異文化は飛行機に乗らないと会えないものなのか
異文化理解という言葉は、募集要項や授業の目標欄でよく見かける割に、何をどうすれば身についたことになるのか判然としない。海外に行けば自動的に得られるものと受け取られることも多く、渡航の予定がない人には縁のない話として扱われがちである。
ところが日本国内の人口構成は、この前提が崩れるところまで変わってきた。隣の部屋、同じ教室、アルバイト先の厨房に、別の言語で育った人がいる状況は例外ではなくなっている。異文化との接触は移動の有無ではなく、気づくかどうかで決まる段階に入った。
同時に、接点が増えれば理解が進むという単純な話でもない。公的な調査を見ると、同じ社会に暮らしていながら一度も付き合いがないという層が厚く残っている。接触の量と理解の深さは別の軸で動いている。
そこで順番を変えて考えたい。まず国内に誰がどれだけいるのかを数で押さえ、次に日本人側の接触の実態を確認し、学校という具体的な現場を覗いたうえで、個人の手元で何ができるかに降りていく。抽象的な心構えから始めないほうが、輪郭はつかみやすい。
376万人という内訳を国籍で開いてみる
出入国在留管理庁の令和6年末現在における在留外国人数によると、在留外国人は3,768,977人で、前年末から357,985人、10.5パーセント増えて過去最高を更新した。一年で35万人規模が増えるという速さが、国内の構成を短期間で押し動かしている。
国籍・地域別に開くと、偏りの形が見えてくる。上位は中国の873,286人、ベトナムの634,361人、韓国の409,238人である。増加の勢いでいえばネパールが56,707人増の233,043人、インドネシアが50,723人増の199,824人、ミャンマーが48,028人増の134,574人と、顔ぶれは数年で入れ替わってきた。
| 国籍・地域 | 人数 | 前年末からの増減 |
|---|---|---|
| 中国 | 873,286人 | +51,448人 |
| ベトナム | 634,361人 | +69,335人 |
| 韓国 | 409,238人 | -918人 |
| フィリピン | 341,518人 | +19,472人 |
| ネパール | 233,043人 | +56,707人 |
| ブラジル | 211,907人 | +67人 |
| インドネシア | 199,824人 | +50,723人 |
| ミャンマー | 134,574人 | +48,028人 |
在留資格の側から見ると、永住者が918,116人、技能実習が456,595人、技術・人文知識・国際業務が418,706人と続き、留学は402,134人で61,251人増えている。学生の身分で日本に暮らす人が40万人規模という点は、学内で接点を探す場合に意味を持つ。
この内訳が示すのは、ひとまとめに外国人と呼ばれる集団の中身が、言語も宗教も滞在の目的もまったく異なるという事実である。相手を国籍の束で捉えると見当が外れる。異文化理解の第一歩は、束を解いて個別の背景を聞く構えを持つことに尽きる。
付き合いがないと答えた人が41.5パーセント
では日本人側はどれだけ接点を持っているのか。出入国在留管理庁が委託して行った令和5年度「外国人との共生に関する意識調査(日本人対象)」は、住民基本台帳から無作為に抽出した全国の18歳以上を対象に、令和5年10月17日から11月30日まで実施され、4,424票を有効回収している。回収率は44.7パーセントだった。
普段の生活で外国人との付き合いがあるかを複数回答で聞いた結果、最も多かった選択肢は「外国人の知人はいないし、付き合ったこともない」の41.5パーセントである。付き合いがある人の内訳は、一緒に仕事をしているが27.7パーセント、友人に外国人がいるが17.1パーセント、あいさつ程度の付き合いがあるが16.3パーセント、通う学校に外国人がおり知り合いであるが11.5パーセントだった。
交流の頻度を一つだけ選ぶ形で聞くと、よくあるが9.3パーセント、たまにあるが17.2パーセントで、合わせて26.5パーセントにとどまる。あまりないが23.2パーセント、全くないが49.8パーセントで、交流がない側は73.0パーセントを占めた。在留外国人が376万人を超えた社会で、四人のうち三人は接点を持たずに暮らしている。
年代で割ると構図が変わる。通う学校に外国人がいて知り合いだと答えた割合は、18歳から19歳で42.6パーセント、20歳から24歳で36.8パーセントに達し、全体の11.5パーセントを大きく上回る。付き合いがないと答えた割合は80歳以上で70.3パーセント、20歳から24歳では27.8パーセントだった。若い世代は、すでに接点の側に立っている。
教室の中で、69,123人が日本語の支援を受けている
学校という現場をもう少し具体的に見ておきたい。文部科学省の令和5年度「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」は、公立の小中高等学校等における受入状況を令和5年5月1日現在で集計している。対象となった児童生徒は69,123人で、前回調査より10,816人、18.6パーセント増えた。
内訳は外国籍が57,718人で前回比10,099人増、日本国籍が11,405人で717人増である。平成20年の調査では33,470人だったので、15年で倍以上になった。このうち学校で特別な配慮に基づく指導を受けている外国籍の児童生徒は52,176人、割合でいえば90.4パーセントにあたる。
言語別の構成は、想像とずれることがある。外国籍の児童生徒ではポルトガル語が20.8パーセントで最も多く、次が中国語の20.6パーセントだった。日本国籍の児童生徒では日本語が30.5パーセントで最多、次にフィリピノ語の19.4パーセントが続く。日本国籍で日本語を母語としながら日本語の支援が必要な子どもがいるという事実は、国籍と言語が一致しないことを端的に示している。
この数字は、異文化理解を遠い国の話として扱えないことの裏づけになる。同じ公立校の教室で、別の言語の家庭で育った同級生が学んでいる。学内の交流団体やサークルを通じて関わる方法もあり、活動の実像は国際交流サークルとは|活動内容と大学公認の違い、入る前に確かめることで確かめられる。
手元でできることは、心構えより具体的だった
同じ共生に関する意識調査は、共生社会の実現のために自分自身ができることを複数回答で尋ねている。最も多かったのは外国人に対する差別意識を持たないようにするの66.2パーセント、次が近くの外国人と日常的なあいさつをするの43.5パーセント、三番目が外国の言葉や文化、習慣を学ぶの40.7パーセントだった。
以下に続く項目も実務的である。日本語や日本文化の多様性を日本人が自ら知る努力をするが31.8パーセント、日本語や日本文化を外国人に教えるが28.2パーセント、地域の外国人住民との交流の場に参加するが22.3パーセント、知り合った外国人との私的な交流を広げるが17.5パーセントとなっている。心理的な態度から、あいさつ、学習、場への参加という順に数字が下がっていく形だ。
この並びは、優先順位の手がかりになる。態度を整えると答える人は多いが、実際の行動に移る段階で割合が落ちる。逆に言えば、あいさつと場への参加という二つを押さえるだけで、回答の上位層が実行しきれていない部分を埋められる。
道具も用意されている。難しい言葉を言い換えて相手に配慮する「やさしい日本語」を知っていると答えた人は57.5パーセントで、知らないが41.5パーセントだった。地域に外国人が増えることについては、好ましいとどちらかといえば好ましいの合計が28.7パーセント、好ましくない側の合計が23.5パーセント、どちらともいえないが47.3パーセントと最も多い。判断を保留している半数近くが、接点の有無で動く余地を残している。
地域での関わり方を設計するFLASPOの活動でも、入口はあいさつと役割の分担という身近な手順に落ちていく。参加できる場の種類を比べるなら国際交流イベントの種類と選び方|大学・自治体・民間の違いを一覧で比べるが目安になり、手段を一覧で見たい場合は学生が国際交流を始める7つの方法が使える。
よくある質問
異文化理解ができたかどうかは、どう確かめればよいですか
到達を測る公的な基準はない。代わりの目安として、相手の行動を文化のせいにする説明が減ったかどうかを見る方法がある。国籍別の内訳が示すとおり背景は一人ずつ違うため、その人の事情を聞いて判断できるようになった時点が、束で捉える段階を抜けた合図になる。
海外経験がないと異文化理解は進みませんか
差は出るが決定的ではない。同調査では、海外生活経験があると答えた人のうち友人に外国人がいるは62.4パーセント、付き合いがないは4.7パーセントで、経験がない人の44.4パーセントと大きく開く。ただし通う学校での接点は18歳から19歳で42.6パーセントに上り、国内にいても接点自体は確保できる。
言葉が通じない相手とは、どう話し始めればよいですか
やさしい日本語という選択肢がある。高台へ避難してくださいを高い場所へ逃げてくださいと言い換えるように、短い文と具体的な語に置き換える方法である。認知度は57.5パーセントで、知らない人も4割強いるため、周囲に共有するだけでも場の負担が軽くなる。
地域の交流の場に参加したいのですが、歓迎されるか不安です
地域に外国人が増えることをどちらともいえないと答えた人が47.3パーセントを占める一方、好ましくない側は23.5パーセントだった。否定的な層より保留層が倍近く厚い。賛否が固まっていない場に新しい参加者が入ることへの抵抗は、一般に想像されるほど大きくない。
学校で日本語の支援が必要な同級生に、個人として関わってよいのでしょうか
指導そのものは学校の役割である。外国籍の児童生徒のうち90.4パーセントが特別な配慮に基づく指導を受けており、体制は学校側に置かれている。個人の側で意味を持つのは、授業外の会話や係の分担といった日常の接点で、支援と交流を切り分けて考えると関わりやすい。
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