イベントの目的設定|人数と単価に分け、実数か推定かも決める

イベントの目的設定|人数と単価に分け、実数か推定かも決める

「盛り上げたい」は、目的の形になっていない

企画書の最初の欄に書かれる言葉は、だいたい似ている。地域を盛り上げる、学生同士のつながりをつくる、認知度を高める。どれも間違ってはいないが、終わったあとに達成できたかどうかを判定できない。判定できない文は、目的ではなく願いである。

では判定できる形とは何か。参考になるのは、国が観光の市場規模をどう扱っているかという手順だ。観光庁の「観光入込客統計に関する共通基準」は、実態を正確に把握することが難しい対象について、取引総額を取引した人の人数と1人1回当たりの単価に因数分解した推計式を作るという考え方を採っている。人数を観光入込客数、単価を観光消費額単価、総額を観光消費額と呼び、総額は両者を掛け合わせて算出する。

この共通基準は平成21年12月に策定され、令和5年5月に一部改定されている。都道府県が相互に比較可能な統計を作れるようにするため、把握する項目の定義や調査手法を共通化したものだ。比較できる形に揃えるという発想は、学生の催しにもそのまま持ち込める。

言葉の整理まで済んでいるのも使いやすい点だ。共通基準は「行祭事」を、地域住民の生活において伝統と慣行により継承されてきた、恒例として日を定め執り行う歴史的催し・祭り、郷土芸能等の集合とし、「イベント」を、常設または特設の会場施設において行われる博覧会、見本市、コンベンション等としている。毎年の恒例行事と、その年のために場を設けた催しは、別のものとして数えるという立場である。

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人数を増やすのか、単価を上げるのかを先に選ぶ

共通基準は、総額を増やしたいときに人数と単価の経年変化を観察しながら、どちらを動かすかを判断して取り組むことを求めている。この分け方が効くのは、二つを同時に追うと打ち手が矛盾するからだ。人数を増やす施策は入りやすさを上げる方向に働き、単価を上げる施策は選別する方向に働く。

学生の催しに当てると、人数側の目的は来場者数、申込数、投稿の閲覧数といった数になる。単価側の目的は、1人がどれだけ長く滞在したか、いくら使ったか、何回参加したか、何人連れてきたかに置き換わる。無料の催しなら金額の代わりに滞在時間や次回の参加意向を単価として扱えばよい。

どちらを選ぶかは、催しの型で決まることが多い。新歓のように母集団を広げる催しは人数側、少人数の勉強会や地域と組むプロジェクトは単価側になる。両方を書いた企画書は、当日の判断が割れたときに決め手を失う。目的を企画書に落とす書き方そのものは企画書の目的の整理が土台になる。開催の形態がまだ固まっていないなら、学生イベントとは何かで主催の形を先に決めておきたい。

どの精度で数えるのかまで決めて、初めて目的になる

数える対象を決めても、数え方が決まっていないと報告の段階で崩れる。共通基準はここも区分している。観光地点等入込客数調査では、観光入込客数が直接カウントなのか推計しているのかを判断して、推定を0、実数を1、暫定を2というコードで記載させる。推計の例として、把握対象や時間が一部の場合、自動車台数を人数換算している場合、レジ等で商品購入者のみをカウントしている場合が挙げられている。

期間についても同じ扱いがある。全ての期間をカウントしているのか、代表期間のカウントから推計しているのかを判断し、代表期間を0、全期間を1として記載する。代表期間の例には、一日のうち代表時間をカウントしている場合や、四半期のうち代表日をカウントしている場合が並ぶ。

決めること 共通基準の区分 学生の催しでの当て方
何を数えるか 人数/単価/総額 来場者数か、1人当たりの滞在時間か
どの精度か 実数/推定/暫定 受付の記録か、目視の概算か
いつの分か 全期間/代表期間 開場から閉場までか、ピーク時の一時間か
どう把握するか チケット発売数、ゲート開閉数、名簿など 申込フォーム、受付の記録、入口の計数

共通基準が紹介している実数での把握方法には、イベント会場や競技場で入場が有料の場合のチケット発売数や入場時のゲート開閉数の合計、無料施設での入場者名簿、赤外線センサーによる入場者カウンター数、監視カメラの動画解析による人数の計数などがある。学生の催しで使えるのは、申込フォームの件数と受付での記録、入口に人を置いて数える方法あたりだ。使う方法を先に決めておけば、当日に数え忘れる事故が減る。

数える単位を決めると、重複の扱いが決まる

共通基準で面白いのは単位の置き方である。観光入込客数の単位は「人回」で、1人の観光入込客が同じ都道府県内の複数の観光地点を訪れたとしても1人回と数える。同じ人が二つの施設を回っても二重に数えないという約束だ。

同じ問題は、複数の企画を並べる催しで必ず起きる。ステージと模擬店と展示を同時に開けば、一人が三か所を通る。各企画が自分のところで数えた人数を足し上げると、来場者数が実際の二倍や三倍になる。報告書の数字が大きくなって気分はよいが、翌年の計画が狂う。

誰を数えるかという線も引かれている。共通基準は観光入込客を、日常生活環境以外の場所へ旅行し、そこでの滞在が報酬を得ることを目的としない者と定義している。報酬を得て来ている人は数に入らない、という扱いだ。学生の催しなら、運営側のスタッフや出演料を受け取る出演者を来場者数に含めるかどうかがこれに当たる。

対象の範囲にも線が引かれている。共通基準は観光地点を観光客を集客する力のある施設または観光活動の拠点となる地点とし、商業施設のような日常的な利用や、駅、空港、港湾のような通過型の利用が大半を占めると考えられる地点は対象としないと定めている。学生の催しなら、通りがかって立ち止まった人を来場者に数えるかどうかという話になる。どちらでもよいが、決めずに数えると去年との比較ができない。原典は観光庁の共通基準による観光入込客統計で公開されている。

目的を一文に落とすときの型

ここまでの要素を並べると、目的の文に入るべき情報が決まる。何を、どの単位で、どの精度で、いつの分として、どこまで動かすか。この五つが入っていれば、終わったあとに達成の可否を言える。

たとえば「開場から閉場までの入口の計数で、実数の来場者数を前年の480人から600人に増やす」と書けば、当日に何を記録すべきかが一つに決まる。単価側なら「申込者のうち、終了後のアンケートで次回も参加したいと答えた人の割合を、代表時間ではなく全参加者分の回収で6割にする」といった形になる。どちらも読んだ人が同じ判定を下せる。

注意したいのは、目標値の根拠である。前年の実績がないなら、近い規模の催しの数字を置くか、最初の年は測ることそのものを目的にしてよい。根拠のない数字を置くと、達成しても失敗しても理由が分からない。測り方の設計そのものは企画書の効果測定で扱った枠組みが近い。地域と組む催しで相手側の目的と噛み合わせたい場合は、FLASPOのような場で実際のプロジェクトの立て方に触れておくと擦り合わせが速くなる。

よくある質問

来場者数を目的に置くのは安易ではないか。安易になるのは、数え方を決めずに置いたときである。実数か推定か、全期間か代表期間かを明示した来場者数は、立派に検証できる指標になる。逆に「満足度を高める」と書いて測り方を決めないほうが、よほど扱いに困る。

無料の催しで単価はどう考えるのか。金額以外のものを単価に置けばよい。1人当たりの滞在時間、1人が連れてきた人数、1人が回った企画の数はいずれも単価側の数字である。共通基準が総額を人数と単価に分けているのは金額を扱うためだが、分けて考える発想そのものは金額がなくても使える。

目的は一つに絞るべきか。判定のための主目的は一つにしたい。副次的に観察する数字は複数あってよいが、当日に二者択一を迫られたときどちらを取るのかは事前に決まっている必要がある。人数と単価のどちらを優先するかが決まっていれば、行列が伸びたときに通す人数を増やすのか、体験の質を守るのかを現場で判断できる。

目的と目標はどう書き分けるのか。目的は向きで、目標はその向きに置いた数字という整理が実務的である。向きだけでは判定できず、数字だけでは何のためか分からないので、企画書には両方を並べて書く。数字の立て方は企画書のKPIでまとめた考え方が参考になる。


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