奨学金の返済が始まる日と金額|定額返還と所得連動返還の分かれ道

奨学金の返済が始まる日と金額|定額返還と所得連動返還の分かれ道

引き落としが始まるのは卒業の翌月ではない

3月に貸与が終わった人の口座から最初に引き落とされるのは、その年の10月27日である。日本学生支援機構の返還期間と割賦金の決まりでは、初回の振替日は貸与期間が終わった翌月から数えて7か月目の27日と定められている。4月に社会人になってから半年ほど、返還の通知は届いても引き落としは起きない。この半年を手取りの立ち上がりと勘違いして生活の水準を上げてしまうと、10月に始まる引き落としが家計を押し下げる。

2回目以降の振替日は毎月27日に固定される。割賦の方法には、全額を毎月に割り振る月賦返還と、借用金額を月賦分と半年賦分に二分する月賦・半年賦併用返還の二通りがある。併用を選んだ場合、半年賦分は1月と7月の27日に引き落とされる。賞与の月に重い額を寄せる形になるため、賞与の有無が決まっていない段階で選ぶと読み違えやすい。なお平成29年度以降に採用された第一種で所得連動返還方式を使う場合、割賦の方法は月賦だけになる。

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月額の決まり方が二通りに分かれている

同じ金額を借りた二人でも、毎月の返還額が一致しないことがある。返還方式が二つあり、どちらを選んだかで計算の土台が変わるからだ。定額返還方式は、貸与総額を機構が定める割賦金の基礎額で割って返還年数を出し、その12倍を返還回数とする。借りた額だけで月額が決まるので、就職先の給与に関係なく最初から最後まで同じ額が引かれる。

もう一方の所得連動返還方式は、平成29年度以降に採用された第一種が対象である。返還月額の算出方法によれば、前年の課税総所得金額から本人の子ども1人につき33万円を控除した額に9パーセントを掛けた額が、10月から翌年9月までの年間の要返還額になる。これを12で割った額が月額で、1円未満は切り捨てる。算出額が2,000円を下回る場合は2,000円が月額になり、所得がゼロでも引き落としは止まらない。返還初年度は定額返還方式で出した額の半分となり、それが難しければ申請で2,000円まで下げられる。

注意すべきは、課税総所得金額は額面の年収ではないという点である。給与収入から給与所得控除や社会保険料控除などを引いた後の数字なので、年収と見比べて多いか少ないかを判断すると見積もりを外す。またこの方式を第一種で希望する場合は機関保証への加入が条件になり、後述の減額返還制度は併用できない。

大学4年分を借りた場合に戻す額

月々の返還額は、貸与月額を上げた分だけ素直に増えるわけではない。返還回数の上限が240回に張り付くため、ある金額を超えると返還年数が20年で止まり、増えた分が月額に乗ってくる。機構が公表している大学の返還例から、第二種を4年間借りて年利1パーセントで返した場合を抜き出すと次のようになる。

貸与月額 貸与総額 返還総額 返還月額 返還回数
3万円 144万円 1,543,214円 9,892円 156回/13年
5万円 240万円 2,597,188円 14,428円 180回/15年
8万円 384万円 4,257,117円 17,737円 240回/20年
10万円 480万円 5,321,420円 22,172円 240回/20年
12万円 576万円 6,385,730円 26,606円 240回/20年

月3万円なら13年で終わるのに対し、月8万円以上はいずれも20年かかる。22歳で卒業した人が42歳まで引き落としを抱える形になり、住宅の購入や子どもの進学と重なる年代にそのまま持ち込まれる。無利子の第一種でも年数は短くならない。私立の自宅外で月6万4千円を4年間借りた場合、貸与総額307万2千円に対して月額14,222円の216回、つまり18年である。借入額を1万円下げる判断は、20年先の家計を1万円単位で軽くする判断と同じ意味を持つ。奨学金の種類を選ぶ段階で、この表の右端まで見ておきたい。

返せない月が来たときの二つの窓口

収入が落ちたとき、引き落としを止める前に使える制度が二つある。一つは減額返還制度で、毎月の返還額を約束した額の3分の2、2分の1、3分の1、4分の1のいずれかまで下げられる。総額が減るわけではなく、下げた分だけ返還の期間が後ろへ伸びる。1回の願出で適用されるのは12か月で、更新を重ねて通算15年、月数にして180か月まで延ばせる。ただし所得連動返還方式を選んだ第一種では使えない。

もう一つは返還期限猶予で、一定期間そのものを待ってもらう制度である。返還期限猶予の案内では、一般猶予と在学猶予の適用期間の上限は通算10年、120か月とされている。この10年の枠に数えない事由も定められており、傷病、生活保護の受給中、産前休業と産後休業および育児休業、一部の大学校在学、海外派遣が挙げられている。災害は年数の制限から外れるが、同一原因の災害は原則5年が限度となる。給付奨学金の返還には10年の上限がない。

どちらも願い出て審査を受ける制度であり、引き落としが失敗してから慌てて出すものではない。先に手続きを済ませておけば、延滞という記録を残さずに月額を下げられる。奨学金の選び方の段階で、この二つの逃げ道の存在まで確かめておくと、就職後の選択肢が変わる。

延滞を放置したときに積み上がるもの

引き落としが通らないまま時間が過ぎると、負担は利息の形で増える。機構の延滞金の説明では、平成17年4月以降に採用された第一種と第二種に課される賦課率は年3パーセントで、返還期日の翌日から返還した日までの日数に応じて365日を基準に計算される。第二種では、延滞している割賦金のうち利息を除いた部分が計算の土台になる。この率は平成26年3月まで年10パーセント、令和2年3月まで年5パーセントだったものが引き下げられてきた経緯がある。平成17年3月以前に採用された無利子の区分では、6か月ごとに1.5パーセントを掛ける計算になる。

増えるのは金額だけではない。延滞した場合の案内には、延滞すると本人と連帯保証人と保証人に対して文書と同時に電話による督促を行うと書かれている。借りた事実を家族に伝えていなかった場合、最初の連絡が督促になることもある。さらに延滞の情報は個人信用情報機関に登録され、機関保証を選んでいた人は保証機関が残額を一括で立て替える代位弁済に進む。代位弁済の後は請求先が保証機関に移り、その返済を滞納すると年10パーセントの遅延損害金が加わる。返還額と初任給から逆算する作業を卒業前に一度やっておくだけで、この経路に入る確率は下がる。地方で働く選択肢を含めて生活費と手取りを見比べたい人は、FLASPOのような地域の仕事を扱う場で相場を確かめておくとよい。

よくある質問

繰上返還をすると得になるか。第二種は利息が付くため、早く返せばその分の利息は発生しない。機関保証を使っている場合、繰上返還で返還期間が短くなると、支払った保証料の一部が保証機関から戻ることがあるとされている。ただし手元の現金を使い切ってまで急ぐ必要はなく、返還期限猶予や減額返還を使わずに済む水準の貯蓄を残すほうが安全である。

返還方式は後から変えられるか。平成29年度以降に第一種を借りた人は、定額返還方式から所得連動返還方式への変更を申し出られる。審査があり、人的保証を選んでいた場合は機関保証への変更が必要になる。逆方向の変更や、機関保証から人的保証への切り替えはできないため、申込の段階で決める重みは小さくない。

在学中に引き落としが始まることはあるか。原則として貸与期間が終わるまで返還は始まらず、大学院へ進む場合などは在学猶予の手続きで先送りできる。ただし手続きを出さないと期限が来てしまう点は変わらない。進学や休学で在籍の状況が動くときは、その都度学校の窓口へ届け出る必要がある。

毎月の引き落としに失敗したらどうなるか。その月の分が延滞となり、翌月以降に2か月分がまとめて請求される運用になる。残高を確かめずに月末を迎えると、延滞金の計算が始まる日付が前へずれるだけ損をする。振替日が27日に固定されている以上、給与の入金日と27日の間隔を把握しておくのが先である。


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