ESの志望動機の書き方|法律で開く企業情報から組み立てる | FLASPO MAGAZINE

ESの志望動機の書き方|法律で開く企業情報から組み立てる

共感を書いても読み手が困る理由

志望動機の欄で最初に浮かぶのは、理念への共感や社員の人柄といった言葉である。ところが提出先の立場に立つと、この種の記述は扱いに困る。採用側は応募者を比べなければならないのに、共感の度合いには比べる物差しがない。

そもそも選考の基準は限定されている。厚生労働省が示す公正な採用選考の基本は、応募者に広く門戸を開くことと、本人のもつ適性・能力以外のことを採用基準にしないことを二つの観点として挙げている。人生観や生活信条を評価に持ち込めない建前の下では、「共感しました」という申告は点にしにくい。

では何が点になるのか。この会社を選んだ判断の筋道である。どの情報を見て、何と比べ、どこが自分の条件に合うと考えたか。判断の過程なら、適性と能力の話として読める。したがって志望動機の出来は、文章力よりも先に、見た情報の質で決まってしまう。

法律が応募者に開かせている情報

求人票と採用サイトだけが情報源だと思うと、書ける内容は他の応募者と重なる。実は、求めれば企業が出さなければならない情報が法律で定まっている。厚生労働省の青少年雇用情報の提供についての資料には、若者雇用促進法の条文が引かれている。

同法第十三条第二項は、学校卒業見込者等を条件とした募集を行う者に対し、その募集に応じ、または応じようとする学校卒業見込者等の求めに応じ、青少年雇用情報を提供しなければならないと定める。第十四条第二項は、ハローワークや職業紹介事業者へ求人を申し込んだ求人者に同じ義務を課している。求めがない段階でも、ホームページ等での幅広い情報提供が努力義務とされている。

同じ資料は、提供される情報を三つの類型に整理し、求めがあった場合には類型ごとに一つ以上の項目を提供する仕組みを説明している。求める側は、氏名、連絡先、所属学校名、在籍または卒業の別を示して申し出る。

類型 資料に挙げられた項目 志望動機に使える読み方
募集・採用に関する状況 過去三年間の新卒採用者数と離職者数、男女別人数、平均勤続年数 採った人数と残った人数の差から、定着の実態を推し量る
雇用管理に関する状況 月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得状況、役員と管理職の女性割合 長く働く前提で、自分の条件に合うかを確かめる
職業能力の開発・向上 研修の有無と内容、自己啓発支援、メンター制度、キャリアコンサルティング、社内検定 入社後に伸ばせる力を特定し、志望職種と結びつける

三類型のどこを見たかを志望動機に書き込むと、文章の性格が変わる。「研修制度が充実している点に惹かれた」ではなく、「導入研修の後に社内検定の制度が続く設計だと伺い、三年目までに担当領域を決めたい自分の希望に合うと考えた」と書ける。読み手は、言葉の熱量ではなく調べた深さを見る。

離職率の相場を知らないと比較が成り立たない

採用者数と離職者数を教えてもらっても、比べる基準がなければ解釈できない。全体の水準は国の統計で確かめられる。厚生労働省が令和七年十月二十四日に公表した新規学卒就職者の離職状況によると、令和四年三月に卒業した新規大学卒就職者の就職後三年以内の離職率は三三・八%で、前年度より一・一ポイント下がった。高校卒は三七・九%、短大等卒は四四・五%である。

この平均値よりも、内訳の差のほうが志望動機に効く。同じ公表資料では、事業所規模が小さいほど離職率が高い傾向が示され、大学卒では五人未満の事業所が五七・五%、千人以上が二七・〇%となっている。産業別では、大学卒の宿泊業・飲食サービス業が五五・四%で最も高い。

規模や業種でこれだけ差が出ると分かっていれば、企業から聞いた数値の位置づけができる。「三年で三割が辞めるのは普通」と流すか、「同規模の平均より低い」と読むかで、動機の説明は別物になる。業界ごとの働き方の違いは地方就職した若手社員の働き方のような記事でも具体像がつかめる。

三つの層に分けて書くと使い回しが効く

志望動機は、業界を選んだ理由、その中でこの会社を選んだ理由、入って就きたい職種の理由という三層に分けられる。層ごとに書き分けておくと、応募先が増えても作り直す範囲が一層で済む。

第一層は、産業の構造や需要の変化に触れる部分なので、同じ業界内では共通して使える。第二層が本体である。ここに三類型で得た数値や制度名を入れる。固有名詞と数字が入るため、他社へ流用できない代わりに、読み手には最も効く。第三層は、自分の経験と職種の作業内容を接続する箇所で、自己PR欄と材料を共有する。

配分は、四百字なら第一層に八十字、第二層に二百二十字、第三層に百字が目安になる。二百字の指定では第一層を落とし、会社と職種の二層で書く。構成の型をもう少し細かく確かめたい場合は就活の志望動機の書き方が土台になる。情報収集の入口としてはインターンの種類と基本も押さえておきたい。

提出前に確かめる三つの点

書き上げた原稿は、三つの問いで点検すると穴が見つかる。一つ目は、第二層の記述が他社に置き換えても成り立たないか。置き換えて成り立つなら、会社を選んだ理由になっていない。

二つ目は、引いた数値の出どころを言えるか。面接で「どこで見たのか」と問われる前提で、企業から提供された情報なのか、公表統計なのかを区別しておく。三つ目は、情報を求めた行為そのものを書いていないか。問い合わせた事実は動機ではないので、得た内容だけを使う。

なお、情報提供を求めたことで不利に扱われるのではないかという懸念については、先の資料でも論点として取り上げられ、不利益な取扱いを防ぐための事業主への指導を徹底する方向が記されている。制度として求めてよいことになっている以上、遠慮して情報量を落とす必要はない。文章の精度を上げる練習にはESを変える文章力の鍛え方が使える。業界ごとの事情を調べ直すならFLASPOの記事も合わせて読むとよい。

よくある質問

第一志望ではない会社にどう書くかという問いは多い。嘘を足す必要はなく、第二層の密度を落とさないことだけを守れば足りる。調べた量は志望度の代わりになる。

企業に青少年雇用情報を求める連絡はいつ送るのが適切か。説明会の前後や、応募を検討している段階で構わない。条文は応募者だけでなく、応募しようとする者も対象にしている。

平均勤続年数が短い会社は避けるべきかと聞かれることもある。設立から日が浅い会社や、事業の入れ替わりが速い業種では数値が短く出やすいため、単独では判断できない。採用者数と離職者数、研修制度の三つを並べて、育てる設計があるかどうかを見るほうが実態に近い。

社名を入れ替えただけの原稿が見抜かれるのかという不安もある。採用担当者は同じ設問の回答を何百通も読むため、どの層が薄いかはすぐ分かる。むしろ見抜かれる前提で、第二層だけに時間を集中させるほうが合理的である。

最後に、数値を本文に入れると固い印象になるという心配について。志望動機は読み物ではなく判断材料なので、固さは欠点になりにくい。数字を並べるのではなく、数字を見てどう考えたかを一文添えると、読み手の負担は下がる。

三類型の情報が採用サイトに載っていない場合はどうするか。載せる義務は努力義務の範囲なので、未掲載でも違反ではない。その場合は直接問い合わせる筋道が用意されているため、掲載の有無そのものを減点材料にしなくてよい。

同業他社と比べた記述を入れるべきかという相談もある。比較の対象を名指しすると角が立つので、規模帯や事業領域といった言い方で置き換えるのが無難である。「同じ規模で同じ製品群を扱う数社と並べて見たとき」という書き出しなら、比べた事実だけが伝わる。


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