「認証しなければならない」という書き方に意味がある
役所の手続きという言葉から思い浮かぶのは、担当者が中身を評価して可否を決める場面だろう。NPO法人の認証はそこが違う。特定非営利活動促進法第12条第1項は「所轄庁は、第十条第一項の認証の申請が次の各号に適合すると認めるときは、その設立を認証しなければならない」と書いている。主語は所轄庁で、述語は「しなければならない」である。
この言い方は、基準に合っていれば断れないことを意味する。活動の意義が大きいかどうか、団体が立派かどうかで判断が揺れる余地を、条文が閉じている。制度の設計者は、行政の裁量をできるだけ外して市民の団体に法人格を開くことを選んだ。だから正式な呼び名も「許可」ではなく「認証」になっている。
裁量を外した代わりに置かれたのが情報の公開だ。第10条第2項は、申請があった旨をインターネットなどで公表し、提出書類の一部を受理の日から2週間、公衆の縦覧に供するよう所轄庁に求める。審査する側の目を減らし、見る側の目を増やす構造になっている。
公開の対象は、定款、役員名簿、設立趣旨書、設立当初と翌事業年度の事業計画書、同じ2年分の活動予算書である。役員名簿のうち住所または居所の記載は除かれる。何をしようとしている団体なのかは開き、個人の居場所は守る、という切り分けだ。
窓口は全国に67ある
どこに申請するかは第9条が決めている。主たる事務所が所在する都道府県の知事が所轄庁となり、事務所が一つの指定都市の区域内だけに所在する法人については、その指定都市の長が所轄庁になる。内閣府が公表する所轄庁別の集計表には47都道府県と20の指定都市が並ぶので、窓口の数は67という計算になる。
窓口が分かれていることの影響は、思っているより大きい。第10条第1項は「都道府県又は指定都市の条例で定めるところにより」書類を添付すると定め、第12条第2項は認証の決定期間について「条例でこれより短い期間を定めたときは、当該期間」と書いている。書式、部数、役員の住所を証する書面の種類、そして審査にかける上限の日数が、所轄庁ごとに変わりうる。
内閣府の集計を所轄庁別に目で追うと、積み上がった件数の差も見える。累計の認証法人数は都道府県の計が38,244法人、指定都市の計が10,510法人で、2026年8月31日現在の全国計は48,754法人である。東京都だけで8,529法人を抱えており、全国の2割に近い。同じ制度でも、窓口が日々扱っている量はまったく違う。
事務所を置く場所を選べる段階なら、ここは確認しておく価値がある。市内に事務所を一つだけ置けば市が所轄庁になり、市外にも事務所を構えると県が所轄庁になる。手続の相手が変わるという意味で、事務所の設計は書類の設計より前にくる。
基準は四つしかない
第12条第1項が並べる基準は4号だけである。第1号は、設立の手続と申請書および定款の内容が法令の規定に適合していること。第2号は、申請に係る法人が第2条第2項に規定する団体に該当すること。第3号は、暴力団、または暴力団の構成員もしくは構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制の下にある団体に該当しないこと。第4号は、10人以上の社員を有することである。
重みが集まっているのは第2号だ。参照先の第2条第2項をたどると、営利を目的としないこと、社員の資格の得喪に不当な条件を付さないこと、役員のうち報酬を受ける者の数が役員総数の3分の1以下であること、そして宗教の教義を広めることや政治上の主義の推進・支持・反対、特定の公職の候補者や政党の推薦・支持・反対を主たる目的としないことが並ぶ。短い条文にいくつもの線が束ねられている。
第1号も見落としやすい。定款の内容が法令に適合しているか、という審査がここに入る。第11条第1項が求める14項目のどれかが欠けていれば、この号で引っかかる。活動の中身がどれほど良くても、条文が並べた項目の形を満たしていなければ先に進めない。会則の条項を条文から起こしていく手順は学生団体の会則の記事が扱っている。
逆に言えば、基準に書かれていないことは問われない。事業の規模、実績の年数、代表者の経歴、資金の多少は4号のどこにも出てこない。設立して間もない学生の団体でも、要件をそろえれば同じ扱いを受ける。機関設計をどう描くかは学生団体の組織図の記事で整理した考え方が使える。
待つ期間は、二度短くなっている
審査にかかる日数は、制度が始まってから同じではない。内閣府が公開している制度改正の経緯を見ると、縦覧期間は2段階で縮んでいる。平成28年度の改正で2か月から1か月に、令和2年度の改正で1か月から2週間になった。令和2年度の改正では、住所などを公表の対象から除く見直しも同時に行われている。
| 時期 | 縦覧期間 | 認証・不認証の決定までの上限 |
|---|---|---|
| 平成28年度改正より前 | 2か月 | 縦覧の経過後2か月以内 |
| 平成28年度改正後 | 1か月 | 縦覧の経過後2か月以内 |
| 令和2年度改正後(現行) | 2週間 | 縦覧の経過後2か月以内 |
決定までの上限を定める第12条第2項は、縦覧期間を経過した日から2か月以内としており、ここは改正を通して動いていない。短くなったのは縦覧の側である。合算すると、申請から決定までの法律上の上限は、かつての4か月から2か月半程度に詰まったことになる。
決定を受けても手続きは終わらない。第13条第1項により法人は設立の登記によって成立し、登記の期限は組合等登記令第2条第1項が設立に必要な手続が終了した日から2週間以内と定める。第13条第3項は、認証のあった日から6か月を経過しても登記をしないとき、所轄庁は設立の認証を取り消すことができるとしている。待たされる期間が短くなった分、通知が来てからの動きの速さが問われるようになった。
不認証は、どれくらい出ているのか
基準に合えば認証される制度なら、断られる例は少ないはずだ。内閣府の所轄庁別の集計で確かめられる。2026年8月31日現在の全国計は、申請受理数が49,885件、認証法人数が48,754法人、不認証数が812件である。表の見方として、申請受理数には認証法人数と不認証数が含まれ、解散した場合は申請受理数と認証法人数の両方から減算されると注記されている。
不認証の812件は、受理された49,885件に対して2パーセントに届かない。ただし内訳には偏りがある。812件のうち768件が東京都の欄に計上されており、ほかの所轄庁は0件から4件の範囲に収まっている。制度が始まった平成10年12月からの累計であることを踏まえても、この集中は窓口ごとの運用の違いを示している。
| 項目 | 件数 | 備考 |
|---|---|---|
| 申請受理数(申請中を含む) | 49,885 | 解散分は減算されている |
| 認証法人数 | 48,754 | 同じく解散分は減算 |
| 不認証数 | 812 | うち東京都が768 |
| 解散数 | 29,572 | うち認証取消が5,648 |
同じ表の解散数29,572件のうち5,648件が認証の取消によるものだという数字のほうが、実は重い。入口で断られる確率は低く、入ったあとに続かずに退場する例が積み上がっている。第31条が挙げる解散事由には、社員総会の決議、定款で定めた解散事由の発生、目的とする事業の成功の不能、社員の欠亡、合併、破産手続開始の決定、設立の認証の取消しが並ぶ。社員が10人を割って欠けていくことも、法律上の解散事由になりうる。
認証を取るかどうかの判断は、取れるかどうかより続けられるかどうかで決まる。毎年の事業報告書の提出と貸借対照表の公告を何年回せるか、そこを見積もってから申請に進みたい。地域で活動を続けている団体の実例はFLASPOでも紹介されている。
よくある質問
不認証になったら理由は教えてもらえるのか。教えられる。第12条第3項は、認証の決定をしたときはその旨を、不認証の決定をしたときはその旨とその理由を、申請者に速やかに書面で通知するよう所轄庁に求めている。理由が示されるので、何を直せば再申請できるかは判断できる。
縦覧の期間に反対意見が出たら認証されないのか。縦覧は意見を集めて可否を決める投票ではない。第12条第1項の基準に該当するかどうかが判断の枠であり、反対が多いという事実そのものは基準に入っていない。ただし縦覧を通じて基準に関わる事実が明らかになれば、その事実は審査に影響する。
書類に間違いが見つかったら出し直せるのか。第10条第4項は、条例で定める軽微な不備に限って補正を認めている。しかも所轄庁が申請書を受理した日から1週間を経過すると補正できない。軽微でない不備や期限を過ぎた場合は、取り下げて作り直すことになる。
認証と認定はどう違うのか。認証は法人になるための手続きで、認定は認証を受けた法人がさらに所轄庁の認定を受ける別の段階である。認定を受けると寄附者が税の優遇を受けられる。2026年8月31日現在、認定は1,282法人、特例認定は33法人にとどまる。認証法人数と比べると、認定まで到達する法人はごく一部である。
認証されるまで活動を止める必要はあるのか。ない。任意団体として続けたまま申請できる。むしろ事業計画書と活動予算書は2事業年度分を書くことになるため、動いている実績があるほうが数字に根拠を持たせやすい。公認とインカレと法人格という軸で団体の形を仕分ける見方はサークルの種類の記事がまとめている。
参考にした資料
条文はe-Gov法令検索の特定非営利活動促進法と組合等登記令で確認した。手続の概要は内閣府の認証制度について、改正の経緯は主な制度改正の経緯、件数は認証申請受理数・認証数(所轄庁別)と認証・認定数の遷移による。
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