「SNSで告知した」で終わると、当日の人数が読めない
告知の担当になると、まずアカウントを作って投稿する。投稿は増え、いいねも少し付き、当日は想定の半分も来ない。原因は投稿の文面ではなく、SNSがどういう用途で使われている道具なのかを確かめないまま賭けていることにある。
総務省の令和7年通信利用動向調査は、令和7年8月末を調査時点として全国40,592世帯に調査票を送り、17,916世帯から回答を得ている。有効回収率は45.5パーセントである。報告書は、インターネットでSNSを利用する人の割合が13歳から59歳の各年齢階層で8割以上になっていると書いている。学生の年代では、使っていない人を探すほうが難しい。
ただし、使っている人が多いことと、新しい催しの情報がそこで広がることは別の話だ。同じ調査は利用目的も聞いており、そちらを見ると使われ方がかなり偏っていることが分かる。
SNSは、知らない人に届ける道具として使われていない
利用目的は複数回答で、全体と年齢階層別の上位5項目が公表されている。学生の年代にあたる二つの階層を並べると、偏りの方向がはっきりする。
| SNSの利用目的 | 全体(n=27,723) | 13〜19歳(n=2,295) | 20〜29歳(n=2,724) |
|---|---|---|---|
| 従来からの知人とのコミュニケーションのため | 86.1% | 91.0% | 89.5% |
| 知りたいことについて情報を探すため | 65.6% | 63.5% | 72.4% |
| ひまつぶしのため | 36.6% | 43.6% | 44.8% |
| 災害発生時の情報収集・発信のため | 23.6% | 11.0% | 22.1% |
| 新たな交流関係を広げるため | 11.4% | 14.5% | 17.6% |
20代では知人との連絡が89.5パーセント、新しい交流を広げる用途が17.6パーセントで、差は5倍ある。報告書は、すべての年齢階層で1位が知人とのコミュニケーション、2位が知りたいことの検索だったと記している。原典は令和7年通信利用動向調査報告書(世帯編)にある。
この並びが意味するのは、SNSがすでにつながっている相手へ届く経路としては強く、知らない相手へ広がる経路としては弱いということだ。投稿して待つという設計は、弱いほうの17.6パーセントに賭けている。半分も来ないのは、賭け方の問題である。
もうひとつ目を引くのは、13歳から19歳で「災害発生時の情報収集・発信のため」が11.0パーセントにとどまり、20代の22.1パーセントの半分であることだ。若い層ほどSNSを生活の連絡と暇つぶしに寄せて使っている。告知を流しても、相手の画面では友人の投稿と並んで流れていく。そこに割り込む前提で文面を考えるしかない。
強い経路から埋めて、新規は別に作る
順番としては、強いほうを先に使い切る。メンバー一人が直接声をかけられる相手を数え、合計を出す。15人が5人ずつ当たれば75人との接触になり、そこから何割が来るかの見当が付く。ここは投稿ではなく、個別の連絡と対面の声かけが効く区間だ。数えられるので、当日の人数も読める。
次に、2位の「知りたいことについて情報を探すため」が20代で72.4パーセントあることを使う。探されたときに見つかる状態を作れば、知人の輪の外から人が来る。日付、場所、価格、所要時間、申し込みの有無を、検索で引ける文字として置く。画像だけの告知はこの区間でまったく働かない。画像の中の文字は検索に乗らないからだ。
新規の到達そのものは、第三者の経路を借りるほうが現実的である。大学の掲示板、生協、学生課、地域の広報紙、関係する団体の告知枠、イベント掲載サイト。手段ごとに届く層が違うので、集めたい相手と噛み合うものを選ぶ必要がある。層ごとの選び分けは学園祭の集客を設計する|届けたい層ごとに手段を変えるで扱った。どのサービスを選ぶかという判断は学生団体に向くSNS|10代と20代の利用率から選び方を決めるが近い。
二段に分ける利点は、人数の見込みが二つの足し算になることだ。知人経路は声をかけた人数から見積もれるので、下限がはっきりする。新規の到達は読みにくいので、上振れの部分として扱う。下限が会場の最低稼働に届いているかを先に確かめれば、当日に空席が並ぶ事態は避けられる。
娯楽の情報源は、SNSの外にも広がっている
相手が催しの情報をどこで得ているかは、別の調査が答えを出している。総務省情報通信政策研究所の令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査は、13歳から79歳の1,800人を対象に、令和7年12月1日から7日にかけて訪問留置の方式で行われた。
| 芸能・娯楽情報のメディア | 情報源として利用した割合 | 最も情報を得たメディア |
|---|---|---|
| テレビ | 59.1% | 37.3% |
| インターネットニュースサイト | 35.6% | 19.6% |
| ソーシャルメディア | 23.1% | 12.9% |
全年代の集計なので若い層だけの傾向ではないが、娯楽の情報についてソーシャルメディアが主たる入口になっているとは言いにくい形が出ている。数字は令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書で確認できる。
学生の催しでテレビを使うのは難しいが、ニュースサイトに相当する枠は使える。大学の広報、地域のウェブメディア、自治体の情報サイト、催し情報をまとめているサイト。いずれも掲載の締切が開催日の2週間から1か月前にあるので、押さえるなら企画が固まった直後に当たっておく。
届いた数を、経路ごとに分けて数える
設計が当たっていたかどうかは、当日の来場者数だけでは分からない。経路ごとに分けて数えないと、次の回も同じ比重のまま動くことになる。
受付で「何で知りましたか」と一言聞いて、紙に線を引くだけでよい。知人からの誘い、学内の掲示、SNSの投稿、掲載サイト、通りがかりの五つで足りる。集計すると、たいてい知人からの誘いが最も多く、投稿の数字は想像より小さく出る。
| 数えた経路 | 次回に効く打ち手 |
|---|---|
| 知人からの誘いが半分以上 | 声をかける人数を増やす。投稿の回数を増やしても伸びない |
| 掲載サイトが一定数ある | 掲載先を増やし、締切の早い枠から押さえる |
| 通りがかりが多い | 会場の選び方が効いている。同じ条件の会場を探す |
| SNSの投稿が極端に少ない | 検索で引ける文字情報が不足していないか確かめる |
数えた結果はそのまま次回の配分になる。相手の絞り方まで戻ってやり直すならイベントのターゲット設定|母数・関心・到達手段の三段で絞るから見直すとよい。学生の企画を地域や企業の現場につなぐ取り組みはFLASPOで進めている。
よくある質問
フォロワーが少ないうちは告知しても無駄ですか。無駄ではありませんが、期待値を間違えないことが大事です。SNSは知人経路の補助として働くので、メンバーが直接声をかけた相手が投稿を見て思い出す、という使い方が現実的です。フォロワー数を集客数の見込みに換算しないでください。
投稿は何回すればよいですか。回数より、日付と場所と価格が文字で書かれているかを先に確かめてください。検索で見つかる状態になっていない告知は、何回出しても知人の輪の外には出ません。回数を決めるなら、告知開始、1週間前、前日の三回を最低線にすると管理しやすくなります。
有料の広告を出すべきですか。学生団体の予算では、まず無料で使える第三者の経路を使い切るほうが効率が良いです。大学の掲示や自治体の情報サイトは費用がかからず、掲載されれば知人の輪の外に出られます。広告を検討するのは、その経路を全部埋めてからでよいでしょう。
当日の飛び込みはどう扱えばよいですか。通りがかりとして別の列に数えてください。飛び込みが多い催しは会場の立地が効いているので、次に同じ条件の場所を探す判断につながります。来場者数の中に混ぜてしまうと、この情報が消えます。
調査の数字をそのまま自分たちの見込みに使えますか。使えません。全国の調査なので、自分たちが声をかける範囲の比率とは違います。使い方としては、どの経路に力を入れるかという順番を決める材料にとどめ、人数の見込みは実際に声をかけた数から出してください。
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