同じ学年でも、住んでいる形は大学によって倍以上ちがう
進学先が決まってから部屋を探すのか、それとも実家から通うのか。この分かれ目は本人の希望だけで決まっているわけではない。日本学生支援機構が隔年で行っている学生生活調査の令和6年度結果を見ると、大学の設置者によって居住形態の構成がはっきり変わる。
大学学部の昼間部で、下宿やアパートなどに住む学生の割合は、国立で59.2パーセント、公立で55.8パーセントに達する。いっぽう私立では28.0パーセントにとどまり、自宅から通う学生が66.0パーセントを占める。国公立を選ぶと周囲の半分以上が部屋を借りており、私立では自宅通学のほうが多数派という、別の景色になる。
| 設置者 | 自宅 | 学寮 | 下宿・アパート・その他 |
|---|---|---|---|
| 国立 | 34.5% | 6.3% | 59.2% |
| 公立 | 40.3% | 3.8% | 55.8% |
| 私立 | 66.0% | 6.0% | 28.0% |
この偏りは、志望校を絞る段階で予算の前提が変わることを意味する。国公立の学費は私立より低いが、通学圏の外にある国公立を選べば住居費がそこに乗る。学費と住居費を別々に数えると、合計の見当を外しやすい。
一年で動くお金は、学費を除いた生活費だけで126万円
では部屋を借りると何にいくらかかるのか。同じ調査の集計表には、居住形態ごとの支出が項目別に載っている。アパート等に住む大学生(昼間部)の生活費は年1,256,700円で、月あたりにすると10万5千円ほどになる。学費はここに含まれていない。
最も大きいのは住居・光熱費の529,700円で、月4万4千円ほど。次が食費の321,700円、月2万7千円ほどである。自宅生の食費は126,900円なので、台所を自分で持つと食費は2.5倍に増える。自宅生の住居・光熱費は家計と分けられないため、この調査では0円として集計されている。
| 項目(年額) | 自宅 | アパート等 |
|---|---|---|
| 住居・光熱費 | 0円(計上せず) | 529,700円 |
| 食費 | 126,900円 | 321,700円 |
| 娯楽・し好費 | 198,100円 | 185,700円 |
| その他の日常費 | 127,700円 | 168,000円 |
| 保健衛生費 | 48,100円 | 51,600円 |
| 生活費の計 | 500,800円 | 1,256,700円 |
| (参考)通学費 | 112,900円 | 28,900円 |
見落としやすいのは最後の行だ。通学費は自宅生が112,900円、アパート等が28,900円で、ここだけは逆向きに8万4千円の差がつく。部屋代の分だけ丸ごと増えるわけではなく、定期代と引き換えになる部分がある。
自宅との差は54万円と出るが、読み方に注意が要る
学費と生活費を足した「学生生活費」で比べると、自宅が1,801,300円、アパート等が2,342,900円。差は541,600円で、調査の概要も54万円高いと書いている。ただしこの54万円をそのまま一人暮らしの追加負担と考えると、少なく見積もることになる。
内訳を割ると理由がわかる。学費の側は自宅が1,300,500円、アパート等が1,086,200円で、自宅のほうが21万円高い。自宅通学の平均には学費の高い私立の学生が多く含まれるため、学費側で差が打ち消されているのである。生活費だけで比べると差は755,900円、月6万3千円ほどになる。
設置者をそろえて比べると見当がつけやすい。国立は自宅1,202,600円に対してアパート等1,800,700円で、差は約60万円。私立は1,905,400円に対して2,689,100円で、差は約78万円である。自分の進学先に近い行で見るのが実際的だ。
部屋を借りて買っているものの一つは、移動の時間
費用の話だけでは釣り合わない。同じ調査には片道の通学時間も居住形態別に載っていて、ここで差は逆を向く。アパート等から通う学生は、0〜10分が40.6パーセント、11〜20分が33.2パーセントで、合わせて7割を超える。
自宅通学はまったく別の分布になる。20分以内は合計で7.6パーセントしかなく、最も多いのは61〜90分の31.1パーセント。91分以上も21.8パーセントあり、61分以上を足すと52.9パーセントと半分を超える。学寮はさらに近く、0〜10分が61.5パーセントを占める。
往復で2時間の通学を4年続けると、授業期間だけでも相当な時間になる。一人暮らしの費用は、その時間と年8万4千円の定期代を買い戻している部分がある、と考えると損得の形が見えてくる。朝一限の授業や夜のアルバイトを入れやすいかどうかも、この分布の差に重なる。
地域を変えると68万円ひらく
同じ一人暮らしでも、場所によって金額はそろわない。アパート等に住む学生の学生生活費は、東京圏で2,807,500円、京阪神で2,472,900円、それ以外の地域で2,125,000円だった。東京圏とその他の差は682,500円で、年に68万円ひらく。ここでいう東京圏は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県、京阪神は京都府・大阪府・兵庫県を指す。
差の中身は主に住居費である。都道府県ごとの水準は都道府県別の家賃相場を扱った回で、家賃を外すと順位がどう動くかは都道府県別の生活費の回で整理した。志望校が複数あって迷っているなら、学費の比較表に住居費の列を足してから並べ直すほうがいい。
地方の大学に進んで、そのまま土地に根を下ろす進み方もある。FLASPOのように地域と人をつなぐ場で現地の暮らしを先に聞いておくと、部屋探しの条件も具体的になる。
お金はどこから来ているのか、始める前に確かめる四つ
支出の形がわかったら、次は原資である。アパート等に住む学生の収入は年2,287,800円で、内訳は家庭からの支援が1,240,900円、奨学金が508,500円、アルバイト収入が476,000円、定職・その他が62,400円だった。
意外なのはアルバイトで、自宅生のほうが545,100円と7万円ほど多い。通学時間が長い自宅生のほうが働いているという結果で、一人暮らしなら自由に稼げるという見方は成り立たない。家賃の支払いが先にあるため、収入の柱は家庭からの支援に寄っている。
全体の数字も添えておくと、アルバイトを経験した学生の割合は86.4パーセントで前回調査から2.6ポイント増え、何らかの奨学金を受けている学生は51.1パーセントで3.9ポイント減った。「家庭からの支援のみでは修学がやや困難・非常に困難及び支援無し」と答えた学生は35.1パーセントで、3.6ポイント増えている。
始める前に確かめる順番は四つある。第一に家庭から出せる月額の上限、第二に奨学金の申込時期と採用の見込み、第三に週に何時間までアルバイトに充てられるか、第四に志望校の周辺の家賃水準だ。働ける時間の上限は税や扶養の線にもかかわるので、学生の収入と税金を扱った回と合わせて見ておくと計画が崩れにくい。
よくある質問
月にいくら用意すれば足りますか
調査の平均で言えば、学費を除いた生活費が月10万5千円ほど。うち住居・光熱費が4万4千円、食費が2万7千円である。ただし東京圏とその他の地域では年68万円の開きがあるため、平均をそのまま自分の予算にすると地域によって数万円ずれる。
自宅から通うほうが必ず安く済むのでしょうか
生活費では年75万円ほど自宅が低い。ただし通学費は自宅のほうが8万4千円高く、片道61分以上の通学が5割を超える。金額だけなら自宅が有利で、時間を費用に換算するかどうかで結論が変わる。
学寮という選択はどう考えればよいですか
学寮生の生活費は年1,038,200円で、アパート等より22万円ほど低い。通学時間は0〜10分が61.5パーセントと最も近い。ただし国立で6.3パーセント、私立で6.0パーセントと入れる人数が限られるため、併願の前提にはしにくい。
下宿とアパートは数字の上で区別されていますか
この調査では「下宿、アパート、その他」をひとつの区分として集計している。賄い付きの下宿と自炊のアパートでは食費の内訳が変わるが、公表されている平均値では分かれていない。食事が付く形を選ぶときは、食費の年32万円という数字を自分で割り戻して比べる必要がある。
収入と支出の平均が合わないのはなぜですか
アパート等の支出計2,342,900円は、収入計2,287,800円を55,100円上回っている。いずれも標本調査から全国の学生数へ推定した値で、項目ごとに別に集計されているため、この差額をそのまま赤字額とは読めない。余裕のある構成ではないという程度に受け取るのが妥当である。
出典
独立行政法人日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査結果」(令和8年3月公表)。全国の学生2,716,360人から82,593人を抽出し、有効回答12,659人、回収率15.3パーセント。本文の金額は大学学部(昼間部)の推計値である。
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