ただし賃金構造基本統計調査の学歴別の表は分野別の内訳を持っていないため、文系と理系を分けた比較はこの統計からはできない。就職者割合についても、学校基本調査が公表しているのは課程ごとの集計で、分野別の差をここから断定するのは無理がある。志望する分野の求人が実際にどれだけあるかを、業界ごとの求人数で先に確かめるほうが判断の材料になる。

費用を抑える手だてはいくつかある。日本学生支援機構の特に優れた業績による返還免除は、大学院で第一種奨学金を受けた学生のうち特に優れた業績を挙げたと認定された人の返還を全額または半額免除する制度で、課程の修了は要件とされていない。ただし大学から推薦できる枠には限りがあり、申請すれば通るものではない。途中でやめた場合、免除の対象にはなり得るが、認定されなければ貸与分の返還義務は残る。返還が始まる時期と月額の考え方は奨学金のデメリットで扱った延滞額と返還期間の数字から確かめておきたい。進学以外に地域へ出て働きながら進路を考え直す道も残しておきたいなら、若者と地域の事例を集めたFLASPOのような入口も見ておくとよい。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。