会える相手は国内に40万人いる
国際交流の第一歩を考えるとき、多くの人はまず航空券の値段から逆算してしまう。順番を変えて、日本側にいる相手の数を先に見てみたい。日本学生支援機構の調査結果公表によると、2025年5月1日時点で国内に在籍する外国人留学生は408,069人で、前年より71,361人(21.2%)増えて過去最大になった。
在学段階の内訳を見ると、大学(大学院・短期大学を含む)が156,593人、専修学校の専門課程が106,829人、日本語教育機関が140,174人である。大学のキャンパスにいるのは全体の4割弱で、残りは専門学校や日本語学校に通っていることになる。学内だけを見て探すと、半分以上の相手が視界から外れる。
対象を留学生以外へ広げると規模がもう一段変わる。出入国在留管理庁の令和7年末現在における在留外国人数についてでは、2025年末時点の在留外国人は412万5,395人で、前年末より35万6,418人(9.5%)増え、初めて400万人を超えた。在留資格別では「留学」が46万4,784人で、永住者と技術・人文知識・国際業務に次ぐ3番目の多さだ。
では海外へ出る側はどうか。日本の大学等が把握している日本人学生の海外留学は、2024年度で91,054人だった。国内で暮らす外国人の総数とは桁が2つ違う。機会を増やしたいなら、出ていく方法と迎える方法を並べて検討するほうが早い。
7つの経路を期間とお金のかかり方で並べる
入口を数え上げると7通りになる。学内で完結するもの、渡航を伴うもの、地域に出るものでは性質がまるで違うので、同じ土俵に乗せて比べられるよう整理した。費用は制度や渡航先で大きく動くため、金額ではなく「どこにお金がかかるか」で示している。
| 経路 | 期間の目安 | お金のかかり方 | 最初の窓口 |
|---|---|---|---|
| 留学生のチューター・バディ | 学期単位 | 学内の活動なので追加の負担はほぼない。謝金が出る大学もある | 国際交流センター・留学生課 |
| 国際交流サークル | 在学中は継続 | 会費と移動の実費 | 新歓期の案内・学生課の団体一覧 |
| 協定に基づく交換留学 | 半年から1年 | 渡航費と滞在費。授業料は在籍校に納める形が多い | 国際交流センター |
| 協定によらない私費留学 | 半年から数年 | 渡航費・滞在費に加えて現地校の授業料 | 現地校へ直接出願 |
| 1か月未満の短期プログラム | 数日から4週間 | 渡航費と参加費。期間が短いぶん総額は抑えやすい | 学内公募・民間の主催者 |
| 地域の国際交流協会での活動 | 単発から通年 | 交通費だけで参加できるものが中心 | 都道府県・政令指定都市の協会 |
| オンラインの共同授業・交流 | 数週間から1学期 | 渡航費がかからない | 担当教員・授業のシラバス |
迷ったときは、負担の軽いものから試すのが安全だ。チューター・協会での活動・オンライン交流の3つは渡航を伴わないので、自分に合わないと分かった場合の損失が小さい。交換留学や私費留学を最初に決めてしまうと、語学と生活と人間関係が同時に初体験になり、負荷が一点に集まる。
表に入れていない条件がもう一つある。選抜の有無だ。交換留学には学内選考と語学試験の基準があり、申請の締切は出発の半年から1年前に置かれていることが多い。思いついた月に始められる経路と、逆算が必要な経路は分けて考えたい。
短期化が進み、1か月未満が3分の2を占める
留学の中身はこの数年で変質している。文部科学省が2026年5月29日に公表した「日本人学生の海外留学状況」及び「外国人留学生の在籍状況調査」についての資料では、2024年度の日本人留学者91,054人のうち、1か月未満の短期留学が60,301人を占めた。全体の約66%にあたり、前年度より3,257人(5.7%)増えている。
見落としやすいのは、伸びたのがこの区分だけだという点である。同じ資料は、1か月未満以外の期間別留学者数はいずれも減少したと記している。総数が2.1%増えていても、半年や1年の滞在を選ぶ学生の数は後退しているわけだ。
過去の水準と並べると全体像がつかめる。留学者数が最も多かったのは2018年度の115,146人で、2024年度はその79%ほどの位置にある。増加はしているものの増加率は鈍化していると、公表資料自身が述べている。
制度の経路でも内訳が割れる。大学間交流協定等に基づく留学が57,262人、協定に基づかない留学が33,792人で、協定を使う形が6割強だ。協定校の一覧は学内の窓口にしか置かれていないことが多く、ここを見ないまま探すと自分で選択肢を狭めてしまう。
学位を取る前提の長期留学は別の統計で追う必要がある。文部科学省がユネスコ統計局などの2023年統計をもとに集計した数字では、海外の機関が把握している日本人留学者は50,139人で、前年より1,148人(2.3%)増えた。短期の動きとは別の流れとして読むのが正しい。
行き先はアジアが伸び、北米が減っている
渡航先の順位を見ると、英語圏が強いという通念は半分だけ当たっている。2024年度の上位は、アメリカ合衆国12,627人、オーストラリア9,329人、韓国8,360人、カナダ6,736人、英国5,381人の順だった。
増減の向きは国によって逆を向く。アメリカは前年度より890人(6.6%)減り、カナダも885人(11.6%)減った。対してフィリピンは497人(15.5%)、中国は482人(15.4%)、マレーシアは352人(13.0%)と、いずれも二桁の伸びを見せている。
地域で束ねると差がはっきりする。アジア諸国への留学者は36,904人で2,401人(7.0%)増え、北米は19,363人で1,775人(8.4%)減った。円安を含む費用の条件と移動距離が、行き先の選び方に効いていると読める。
ここから引き出せる実務的な示唆は単純だ。英語圏に絞らなければ候補が一気に広がる。台湾5,260人、タイ4,789人という規模は、受け入れの仕組みがすでに整っていることを意味する。英語で授業を受けられるプログラムはアジアの大学にも多い。
大学の外には自治体の窓口がある
所属校に留学生が少ない、制度が薄いという場合、次に当たる先は自治体になる。地域の国際化を担う地域国際化協会は、都道府県と政令指定都市に置かれており、CLAIRの地域国際化協会一覧から自分の地域の団体を引ける。日本語教室の支援、通訳の手伝い、多文化共生の行事など、単発で入れる活動を抱えているところが多い。
全国の束ね役は一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)である。1988年7月1日に設立され、47都道府県と20政令指定都市に計67の国内支部、海外に7の事務所を持つ。外国語指導助手(ALT)や国際交流員(CIR)を自治体に配置する事業もここが担っている。
自治体の交流には土台がある。CLAIRの姉妹提携データでは、全国の姉妹(友好)都市提携は1,879件、相手は79か国・地域にのぼる。多い順にアメリカ合衆国475件、中国382件、韓国173件だ。姉妹都市として扱われるのは、両首長による提携書があり、交流分野が特定のものに限られず、議会の承認を得ている場合とされている。
提携があれば、周年行事や青少年の派遣・受け入れが定期的に組まれる。住民枠で参加者を募る行事も少なくないので、自分の市区町村の提携先を先に調べておくと機会に気づきやすい。学校の規模や立地によって事情が変わる点は都道府県別の大学の整理も参考になる。なお大学の数そのものは学校基本調査で確認でき、2025年5月1日時点で812校、在学者は297万2,412人である。
国際交流に限らず地域の現場に関わる入口を広く見たい人には、学生ボランティアの探し方や学生NGOの事例の整理が使える。地域のプロジェクトに学生として入る形を探すなら、FLASPOのような場も選択肢になる。
よくある質問
語学力が足りないと始められないのか。学内のチューター制度や地域の日本語教室は、相手が日本語を学んでいる場であり、むしろ日本語で話す役割が求められる。語学力を入口の条件にしているのは選抜のある留学プログラムのほうで、国内の活動では前提が逆になることも多い。
1か月未満の短期でも意味はあるのか。公表された数字のうえでは、それが今の主流である。短期で見極めがつく部分と、長期でないと届かない部分は別なので、短期を試してから半年や1年の派遣に進む順序は合理的だ。
留学生と知り合うにはどの経路が早いか。所属校に国際交流センターがあるなら、チューターやバディの募集が最短である。学期の初めに募集が出る形が多いため、時期を外すと半年待ちになる点だけ気をつけたい。
費用を抑えるにはどうすればよいか。渡航を伴わない経路を選ぶか、協定に基づく留学を選ぶ方法がある。協定型は授業料を在籍校に納める形が多く、現地校の授業料が二重にかからない設計になっているためだ。
国際交流センターが置かれていない学校の場合は。学生課や教務課が留学生の窓口を兼ねていることが多い。学内で見つからなければ、都道府県の協会に直接問い合わせるほうが早く、こちらは所属校を問わない活動が中心である。
準備はいつから始めるべきか。半年以上の派遣を狙うなら、締切の時期から逆算して1年前には情報収集に入りたい。単発の行事やオンラインの交流は随時募集のものが多く、思い立った時期から動ける。
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