地域コミュニティの再生事例|国が選んだ8事例の共通点を分解する | FLASPO MAGAZINE

地域コミュニティの再生事例|国が選んだ8事例の共通点を分解する

立て直した地域の話は、たいてい「熱心な人がいた」で終わる。それでは次の地域が真似できない。国が毎年選んでいる優良事例の記録を並べると、選ばれた取組にはかなりはっきりした型がある。令和7年度に選ばれた8つの事例を軸に、何が評価されたのかを順に見ていく。

国が毎年、再生した地域を選んでいる

総務省と一般社団法人全国過疎地域連盟は、過疎地域持続的発展優良事例表彰という枠組みを持っている。過疎地域の持続的発展を目指した取組を奨励するもので、図司直也法政大学教授を委員長とする表彰委員会が、先進的・モデル的な事例を選ぶ。令和7年9月16日に公表された令和7年度分は、総務大臣賞が5事例、全国過疎地域連盟会長賞が3事例だった。表彰式は、10月30日に鳥取県で開かれる全国過疎問題シンポジウム2025 in とっとりで行うと告知された。

前年の令和6年度は総務大臣賞が4事例、会長賞が5事例で、こちらは山梨県で表彰式が開かれた。つまり毎年10前後の事例が、審査を通った記録として国の側に積み上がっている。この一覧は、成功談を集めたウェブ記事とは性質が違う。誰がどこで何をしたかが所在地つきで書かれているため、自分の地域と条件を照らし合わせられる。

団体名 所在地 取組の柱
梅内聚落 秋田県能代市 遊休施設を譲り受けて拠点化
UKUU 新潟県佐渡市 棚田の保全と棚田米の販売強化
松崎地区伝統市「三八市」実行委員会 鳥取県湯梨浜町 廃れた伝統市の復活と居場所づくり
地域自主組織 まちづくり大山 鳥取県大山町 子どもの居場所と地域医療の対話
採銅所地域コミュニティ協議会 福岡県香春町 話し合いから計画をつくる
がっこの学校 いぶりがっこう 秋田県仙北市 食の手づくりと発信で人を呼ぶ
白川ワークドット協同組合 岐阜県白川町 雇用の創出と移住定住の促進
一般社団法人 ドリームレッド 山口県美祢市 収益事業と生活サービスの両立

使われなくなった建物が、最初の一歩になっている

秋田県能代市の二ツ井町梅内地区では、地区にあった唯一の市の公共施設である子育て支援センターが使われなくなった。梅内聚落はその施設の譲渡を受け、梅内聚落コミュニティセンターとして整備した。そこを拠点にして、地域課題の解決と、森林や山菜といった地域資源の活用に取り組んでいる。施設が閉じるという出来事を、拠点を手に入れる機会に変えた形である。

前年に総務大臣賞を受けた秋田県大仙市のNPO法人南外さいかい市も入口が似ている。買い物の場を求める住民の要望を受けて、平成29年に行政主導で検討委員会が立ち上がり、地域おこしに意欲的な住民有志の運営協議会が活動主体になった。行政が店舗や設備を整え、令和元年に公設民営のミニスーパーマーケットが動き出している。建物と設備は行政、運営は住民という分担が、そのまま制度設計になっている。

これは例外的な工夫ではない。総務省の令和6年度調査では、地域運営組織のうち活動拠点を持つ団体が97.1パーセントあり、そのうち64.2パーセントが公共施設を使っている。過疎化が進む地域で施設が余ることと、活動の器が要ることは、同じ場所で同時に起きている。

稼ぐ仕組みを持ち込んだ事例は何をしたか

山口県美祢市の一般社団法人ドリームレッドは、地域が自ら策定した「赤郷夢プラン」の実現を掲げて、スクールバスやデマンドバスの運行、特産品の開発・販売を進めている。地域運営に経営の視点を入れ、収益事業と生活サービス事業を組み合わせ、段階的かつ計画的に実行していると評価された。移動の足を確保する事業と、物を売る事業が同じ組織の中にあるのが特徴である。

新潟県佐渡市のUKUUは棚田の保全が出発点だが、そこで止まっていない。県と市と連携して都市との交流や棚田米の販売強化に取り組み、地域おこし協力隊や移住者が開いたレストランと組んで地産地消と新しい特産品の開発に広げ、大学と組んでスマート農業にも手を伸ばしている。岐阜県白川町の白川ワークドット協同組合は令和4年2月の設立で、特定地域づくり事業とふるさとワーキングホリデーを軸に、地域内の雇用創出と移住定住の促進、若者のキャリア形成を支えている。

後者の下敷きになっている特定地域づくり事業協同組合の制度には、国の交付金がついている。総務省は令和7年4月1日に、令和7年度の特定地域づくり事業推進交付金として117件、4億3058万8千円の交付を決定したと公表した。一方で、生活支援などの自主事業による収入確保に取り組む地域運営組織は45.9パーセントにとどまり、収入源としては市区町村からの助成金・交付金等を挙げた団体が85.2パーセントと圧倒的に多い。稼ぎを持つ組織は、まだ少数派である。

女性と子どもが軸になった事例が並んでいる

鳥取県湯梨浜町の松崎地区伝統市「三八市」実行委員会は、地元の女性たちが中心になって、いったん廃れた伝統市を復活させた。地域おこしのイベントや、誰でも気軽に集まれるカフェづくりにも広がり、そのカフェが移住者を支え、人と人をつなぐ場になっている。自分たちも楽しみながら広げているという点が、表彰の説明にわざわざ書かれている。

鳥取県大山町の地域自主組織まちづくり大山は、春・夏・冬の長期休業中に小学生が自主的に学び遊び、大人と交流できる安心な居場所をつくった。運営を支える住民ボランティアの体制を組むことで、子育て環境そのものを押し上げている。さらに地域の診療所の医師と鳥取大学医学部の教員・学生、住民が同じ場で対話する機会をつくり、地域医療を続けるための関係づくりにも踏み込んでいる。

前年の事例にも同じ系列がある。鹿児島県龍郷町の一般社団法人E’more秋名は、50年後も子供たちが住みたいと思えるシマであり続けてほしいという考えを掲げて活動している。北海道厚沢部町の保育園留学推進協議会は、保育園の一時預かりと移住体験住宅、収穫体験をひとつのプログラムに束ね、町と協定を結んだ企業との官民連携で全国の子育て家族を1週間から3週間受け入れている。子どもを軸にすると、関係人口の側から人が入ってくる筋道ができる。

どの事例にも、先に話し合いの時間がある

福岡県香春町の採銅所地域コミュニティ協議会は、令和元年から地域で話し合いを重ね、有志による協議会を設立した。住民の意見を可視化した「採銅所地域づくり夢プラン」を作り、その計画に沿って6つの部会が動いている。進める途中でそれまでなかった発想が生まれたとも書かれている。先に計画があったのではなく、話し合いが計画を生んだ順番である。

この順番は制度の側にも用意されている。地域運営組織の形成支援として、ワークショップの開催費、ファシリテーターの旅費や謝金、事務所開設のための施設改修費が特別交付税の対象になっており、措置率は2分の1である。令和7年度からは、ワークショップ開催のための臨時職員経費の上限額が200万円から220万円に引き上げられた。話し合いの場を作る費用に、わざわざ枠が切られている。

人の手当ても同じ考え方で置かれている。集落支援員は令和6年度時点で専任が2,645人、自治会長などとの兼務である兼任が3,022人配置されており、特別交付税の措置額は専任1人あたり上限500万円、兼任は40万円である。専任のおよそ5割が50代以下で、およそ9割がそれまで暮らしていた自治体で活動している。加えて総務省は、立ち上げや運営を外から支える中間支援者の実態把握も進めており、令和6年度の研究会では特定非営利活動法人や一般社団法人、大学の研究者が確認されている。企画単位で若い世代を地域に連れてくるFLASPOの取り組みも、この「外から支える一手」と同じ位置に置ける。

よくある質問

優良事例に選ばれた取組の詳しい内容はどこで読めますか。総務省の報道資料に事例ごとの概要が載っており、公表資料のPDFが添付されています。令和7年度分は令和7年9月16日、令和6年度分は令和6年9月19日の報道資料です。より詳しい聞き取り記録が必要な場合は、地域運営組織の調査研究事業の報告書に自治体単位の実例調査が収められています。

小さな集落でも真似できる事例はありますか。表彰されている取組の多くは、小学校区や旧村程度の範囲で動いています。地域運営組織全体では、活動範囲が小学校区とおおむね一致する団体が43.1パーセント、旧小学校区とおおむね一致する団体が16.6パーセントで、旧小学校区より狭い範囲の団体も13.4パーセントあります。規模が小さいこと自体は障害になっていません。

補助金が取れなければ何も始められないのでしょうか。始まりの部分は費用が小さいものが多いです。採銅所の例のように話し合いから入る形であれば、必要なのは場所と時間です。その段階の費用にも特別交付税の措置があるため、まず市町村の担当課に相談する順番が現実的です。設備投資が必要になる段階で、過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業のような枠を検討することになります。

その枠ではどのくらいの規模まで使えますか。過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業の交付対象経費の限度額は1,500万円の定額補助です。専門人材を使う事業は2,000万円、ICT等の技術を使う事業は2,500万円、両方を使う事業は3,000万円まで上乗せされます。令和7年度の当初予算額は4億円で、対象は過疎地域をはじめとする条件不利地域、事業主体は集落ネットワーク圏を支える中心的な組織です。

事例を読むときに気をつけることはありますか。結果の数字だけを見ると、条件が違う地域では再現できません。誰が最初に言い出したか、行政がどこを持ったか、住民がどこを持ったか、という分担の部分を読むほうが移しやすいです。南外さいかい市のように、建物は公、運営は民という切り分けが明記されている事例は特に参考になります。

過疎化対策として何が効いたのかを一件ずつ確かめたい場合も、同じ読み方が使えます。

出典

総務省・一般社団法人全国過疎地域連盟「令和7年度過疎地域持続的発展優良事例表彰における総務大臣賞及び全国過疎地域連盟会長賞の選定」(令和7年9月16日)/同「令和6年度過疎地域持続的発展優良事例表彰における総務大臣賞及び全国過疎地域連盟会長賞の選定」(令和6年9月19日)/総務省地域力創造グループ地域振興室「令和6年度 地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業 報告書」(令和7年3月)/総務省「令和7年度「地域運営組織」全国セミナー in 鹿児島 資料」/総務省「令和7年度 特定地域づくり事業推進交付金の交付決定(第1回)」(令和7年4月1日)


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで現在開催中のコンテスト