面接の答えを構造で組み立てる|質問の型ごとに筋道を整える

面接の答えを構造で組み立てる|質問の型ごとに筋道を整える

読み返してもらえない場で、話はどう受け取られるか

エントリーシートの読み手は、気になれば前の行に戻れる。面接の受け答えにそれは望めない。声は流れて消え、面接官の手元に残るのは数行のメモと、受けた印象だけだ。同じ内容を話しても順番が違うと届き方が変わるのは、この一度きりという性質から来ている。つまり面接で試されているのは話術の巧みさではなく、相手が一回で追いきれる順路を前もって用意できているかどうかになる。

順路のつくり方そのものは複雑ではない。先に結論を置き、次にその理由、そして理由を支える事実、最後に問われたことへ戻る。この並びはピラミッド構造と呼ばれる考え方をそのまま口頭に移したものだ。逆に出来事を起きた順に語り出すと、肝心の結論が終わりまで出てこないため、面接官は話の途中から要点を探す作業に入る。探させた分だけ、中身は薄く伝わる。

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採点の欄に「一貫性」という言葉が入っている

民間企業の面接で何がどう採点されているかは、ふつう外からは見えない。ところが国家公務員の採用試験では、人事院が人物試験の評定項目と着眼点を資料として公開している。区分の名称は旧制度の「Ⅰ種」のままだが、六つの評定項目とその着眼点は、個別面接という場で何が見られるのかをかなり具体的に書き出している。

評定項目 着眼点の例
積極性(意欲、行動力) 自らの考えを積極的に伝えようとしているか/目標を高く設定し、率先してことに当たろうとしているか
社会性(他者理解、関係構築力) 異なる価値観に理解を示しているか/相手の考えや感情を理解しようとしているか
信頼感(責任感、達成力) 相手や課題によって態度を変えず対応しているか/自らの行動と決定に責任を持とうとしているか
経験学習力(課題の認識、経験の適用) 自己の経験から学んだことを現在に適用しているか/優先度や重要度を明確にして目標や活動計画を立てているか
自己統制(情緒安定性、統制力) ストレスに前向きに対応しているか/環境や状況の変化に柔軟に対応できるか
コミュニケーション力(表現力、説得力) 話の趣旨を理解し的確に応答しているか/話し方に熱意や説得力があるか/話の内容に一貫性があるか
人事院「Ⅰ種人物試験における主な評定項目及び着眼点」をもとに要約して作成

六つのうち、話の組み立てと正面から噛み合うのは最後の「コミュニケーション力」である。着眼点に「話の内容に一貫性があるか」が並んでおり、筋が通っているかどうかが、熱意や説得力と同じ列で見られていることになる。ひとつ上の「経験学習力」にある優先度や重要度の明確化も、考えを整理して言葉にする作業と地続きだ。論理は人柄の添え物ではなく、評定の欄そのものに書き込まれている。

問いの型が変われば、答えの骨格も変わる

質問は無数にあるように見えて、答えの骨格で束ねると数はぐっと減る。過去の行動を聞く問い、いまの判断を聞く問い、これからを聞く問い、その場で考えさせる問いの四つで、おおよそ収まってしまう。型が違えば置くべき材料も違うので、同じ骨格を全部に当てようとすると、どこかで噛み合わなくなる。

過去を聞く問いでは、状況、自分がとった判断、結果の順に置き、判断の理由をひとつだけ明示する。いまの判断を聞く問い、たとえば同業の中でなぜここなのかという問いには、自分が使っている基準を先に言い、その基準に当てて相手を選んだ経緯を続ける。企業の説明を先に述べると、どの企業にも言える話に落ちる。これからを聞く問いでは、やりたいことを言い切ったうえで、根拠として過去の経験をひとつ戻して結ぶ。その場で考えさせる問いだけは順序が逆で、答えの前に「全体をこう分けます」と切り分け方を宣言し、そのうえでどの枝を取るかを言う。切り分けを言わずに結論だけ出すと、思いつきと区別がつかない。

骨格が決まっても、量の見当がついていないと最初の一問で崩れる。口頭で無理なく聞けるのは一分あたり三百字前後で、それを超えると聞き手は要点を取りこぼし始める。結論に二十字、理由に六十字、事実に百二十字、締めに四十字といった配分を一度紙に書いて測っておくと、本番で長くなりかけたところを自分で切れる。覚えた原稿をそのまま読み上げる必要はない。配分だけ身体に入れておけば、どの型の問いが来ても形は崩れにくい。

深掘りが数えているのは、根拠の層の数

「なぜそう考えたのですか」が二度、三度と続く場面は、意地悪ではなく手順だ。用意した答えが一段しか根拠を持っていなければ、二度目の問いで必ず止まる。止まった瞬間に、その話は借り物か、あるいは自分でも理由を言葉にしていなかったことが露わになる。逆に層を二つ持っていれば、掘られるほど具体が出てくる。

層の持ち方は、事実と解釈を分けて記録しておくだけでよい。事実の層には、いつ、何人で、何件、どれだけの期間といった動かない情報を入れる。解釈の層には、その事実から自分が何を学び、次にどう変えたかを入れる。面接官が人数や期間を尋ねたときは事実の層を出し、なぜを尋ねたときは解釈の層を出す。両方を混ぜて一度に話すと長くなり、評価される話し方からはむしろ遠のく。持っている情報を全部出すことと、伝わることは別だ。

準備する範囲は、適性と能力に絞られている

何を聞かれるか分からないという不安は、聞かれない領域を知るとかなり小さくなる。厚生労働省は公正な採用選考の考え方として、応募者の適性と能力に関係のない事項を把握しないよう企業に求めており、就職差別につながるおそれがある十四の事項を挙げている。本籍や出生地、家族の職業や収入、住宅の間取りや種類、宗教や支持政党、人生観、購読している新聞や愛読書などが含まれ、これらを面接で尋ねることも対象だとされている。場をやわらげるための雑談に混ざり込む場合も同じ扱いになる。

検証されるのは適性と能力だけだと決まっているなら、鍛える先もそこに絞ればよい。経済産業省が整理した社会人基礎力では、三つの能力のうち「考え抜く力」が課題発見力、計画力、創造力の三要素に分かれている。自分の話がこの三つのどれを示しているのかを一度書き出すと、骨格の弱い箇所が目に見える。課題発見力しか示せていない話なら、そこから何をどう準備したかを足せば計画力の証拠になる。身だしなみや入退室の作法は面接のマナーの側で先に片づけておき、当日は中身の順路だけに気を配れる状態にしておきたい。地方の企業を受けるときの日程調整や交通費の扱いは、FLASPOのような地域とつながる場で先に情報を集めておくと、移動の段取りに気を取られずに済む。

よくある質問

結論から話すと、ぶっきらぼうに聞こえませんか

結論を先に置くことと、言葉を削ることは別の操作だ。「結論から申し上げますと」と一言添えてから本題に入れば、聞き手は構えを作れるので、むしろ丁寧に受け取られる。問題が起きるのは、結論のあとに理由を続けずに黙る場合である。一文めで答え、二文めで理由、三文めで事実と並べれば、短くても冷たくはならない。

その場で考えさせる問いで、何も思いつかないときはどうすればよいですか

思いつかないのは、たいてい答えを探しているからで、分け方を探せば糸口は出てくる。「新規と既存に分けて考えます」「費用と時間に分けて考えます」と切り口を声に出すと、考える範囲が狭まり、次の一手が見える。沈黙したまま考え込むより、分け方を宣言してから考える時間をもらうほうが、思考の過程そのものを見せられる。

論理的に話せているつもりでも落ちるのは、何が足りないのでしょうか

評定項目を見返すと、一貫性は六つのうちひとつの着眼点にすぎない。積極性や社会性、自己統制は、話の正しさとは別の軸で見られている。筋は通っているのに通らないときは、相手の質問の趣旨とずれた正確な答えを返していないか、結論の手前で相手の関心に合わせる作業を飛ばしていないかを確かめたい。論理は評価の土台を作るが、それだけで席が決まるわけではない。

ガクチカと志望動機で、同じ経験を使ってもよいのでしょうか

同じ経験を使っても構わないが、取り出す面を変えないと重複に見える。ガクチカでは行動の過程と判断の理由を前に出し、志望動機では同じ経験から得た基準を前に出して、相手を選んだ根拠に使う。素材がひとつでも、どの層を見せるかを切り替えれば二つの答えになる。逆に同じ順序で同じ事実を二度語ると、持ち駒の少なさだけが伝わってしまう。


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