イベントの予算の立て方|課外活動費4万5千円と源泉徴収の10%

イベントの予算の立て方|課外活動費4万5千円と源泉徴収の10%

予算が足りなくなるのは、見積りを外したときではない

会場費に3万円、印刷に1万円、備品に5千円。そう並べた紙を予算書と呼んでいる団体は多い。ところが終わってから集計すると、どこかで数万円が合わない。

合わなくなる理由は、単価の読み違いであることが案外少ない。誰がいくらまで使えるのかが決まっていない、立て替えた人に返す手順がない、支払うときに差し引かれる税を数えていない。この三つが抜けると、一つ一つの金額が正しくても最後に穴が開く。

つまり予算を組むとは、数字を埋める作業ではなく、上限と手続きを先に文字にする作業である。参加費をどこまで上げられるかという外側の条件も、肌感覚ではなく公表されている統計から当たりをつけられる。

ここでは参加費の天井、支払う相手によって手取りが変わる場面、受け取りの紙に印紙が要る場面、そして予算書そのものの形という順で並べていく。

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参加費の天井は、来る人の財布の実額が決めている

500円にするか1,000円にするか、2,000円でも来るのか。この問いは、学生が一年にいくら持っていて、そのうちいくらが課外活動に向かっているかを見ると答えやすくなる。

日本学生支援機構の令和6年度学生生活調査結果によれば、大学学部昼間部の年間の収入額は平均2,030,100円で、前回調査より3.2%増えている。内訳は家庭からの支援が50.7%、奨学金が21.6%、アルバイト収入が25.0%で、アルバイト収入は前回から5.9ポイント伸びた。アルバイトに従事した者の割合は86.4%に達し、従事していない者は13.6%にとどまる。

同じ調査の集計表1-1表には、学費の内訳として課外活動費が載っている。大学学部昼間部の平均は年45,200円で、設置者別では国立51,700円、公立32,300円、私立44,700円となっている。

項目 年額(大学学部昼間部・平均) 月あたりに割ると
収入額の合計 2,030,100円 約169,000円
うちアルバイト収入 507,700円 約42,000円
課外活動費 45,200円 約3,800円

月に3,800円という枠を、サークルの部費や合宿や他の催しと分け合っている。そこに2,000円の参加費を置けば、その月の課外活動費の半分を一度で使わせることになる。来ない理由として最初に効くのは関心ではなく、この割り算である。

逆に言えば、500円なら枠を圧迫しない。人数を増やしたいなら参加費を下げて協賛や助成で埋め、単価を上げたいなら払う相手を学生以外に広げる。どちらを選ぶかで、収入側の設計がまるごと変わる。

ゲストへの支払いは、額面のまま渡すと後で足りなくなる

講師やゲストに「謝礼3万円」と伝えて、当日に3万円を封筒で渡した。これが後から問題になる場合がある。支払う側に、所得税を差し引いて国に納める義務が生じていることがあるからだ。

所得税法第204条第1項は、居住者に対し国内において同項に掲げる報酬や料金を支払う者は、その支払の際に所得税を徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないと定めている。同項第1号には原稿や作曲やデザインの報酬と並んで講演料が挙がっている。差し引く額は第205条第1号により、その金額の100分の10で、同一人に対し一回に支払われる額が100万円を超える場合は超える部分が100分の20になる。

ここに復興財源確保法が重なる。同法第28条第1項は、所得税を徴収して納付すべき者は復興特別所得税を併せて徴収して納付しなければならないと定め、第2項でその額を所得税額の100分の2.1としている。10%に2.1%が乗るので、実際に差し引く割合は10.21%になる。

では学生団体は支払う者に当たるのか。所得税法第204条第2項第2号は、第1号から第5号までの報酬のうち、給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるものには第1項を適用しないと定める。つまり人を雇っていない個人が払うなら差し引かない。ところが同法第4条は、人格のない社団等は法人とみなしてこの法律を適用すると定めている。規約と代表と会計を持って継続している団体は人格のない社団等に当たり得るので、その場合は個人の例外に乗れない。

支払いの形 根拠 封筒に入れる額
規約を持つ団体が講演料3万円を払う 所得税法第204条第1項第1号・第205条第1号・第4条 26,937円(3,063円を差し引く)
人を雇っていない個人が同じ額を払う 所得税法第204条第2項第2号 30,000円(差し引かない)
会場や印刷を業者に払う 第204条第1項のどの号にも当たらない 請求どおり

予算書に「謝礼3万円」とだけ書くと、ゲストの手取りと自分たちの支出のどちらを指すのかが曖昧になる。手取りで3万円を渡すと決めたなら、予算は33,411円で積む。先に決めておかないと、当日の封筒の前で計算をやり直すことになる。

受け取りの紙に印紙が要る場面と、要らない場面がある

模擬店の売上や参加費をまとめて受け取り、相手に領収書を渡す。このとき収入印紙を貼る必要があるかどうかは、金額と団体の性格の両方で決まる。

印紙税法別表第一第17号は、金銭または有価証券の受取書を課税文書としている。売上代金に係る受取書で受取金額の記載があるものは、100万円以下なら一通200円、100万円を超え200万円以下なら400円と、金額の区分ごとに税率が定められている。売上代金以外の受取書は一通200円である。

ただし同号の非課税物件の欄に二つの例が置かれている。一つは記載された受取金額が5万円未満の受取書、もう一つは営業に関しない受取書である。会社以外の法人で、法令の規定または定款の定めにより利益金や剰余金の配当や分配をすることができることとなっているものが出資者以外の者に対して行う事業は営業に含まれると書かれており、配当や分配をしない団体の活動はここから外れる。

この二つを合わせると、学生団体が出す受取書はかなりの範囲で非課税に収まる。それでも紙は残す。印紙が要らないことと記録が要らないことは別で、精算の根拠が無ければ誰が何に使ったかを後から説明できない。

実務としては、受け取りの紙に通し番号を振り、控えを一冊にまとめるだけでよい。番号が飛んでいないかを見れば、紙が途中で抜けたかどうかがすぐ分かる。

予算書は金額の表ではなく、上限と決める人の表にする

ここまでの条件を一枚に落とす。縦に費目、横に上限額と支払い方法と決める人を置く。金額の欄を一つだけにすると、見積りと実績のどちらを指すのかが混ざるので、上限と実績の二列に分ける。

支払い方法の欄には、振込か現金か立て替えかを書く。立て替えと書いた行には、返す期限も入れる。期限のない立て替えは、終わってから数週間で「あれはどうなったのか」という話に変わる。

決める人の欄は役職ではなく名前で埋める。「会計」と書くと誰も決めないが、名前が入っていれば止まらない。上限を超える支払いが必要になったときに誰に聞くのかも、同じ欄に書いておく。

一枚にまとまると、協賛の交渉も楽になる。いくら足りないのかを即答できるし、相手の名前を出す枠が予算のどこに効くのかも示せる。学園祭の規模で内訳と現金の扱いを組む手順は学園祭の予算はどう組むか|内訳の立て方と現金を扱わない管理に、収入側の並べ方と税の線引きは学園祭の収入源を並べる|模擬店・協賛・助成と税の線引きにまとめてある。部費を守る帳簿の付け方はサークルの会計|収益事業34業種の線引きと部費を守る帳簿の作り方が近い。

予算を預かって回す経験は、学生のうちに持てる機会が限られている。実際の催しで会計を任される場はFLASPOでも用意している。

よくある質問

参加費は無料にしたほうが人は集まりますか。集まりやすくはなりますが、申し込んだ人が来ない割合も上がります。100円でも取ると来場の意思が残るので、無料と有料の差は金額より当日の歩留まりに出ます。

差し引いた所得税はどこに納めるのですか。税務署です。支払った月の翌月10日までに納付する決まりなので、催しの翌月の予定に納付の日を入れておいてください。団体として納める場合は、先に源泉所得税の手続きが必要かどうかを所轄の税務署に確認します。

ゲストが交通費だけでいいと言った場合はどうなりますか。実費の精算として領収書と引き換えに払う形なら、報酬や料金とは別の扱いになります。金額を丸めて渡すと謝礼の性格が混ざるので、切符やチケットの額に合わせて払うのが安全です。

立て替えの上限はいくらにすべきですか。一人あたり5,000円程度に抑え、それを超える買い物は事前に承認を取る形にしてください。上限が無いと、返す原資が集まる前に支出が先に進みます。

赤字になったら誰が払うのですか。先に決めていなければ、立て替えた個人が背負います。参加費収入の下限を見積もり、その下限で赤字になる計画なら、企画の規模を落とすか協賛を先に確定させてから開催を決めてください。


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