「月額3,650円」という数字だけでは負担が見えない
ネットショップの土台を選ぶとき、最初に目に入るのは月額だ。Shopifyの日本向けの料金ページには、いちばん安いプランの月額が年払いで3,650円と出ている。喫茶店で二度お茶を飲む程度の金額なので、ここだけ見ると驚くほど安く見える。
ところが実際に毎月出ていく金額は、月額だけでは決まらない。Shopifyの課金は三つの層に分かれている。土台の利用料である月額、クレジットカードで代金を受け取るときに売上から引かれる率、そしてShopifyペイメント以外の決済手段を使ったときに加算される率だ。三つめは見落とされやすいが、日本の店では効いてくる場面がある。
やや込み入っているのは、月額が高いプランほど率が低く設定されている点だ。つまり月額と率は反対方向に動く。売上が小さいうちは安いプランが有利で、ある金額を超えると高いプランのほうが総額で安くなる。その折り返し地点がどこにあるのかを、公式の数字から出しておくと迷いが減る。
四つのプランを、月額と率の両方で並べてみる
Shopifyが公表している料金は次のとおりである。月額は月払いと年払いで変わり、年払いにすると一か月あたりの負担が下がる。カード手数料は日本国内のオンライン決済に適用される率で、外部決済手数料はShopifyペイメントを使わずに他社の決済サービスを通したときに上乗せされる率だ。
| プラン | 月額(月払い) | 月額(年払い) | カード手数料 | 外部決済 | スタッフ数 |
|---|---|---|---|---|---|
| Basic | 4,850円 | 3,650円 | 3.55% | 2% | 追加なし |
| Grow | 13,500円 | 10,100円 | 3.4% | 1% | 5件まで |
| Advanced | 58,500円 | 44,000円 | 3.25% | 0.6% | 15件まで |
| Plus | 368,000円〜 | 個別 | 2.9% | 0.2% | 無制限 |
数字はShopifyの料金ページに掲載されているものを並べた。在庫を置く拠点の数はBasicからAdvancedまで10か所まで共通で、Plusだけ200か所まで広がる。店の数が増える段階になるまでは、ここが制約になることは少ない。
表を縦に見ると、月額は上のプランへ行くほど跳ね上がるのに、カード手数料の下がり幅は0.15ポイントずつしかない。この非対称が、プラン選びの勘所になる。
率の差で月額の差を埋められる売上を逆算する
どこで乗り換えると得になるのか。月額の差を、手数料率の差で割れば出てくる。月払いのBasicとGrowを比べると、月額の差は8,650円、カード手数料の差は0.15ポイントだ。8,650円を0.0015で割ると約577万円になる。つまり月の売上が577万円を超えるまでは、カード手数料の節約だけでGrowの月額を回収できない。
年払いにすると月額の差は6,450円に縮むので、折り返し地点は約430万円まで下がる。それでも小さな数字ではない。GrowとAdvancedの間はもっと極端で、月額の差45,000円を同じ0.15ポイントで割ると約3,000万円になる。Plusへの乗り換えはさらに上で、月額の差309,500円を0.35ポイントで割ると約8,800万円だ。
この計算からわかることは単純で、上のプランは手数料の節約のために選ぶものではない、ということだ。スタッフを何人入れられるか、レポートをどこまで細かく見られるか、海外向けの機能が要るかといった運用の必要から選ぶほうが筋が通る。月商が数十万円の段階でGrowを契約しても、浮くのは数百円にとどまる。
逆に言えば、売り始めの時期はいちばん安いプランで十分だということでもある。土台の選び方そのものを整理したい場合はECサイトの作り方を工程に分けた記事が構築方法の型から扱っている。
外部の決済を使う店では、分岐点がひと桁下がる
ここまではカード手数料だけで考えてきたが、表の右寄りにある外部決済の欄を使うと話が変わる。Shopifyペイメント以外の決済サービスを通した注文には、Basicで2%、Growで1%、Advancedで0.6%が加算される。差は1ポイント、0.4ポイントと、カード手数料の0.15ポイントよりずっと大きい。
月払いのBasicとGrowで、外部の決済だけを使っている店を考える。月額の差8,650円を1ポイントの差で割ると865,000円になる。月の売上が87万円ほどで折り返す計算で、先ほどの577万円と比べるとひと桁小さい。扱う決済手段の構成次第で、乗り換えの判断がまるごと動くわけだ。
日本ではコンビニ払いや後払い、キャリア決済を求める買い手が一定数いる。これらをShopifyペイメントの外側で足していくと、外部決済の加算が売上のかなりの部分にかかることになる。自分の店でどの決済がどれだけ使われているかを見ないまま月額だけで比べると、判断を外しやすい。
もうひとつ注意したいのは、加算される率は決済サービス自身の手数料とは別だという点だ。外部の決済代行には代行会社の料率があり、そこにShopify側の率が重なる。二つを足した数字で比べないと、実際の手残りは見えてこない。
料金表の外側にある費用も、先に数えておく
料金ページに載っているのは土台の利用料と決済の率までで、店を回すために要る費用はそこで終わらない。見た目を整える有料テーマ、機能を足すアプリ、独自ドメインの維持費、構築を外に頼む場合の制作費は、いずれも別の勘定になる。アプリは月額課金のものが多く、三つ四つ入れると土台の月額を超えることもある。
この構造は、無料で始められる国内のサービスと比べると性格の違いがはっきりする。BASEの仕組みを扱った記事が示すように、無料のサービスは月額をゼロに抑えて率を高く取る設計だ。売上が小さいうちは率の高いほうが総額で安く、ある水準を超えると月額を払う形が逆転する。
規模の見当をつける材料として、経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査が参考になる。2024年の国内の消費者向け電子商取引は26.1兆円、うち物販系が15兆2,194億円と推計されている。市場全体は伸びているが、個々の店の損益を決めるのは率と固定費の組み合わせだ。
どの売り場に置くかという一段上の判断はモールと自社サイトの違いを比べた記事で扱っている。地域の事業者と販路を一緒に考える取り組みはFLASPOでも進めていて、どの土台を選ぶかは扱う商品と人手の量で変わってくる。
よくある質問
年払いにすると、どれだけ下がるのか。Basicは月額4,850円が3,650円に、Growは13,500円が10,100円に、Advancedは58,500円が44,000円になる。一年分をまとめて払う形なので、途中でやめる可能性があるうちは月払いで様子を見るほうが身軽だ。
カード手数料のほかに取引ごとの費用はかかるのか。Shopifyペイメントで受け取る限り、表のカード手数料だけで済む。他社の決済サービスを使うと、プランに応じて2%、1%、0.6%が別に加わる。
スタッフを増やしたいだけなら、どのプランが要るか。Basicには追加のスタッフアカウントが付かず、Growで5件、Advancedで15件、Plusで無制限になる。外部の協力者を招く仕組みはBasicでも使えるため、作業の委ね方次第では安いプランのまま回る場合もある。
月商が増えてきたら、いつプランを上げるべきか。カード手数料だけで判断するなら数百万円の売上が目安になるが、実務では人手の数や管理する拠点の数が先に限界に来ることが多い。表の率よりも、誰がどの作業をするのかを書き出してから決めたい。
海外に売りたい場合も同じプランで足りるのか。多言語や多通貨の扱いはプランによって広がり方が違うため、どこまでを自前でやるかで必要な段階が変わる。まずは国内で注文の流れを固めてから、売り先の国をひとつ決めて試す順番のほうが、翻訳や送料の設計に手が回る。
売り始めたばかりの店に向いているか。商品の点数が少なく、注文も日に数件という段階なら、月額のかからないサービスで反応を確かめてから移るほうが損が小さい。手続きや表示の整え方はネットショップの始め方をまとめた記事が順を追っている。
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