イベント企画の流れ|許可の標準処理期間から逆算して日程を組む

イベント企画の流れ|許可の標準処理期間から逆算して日程を組む

やりたいことから並べると、順番が崩れる

最初の打ち合わせでは、たいてい企画の中身から話が始まる。誰を呼ぶか、何を出すか、どんな見せ方にするか。その話は楽しいが、日程を決める材料にはならない。日程を縛るのは、自分たちで動かせない締切のほうである。

会場の使用申請、警察署への許可申請、保健所への届出、協賛の社内決裁。どれも相手の手元で時間が進む。先にその長さを測り、当日から引き算して並べると、企画を詰める期間が自然に決まる。逆に中身を固めてから手続きを調べ始めると、間に合わない部分を削るしかなくなる。

では相手の手元で進む時間は、どうやって測るのか。ここに使える法律がある。行政手続法である。開催の形態そのものをまだ決めていない段階なら、学生イベントとは何かで整理した主催の形から先に固めておきたい。

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許可にかかる時間は、調べられるようになっている

行政手続法第6条は、行政庁に対して「申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間」を定めるよう努めることを求め、定めたときは申請の提出先とされている機関の事務所に備え置くなどの方法で公にしておかなければならないとしている。これが標準処理期間と呼ばれるものだ。

審査の中身も公開の対象になっている。同法第5条第1項は行政庁が審査基準を定めるものとし、第2項は許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものにするよう求め、第3項は行政上特別の支障があるときを除き審査基準を公にしておかなければならないと定める。何を満たせば通るのかと、どのくらいで答えが出るのかは、どちらも事前に確かめられる建前になっている。

それでも分からないときは、聞いてよい。第9条第1項は、申請者の求めに応じて審査の進行状況と処分の時期の見通しを示すよう努めなければならないと定め、第2項は申請しようとする者の求めに応じて申請書の記載や添付書類に関する情報の提供に努めるとしている。窓口に電話をして「いつ出せば間に合いますか」と尋ねる行為は、法律が想定している使い方である。条文はe-Gov法令検索の行政手続法で読める。

窓口が複数になると、待ち時間は足し算にならない

路上で飲食を出す催しになると、警察、保健所、消防と相手が増える。順番に片付けていくと期間も順番に積み上がるが、必ずそうなるわけではない。同法第11条第2項は、一つの申請または同一の申請者からされた相互に関連する複数の申請に対する処分について複数の行政庁が関与する場合、当該複数の行政庁は必要に応じて相互に連絡をとり、申請者からの説明の聴取を共同して行うなどにより審査の促進に努めるものとすると定めている。

相手が誰になるかは、やることで決まっている。道路に露店や屋台店を出す場合と、道路で一般交通に著しい影響を及ぼすような使い方をする場合は、道路交通法第77条第1項第3号と第4号により所轄警察署長の許可が必要になる。食べ物を出すなら、食品衛生法第55条第1項の都道府県知事の許可か、許可の対象外の営業について同法第57条第1項が求める事前の届出のどちらかに当たる。火を使う場合は、消防法第9条が火を使用する器具の取扱いに関する事項を市町村条例に委ねているため、届出や消火器の準備の内容は開催地の条例で決まる。

第1項はさらに踏み込んで、他の行政庁で同じ申請者の関連する申請が審査中であることを理由に、自らの審査や判断を殊更に遅延させてはならないとしている。つまり「向こうの許可が出てからこちらを見る」という扱いは原則として想定されていない。並行して出せるものは並行して出すほうが早い。

断られたときの扱いも条文に書かれている。第8条第1項は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合、申請者に対し同時にその理由を示さなければならないと定め、第2項は書面で処分するときは理由も書面で示すよう求める。第7条は、申請が到達したら遅滞なく審査を開始し、形式上の要件に適合しない申請については速やかに相当の期間を定めて補正を求めるか、拒否しなければならないとしている。書類の不備は、放置されずに返ってくる仕組みになっている。

逆算の順番を、表にして固定する

測った期間を並べると、作業の順番がほぼ一通りに決まる。当日から遡って、動かせないものから置いていく。

段 やること 相手の手元で進む時間 確かめ方
1 主催の形と責任の所在を決める 学内の委員会や顧問の判断 学内規程と前年の実績
2 会場を押さえる 施設の受付開始日と抽選 施設の使用規程
3 許可・届出の要否を窓口に確認 標準処理期間と審査基準 行政手続法第5条・第6条
4 予算と協賛の枠を固める 相手先の決裁サイクル 担当者への直接確認
5 企画の中身と出演・出店を確定 自分たちの手元 会場と許可の条件
6 申請書を提出する 補正のやり直し期間を含む 行政手続法第7条
7 告知と当日の体制を組む 印刷や配送のリードタイム 見積りの納期

注意したいのは第5段の位置である。企画の確定を申請より前に置くのは、申請書に書く内容が企画そのものだからだ。中身が揺れている状態で出すと、補正を求められてやり直しになる。第3段で要否だけ先に押さえておき、中身は第5段で詰める。この二段構えにしておくと、窓口との往復が一回で済む。

段ごとに、何が決まっていれば次に進めるか

順番だけ決めても、各段をいつ抜けたのか判断できないと止まる。抜ける条件を一つずつ言葉にしておきたい。第1段は、赤字が出たときに誰が負担するかが決まっていれば抜けられる。第2段は、仮押さえではなく使用許可の文書が手元にあるかどうかが境目になる。

第3段の条件は、必要な手続きの一覧と、それぞれの提出期限が紙に書かれていることだ。要否の判断は会場と内容で変わるので、電話で聞いた内容をその場でメモに残しておく。第4段は、協賛の見込み額ではなく確定額で予算を組めているかどうか。見込みで走ると、第7段の印刷費が払えなくなる。

抜ける条件を紙に書く利点は、人が入れ替わっても引き継げる点にある。学生の催しは担当者が一年で変わるので、判断の根拠が頭の中にしかないと翌年また窓口に一から聞くことになる。どの手続きをどこに出し、何日かかり、誰が持っていったかを一枚に残しておくと、次の代の助走距離がそのまま短くなる。

第5段から第7段は手を動かす期間になるので、残り日数の管理が中心になる。学内行事の形で進めるなら一年の流れが決まっているので、学園祭の運営方法で追った年間の動きに自分の日程を重ねると抜けが見つけやすい。企画の中身を固める手順そのものは学園祭の企画の立て方に寄せた。地域や企業と組む形を検討するなら、FLASPOのような場で実際の進め方に触れておくと相手側の決裁の速さも掴める。

よくある質問

標準処理期間は、どこを見れば分かるのか。行政手続法第6条は公にしておく方法として申請の提出先の事務所への備付けを挙げているので、窓口に置かれているか、その自治体のウェブサイトに掲載されていることが多い。見つからない場合は第9条第1項を根拠に、処分の時期の見通しを示してもらえるか尋ねればよい。努力義務なので定められていない手続きもあるが、その場合も過去の実績を聞ける。

どのくらい前から動き始めるべきか。一律の答えはない。決まるのは会場の受付開始日と、いちばん長い標準処理期間の合計で、そこに補正のやり直し一回分を足した長さである。先に第2段と第3段だけ調べれば、自分の催しに必要な助走距離が計算できる。他人の「三か月前から」という経験則よりも、この計算のほうが当てになる。

申請が通らなかったら、企画は終わりなのか。終わりではないことが多い。第8条により拒否処分には理由が示されるので、どの要件に適合しなかったのかが分かる。会場を変える、時間帯をずらす、路上を使わない形に組み替えるといった修正で通る場合がある。理由を聞かずに引き下がると、次の年も同じところで止まる。

企画書はこの流れのどこで書くのか。第1段から第4段の結論を書き留めるものとして使うのが実務的である。中身の案を膨らませる道具ではなく、決まったことを相手に渡す道具と考えると分量も決まる。必須項目の立て方はイベント企画書の書き方の整理が使える。第5段に入る前に一度固めておくと、申請書への転記がそのまま済む。


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