道の駅の棚には、漬物と器と手ぬぐいが同じ「特産品」の札のもとに並んでいる。範囲が広すぎて、種類をいくつと答えればよいのか分からなくなる言葉である。手がかりは国の登録簿にある。特許庁は地域の名前を冠した産品を分野ごとに整理して公開しており、その分野の数は24、登録件数は804件だ。この区切りをそのまま借りれば、感覚で語られてきた「種類」を件数で確かめられる。
国の登録簿を分野で割ると、24の引き出しができる
使うのは特許庁の地域団体商標制度である。地域の産品について事業者の信用の維持を図り、地域ブランドの保護によって地域経済を活性化することを目的に、2006年4月1日に導入された。登録できるのは「地域の名称」と「商品またはサービスの普通名称」などを組み合わせた文字商標で、図案化されたロゴは対象外になる。
特許庁の地域団体商標登録案件一覧(分野で検索)は、登録案件を都道府県順、五十音順、分野順の三通りで引けるようにしている。このうち分野順の見出しが24ある。2026年8月31日現在の登録は804件で、各分野に振り分けられた内訳は次のとおりだ。
| 分野 | 登録件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 野菜 | 81件 | 10.1% |
| 米 | 10件 | 1.2% |
| 果実 | 63件 | 7.8% |
| 食肉・牛・鶏 | 71件 | 8.8% |
| 水産食品 | 60件 | 7.5% |
| 加工食品 | 60件 | 7.5% |
| 牛乳・乳製品 | 6件 | 0.7% |
| 調味料 | 23件 | 2.9% |
| 菓子 | 15件 | 1.9% |
| 麺類・穀物 | 17件 | 2.1% |
| 茶 | 35件 | 4.4% |
| 酒 | 16件 | 2.0% |
| 清涼飲料 | 1件 | 0.1% |
| 植物 | 5件 | 0.6% |
| 医薬品・漢方薬 | 1件 | 0.1% |
| 織物・被服・布製品・履物 | 75件 | 9.3% |
| 工芸品・かばん・器・雑貨 | 80件 | 10.0% |
| 焼物・瓦 | 37件 | 4.6% |
| おもちゃ・人形 | 13件 | 1.6% |
| 仏壇・仏具・葬祭用具・家具 | 30件 | 3.7% |
| 貴金属製品・刃物・工具 | 8件 | 1.0% |
| 木材・石材・炭 | 14件 | 1.7% |
| 温泉 | 56件 | 7.0% |
| サービスの提供(温泉を除く) | 27件 | 3.4% |
| 24分野の合計 | 804件 | 100.0% |
単独で最も多いのは野菜の81件だった。次が工芸品・かばん・器・雑貨の80件、織物・被服・布製品・履物の75件、食肉・牛・鶏の71件と続く。逆に最も薄いのは清涼飲料と医薬品・漢方薬で、それぞれ1件しかない。地域の名前が付きやすい産品と付きにくい産品が、ここまではっきり分かれている。
食べ物ではない特産品が4割を占めている
表の24分野を、口に入るものとそれ以外に分けてみると、見え方が変わる。野菜から清涼飲料までの食品・飲料にあたる13分野を合わせると458件で、全体の57.0パーセントになる。残りの346件、43.0パーセントは食品ではない。
その中身の大半はものづくりだ。織物、工芸品、焼物・瓦、おもちゃ・人形、仏壇・仏具、貴金属製品・刃物、木材・石材・炭の7分野を足すと257件で、全体の32.0パーセントを占める。単独最多だった野菜81件の3倍を超える規模である。
さらに温泉が56件、温泉を除くサービスの提供が27件ある。合わせて83件、1割強が「もの」ですらない。草津温泉や伊香保温泉のような地名が、野菜や牛肉と同じ登録簿に並んでいる。特産品を土産物の食品売り場だけで考えていると、この83件がまるごと視野から落ちる。
産地の側から見ると、この偏りは打ち手の違いにつながる。食品なら鮮度と出荷時期が勝負を決めるが、織物や焼物は在庫が持てる代わりに担い手の数が天井になる。温泉やサービスは、そもそも運んで売ることができない。
同じ地域名つきでも、二つの制度は別物
地域の名前を国に登録する道はもう一つある。農林水産省の地理的表示保護制度、いわゆるGIだ。こちらの登録番号は令和8年7月10日現在で第179号まで発行されている。804件と179件では4倍以上の開きがあり、同じ「国のお墨付き」と呼ばれていても厳しさが違う。
差は要件に出る。農林水産省の登録産品一覧に載るには、産品が特性を有した状態でおおむね25年以上の生産実績を積んでいることが必要だ。さらに生産行程管理業務を担う団体が要り、登録が決まると登録免許税9万円を納めることになる。名称を取るだけでは終わらない仕組みである。
一方の地域団体商標は、事業協同組合や農業協同組合、商工会、商工会議所、NPO法人といった地域に根ざした団体が出願する。決め手は周知性で、出願団体やその構成員が使ってきた結果として、一定の地理的範囲の需要者に知られていることを販売数量や新聞報道で示さなければならない。25年という年数の縛りはないが、無名のままでは通らない。
みりんは登録できず、みりん風調味料はできる
制度の線引きは、ときに直感を裏切る。農林水産省はGIのよくある質問で、農林水産物等には加工品も含まれるが、酒税法等の対象である酒類や医薬品、化粧品等は該当しないと説明している。そこで挙げられている例が分かりやすい。みりんそのものは酒税法の対象なので登録できず、みりん風調味料なら登録できる。
ところが地域団体商標の側には酒の分野が16件ある。北海道の酒や群馬の地酒といった名称が現に登録されている。つまり日本酒や焼酎の産地が地域の名前を守りたいと考えたとき、選べる制度は事実上ひとつに絞られる。種類を数える前に、どの登録簿を見ているかを確かめる必要があるのはこのためだ。
GI側の入口も、以前より広がっている。令和4年11月に審査基準の見直しが行われ、差別化された品質がなくとも、地域の自然的・人文的・社会的な要因の中で育まれてきた品質、製法、評判、ものがたりといった独自の特性があれば登録できるようになった。高級品でなければ無理という前提は、すでに外れている。
分野が決まると売り方も決まってくる
自分の地域の産品がどの分野に入るかは、どう売るかとほぼ直結している。農林水産省の6次産業化総合調査によると、令和6年度の農産物直売所の年間販売金額は1兆1,344億円、農産加工は1兆61億円だった。生鮮のまま棚に出す道と、加工して日持ちさせる道が、ほぼ同じ大きさで並んでいる。
野菜や果実のように鮮度が価値そのものである分野は、前者に寄せざるをえない。逆に調味料や菓子、加工食品の分野は後者を選んだ産品の集まりだと読める。表の中で調味料23件、菓子15件、加工食品60件という数字が並ぶのは、その選択を通り抜けた産品が積み上がった結果である。
工芸や焼物の分野になると、比べるべき相手は直売所ではなく受注と展示になる。温泉やサービスの提供に至っては、来てもらう以外の売り方がない。特産品という一語でまとめず、24分野のどこに立っているかを先に決めたほうが、次の一手を選びやすい。
地域の側で担い手や外の目線が足りないと感じるなら、若者と地域をつなぐ取り組みを手がけるFLASPOのような団体と組む選択もある。分野ごとの課題を言葉にする作業は、外から来た人のほうが得意なことが多い。特産品の全体像を先につかみたい場合は特産品とは?名産品との違いや種類・買い方まで5分でわかる入門ガイド、制度の背景を追うなら地域ブランドとは?地理的表示と成功事例・作り方5ステップを解説、産品そのものを眺めたいときは【47都道府県】特産品一覧|地方別の有名グルメと入手方法を総まとめが入口になる。
よくある質問
特産品の種類は結局いくつあるのでしょうか。国の登録簿に沿って数えるなら24分野です。特許庁が地域団体商標の一覧をこの区切りで公開しており、804件がそこに振り分けられています。もっと粗くまとめたいなら、食品・飲料458件と食品以外346件という二分法でも用は足ります。
名産品と特産品では分野の分け方が違うのですか。国の登録簿に名産品という区分はありません。地域団体商標では、産地を示す際に慣用される「本場」「特産」「名産」といった文字も商標の構成に組み込める扱いになっています。分類の違いというより、呼び方の違いに近いものです。
工芸品を特産品に数えてよいのですか。数えてかまいません。織物や焼物、仏具、刃物といった分野は特許庁の一覧に正式な見出しとして立っており、7分野で257件を占めます。食品より層が薄いという印象は、件数の上では成り立ちません。
自分の地域の産品が登録されているか調べたいときはどうしますか。特許庁の一覧は都道府県からも引けるので、まず自分の県の見出しを開くのが早いです。GIの側は農林水産省の登録産品一覧に第1号から順に並んでいます。どちらも公開情報ですから、団体に問い合わせる前に確認できます。
分野をまたぐ産品はどちらに数えられるのですか。一覧は登録ごとにひとつの見出しに置かれています。たとえば米を原料にした加工食品は加工食品の側に載り、米の10件には含まれません。件数を読むときは、産品の素材ではなく売られている形で振り分けられている点に注意が必要です。
出典
特許庁「地域団体商標登録案件一覧(分野で検索)」(2026年8月31日現在)/同「地域団体商標制度とは」/農林水産省「登録産品一覧」(令和8年7月10日現在)/同「地理的表示保護制度に関するよくある質問」/同「6次産業化の動向」(6次産業化総合調査、令和6年度)
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