活動の記録を動画で残したい、という話は毎年出る。問題は、誰に見せるための記録なのかが曖昧なまま撮り始めてしまうことだ。学内の同級生に向けるのか、協賛を頼む企業や受け入れ先の自治体に向けるのかで、置き場所は変わる。総務省情報通信政策研究所が令和8年6月に公表した令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書の数字を手がかりに、年代をまたいで届く動画の置き方を組み立てていく。
10代の95.0%から70代の48.5%まで、同じ場所にいる
同報告書の表5-1-1によれば、YouTubeの利用率は全年代で81.5%。年代別では10代95.0%、20代96.3%、30代94.0%、40代91.6%、50代84.9%、60代72.6%、70代48.5%となっている。13歳から79歳までの男女1,800人を対象に、全国125地点で令和7年12月に行われた訪問留置調査の結果だ。
この並びは他の動画系サービスと比べると性格がはっきりする。同じ表のニコニコ動画は全年代12.1%で70代は4.7%、TikTokは全年代36.7%で70代は11.1%にとどまる。70代の半数近くが使っている動画サービスは、現時点ではYouTubeだけという状況になる。
| 年代 | YouTube | TikTok | ニコニコ動画 |
|---|---|---|---|
| 10代 | 95.0% | 67.9% | 19.3% |
| 20代 | 96.3% | 61.5% | 22.9% |
| 40代 | 91.6% | 42.6% | 13.1% |
| 60代 | 72.6% | 21.2% | 7.3% |
| 70代 | 48.5% | 11.1% | 4.7% |
| 全年代 | 81.5% | 36.7% | 12.1% |
学生団体にとって意味があるのは、ここが同年代以外に届く数少ない窓口だという点だ。協賛の相談先、連携する自治体の担当者、保護者。活動を説明する相手が40代から60代に寄っている団体ほど、置き場所としての価値は上がる。
流れていく投稿と、残って参照される動画
同報告書の2-2節は、動画系メディアの平均利用時間を示している。全年代の平日ではテレビ系動画が170.5分、ネット系動画が77.1分、休日はそれぞれ211.0分と105.9分。年代別に見ると、平日も休日も10代から30代でネット系動画の平均利用時間がテレビ系動画を超えている。1日のうち1時間以上がネット上の動画に向いている計算になる。
とはいえ、その時間の奪い合いに正面から参加しても勝ち目は薄い。学生団体の動画が効くのは、見つけてもらう場面よりも、送った相手に見てもらう場面だ。協賛の依頼メールに1本のURLを添える、受け入れ先に活動の雰囲気を先に渡しておく。こうした使い方なら、再生数が三桁でも役目を果たす。
そのため、作る順番も変わる。まず団体紹介を1本、次に主要な事業を1本ずつ。これを土台として置いたうえで、記録映像を足していく。先に記録を撮りためてから編集しようとすると、紹介用の1本が永遠に完成しない。
出す側に回っているのは4.2%しかいない
利用率の高さとは裏腹に、投稿する人は少ない。同報告書の図5-1-2では、利用している人のうち「書き込む・投稿する」と答えた割合は、LINEが51.2%、Instagramが18.0%、X(旧Twitter)が9.6%であるのに対し、YouTubeは4.2%。ほとんどの人は見る側にとどまっている。
続かない理由は、たいていが編集の負荷に集中している。10分の動画を月に4本という計画は、授業と活動の合間では成立しにくい。3分前後を月1本に落としてでも、年間を通して途切れないほうが、後から振り返ったときの資料価値は高い。
本数を決めたら、撮影担当と編集担当と公開担当を別の人にしておきたい。一人に集約すると、その人の試験期間がそのまま空白になる。学生団体の活動内容を分類から組み立てた記事のように、何を撮るかを事業の型から先に決めておくと、担当を分けても内容がぶれない。
宣伝を含む動画は、音楽の条件が変わる
音楽を入れる段になると、確認する相手が複数になる。日本音楽著作権協会は動画投稿サービスと利用許諾契約を結んでおり、契約済みのサービスにはYouTubeも含まれる。投稿者は一定の範囲内であれば、管理楽曲を含む動画を手続なしにアップロードできる、というのが基本の形だ。
ところが同協会の動画投稿サービスでの音楽利用の案内は、事前の手続が必要になる場合を三つ挙げている。「特定の企業・団体や商品、サービスを宣伝するもの」に該当する場合、個人以外による外国作品の配信、そして自らが主催するコンサート等の模様をアップロードする場合だ。協賛企業を紹介する動画や、団体主催のライブの記録は、このいずれかに触れることがある。心当たりがあれば、公開前に問い合わせる側に倒しておきたい。
もう一つ別の権利がある。市販のCDやダウンロードした音源を使う場合は、著作権とは別に著作隣接権、つまり音源製作者やアーティストの権利の許諾が必要だと同協会は明記している。楽曲の権利が片付いていても、その録音を使ってよいかは別問題という構造になる。手持ちの音源を貼るより、権利処理の済んだ素材を選ぶほうが手間は少ない。
他人の映像や記事を画面に出すとき
報道を引いて活動の背景を説明したい、という場面もある。著作権法第32条第1項は「公表された著作物は、引用して利用することができる」と定めたうえで、その引用が「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」と続けている。無条件に使えるという条文ではない。
実務に落とすと、自分たちの説明が主で引用部分が従になっていること、どこからどこまでが引用かが画面上で区別できること、出典が示されていることが揃っているかを見る。画面いっぱいに新聞記事を映して読み上げるだけの構成は、この三つのどれも満たしにくい。
学外の人に活動を伝えるという目的に立ち返れば、他人の素材を使う必要がない場面も多い。学生の活動を社会に接続する動きを扱うFLASPOのような窓口も含め、自分たちの言葉で説明できる範囲を先に固めておくほうが早い。編集そのものの進め方は動画編集とYouTubeのチャンネル運営の側に譲り、ここでは権利と体制に絞っておく。
よくある質問
チャンネルは団体名と個人名のどちらで作るべきですか。団体名義で作り、ログインに使うメールアドレスも団体のものにしておきたい。個人の端末に二段階認証が紐づいていると、その人が卒業した時点で過去の動画ごと触れなくなる。アカウントの帰属をどこで線引きするかは、学生団体のSNS運用の全体像の側で整理している。
短い縦型動画と長い横型動画は、どちらを先に作るべきでしょうか。説明する相手が年上に寄っているなら、横型で数分の紹介動画を1本置くほうが先だ。前述のとおり60代の72.6%、70代の48.5%がこの場所にいる一方、縦型の短い動画が強い層は10代に偏る。届けたい相手の年代を決めてから形式を選ぶ順番になる。
再生数が伸びないまま続ける意味はありますか。協賛依頼や受け入れ先への説明に使う前提なら、再生数は成果の指標ではない。渡した相手が最後まで見たかどうかのほうが実際には効く。公開範囲を限定して、URLを知っている人だけが見られる形にする選択肢もある。
メンバーの顔を映してよいか迷います。映る人に事前に確認し、卒業後に削除を求められたときの連絡先を概要欄に書いておく。撮影時の同意と、数年後の削除依頼は別の手続きになるため、受け口を決めていないと対応が止まる。
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