古民家リノベーション費用の考え方|工事の中身と使える補助・減税 | FLASPO MAGAZINE

古民家リノベーション費用の考え方|工事の中身と使える補助・減税

改修にいくらかかるのか。この問いに一般的な答えを出そうとすると、たいてい役に立たない数字にたどり着く。古民家は建った年も規模も傷み方も揃っていないので、平均という考え方が成り立ちにくい。それでも予算は先に決めなければならない。そこで、公表されている数字の性質を見極めたうえで、上限が決まっている側から組み立てる方法を取る。

公表されている「リフォーム資金」の読み方

国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査では、リフォームを行った世帯の平均リフォーム資金は154万円、中央値は48万円だった。自己資金比率は85.5パーセントである。平均と中央値がこれだけ離れているという事実が、この分布の形を語っている。少数の大きな工事が平均を引き上げ、実際に多いのは数十万円規模の部分的な工事だという読み方になる。

もうひとつ押さえておきたいのは対象地域である。この調査はリフォーム住宅について三大都市圏を対象としている。地方部で行われる古民家の全面改修は、この統計の外にある。つまり154万円という数字は、目標にも基準にもならない。参照できるのは「一般的なリフォームは自己資金でまかなわれている」という傾向のほうだ。自己資金比率85.5パーセントは、リフォームに融資が付きにくい実情を映している。

古民家の改修は、この分布のどこにも収まらない。屋根、外周壁、床下、設備を一度に触るため、工事の種類として増築や改築に近い規模になる。予算を立てる順番も、部分的なリフォームとは変える必要がある。

費用が動く軸は「見え方」ではなく性能

見積もりを何社かから取ると、金額の幅の大きさに驚くことになる。同じ家の同じ希望に対して倍近く違う。差が出るのは仕上げの好みではなく、建物の性能をどこまで作り直すかという線の引き方である。

その線の引き方には、国が示している目安がある。長期優良住宅化リフォーム推進事業の支援対象は、三つの条件を満たすリフォーム工事とされている。第一にインスペクションを実施し、維持保全計画・履歴を作成すること。第二に工事後に耐震性と劣化対策、省エネルギー性が確保されること。第三に、構造躯体等の劣化対策、耐震性、省エネルギー対策、維持管理・更新の容易性、可変性、高齢者対策、三世代同居対応、子育て世帯向け改修、防災・レジリエンス性向上改修のいずれかの性能向上に資するリフォームであることである。

この三条件は、補助を使うかどうかにかかわらずチェックリストとして使える。まず調査をして今の状態を把握し、耐震性と劣化対策と省エネルギー性を確保する工事を土台に置き、そのうえで暮らし方に応じた性能を足す。この順番で組めば、どこを削れて、どこを削ると建物の寿命に響くのかが見えてくる。逆に、間取りと内装から決めていくと、あとから構造と断熱の工事が積み上がって予算が崩れる。

インスペクションが条件の先頭に来ている点も意味がある。壁を開けるまで範囲が分からない工事では、調査を省くほど見積もりの精度が落ちる。調査費は削る対象ではなく、予算の一部として最初から積んでおくものだ。

補助の上限から予算を逆算する

補助制度は、金額の目安を裏から教えてくれる道具でもある。補助率と上限額が示されていれば、国がどの規模の工事を想定しているかが割り出せる。

長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助率は3分の1、補助額は最大80万円/戸である。長期優良住宅の増改築認定を取得する場合は最大160万円/戸となる。さらに、三世代同居改修工事を併せて実施する場合、若者・子育て世帯が工事を実施する場合、既存住宅を購入し工事を実施する場合のいずれかに当たれば、限度額に50万円/戸を加算できる。

補助率3分の1という条件から逆算すると、上限80万円に届くのは対象工事費が240万円のときである。160万円なら480万円、加算の50万円を含めた210万円なら630万円が上限に達する水準になる。古民家を買って性能向上の改修を行う人は加算の対象に入りやすいため、この逆算した数字が予算の目盛りとして使える。

省エネ側には別の制度がある。子育てグリーン住宅支援事業では、既存住宅の改修について、リフォーム工事内容に応じて定める額の合計として、必須工事3種のすべてを実施する場合は上限60万円/戸、3種のうちいずれか2種を実施する場合は上限40万円/戸とされている。必須工事は開口部の断熱改修、躯体の断熱改修、エコ住宅設備の設置である。断熱材が入っていない古民家では、この三つがそのまま工事項目になる。

制度 補助の上限 上限に達する対象工事費(補助率からの逆算)
長期優良住宅化リフォーム推進事業(評価基準を満たす場合) 80万円/戸(補助率3分の1) 240万円
同(長期優良住宅の増改築認定を取得する場合) 160万円/戸(補助率3分の1) 480万円
同(既存住宅を購入して工事する等の加算あり) 上記に50万円/戸を加算 加算分で150万円が上乗せ
子育てグリーン住宅支援事業(必須工事3種すべて) 60万円/戸 工事内容ごとに定額のため逆算しない
同(必須工事3種のうち2種) 40万円/戸 同上

制度は年度ごとに組み替えられ、予算の消化状況で受付が終わることもある。着工の時期と申請の時期の関係を、最新の公募要領で確かめる必要がある。移住にあわせて使える自治体側の支援は地方移住の支援制度まとめ|国・自治体・相談窓口・補助金を解説と地方移住の補助金はいくら?国・自治体の支援制度を完全まとめに整理してある。

耐震改修は税で戻る分がある

補助金とは別に、確定申告で取り戻せる仕組みがある。住宅耐震改修特別控除は、平成26年4月1日から令和10年12月31日までの間に、自己の居住の用に供する家屋について住宅耐震改修をした場合に、一定の金額をその年分の所得税額から控除できる制度である。

対象になる家屋には条件がある。国税庁は、昭和56年5月31日以前に建築されたものに限ると明記している。この日付は、いわゆる新耐震基準が適用される前という区切りにあたる。古民家はほぼ例外なくこちらに入るため、制度の設計上むしろ本命の対象である。

控除額は、住宅耐震改修に係る標準的な工事費用相当額の10パーセントで計算する。その基礎となる金額の限度は、令和4年1月1日以後に住宅耐震改修をした場合は250万円である。したがって控除される額は最大で25万円になる。工事にかけた実額そのままではなく、告示で定められた標準的な費用相当額を使って計算する点に注意がいる。

この控除は、増改築等に係る住宅借入金等特別控除の要件も満たしている場合には両方の適用を受けられる。一方、要耐震改修住宅を取得して耐震改修を行う場合の住宅借入金等特別控除とは、いずれか一つを選ぶことになる。どちらが有利かは借入額と工事費で変わるので、工事を契約する前に税務署か税理士に確かめておきたい。

2025年4月以降は手続きの費用も見込む

令和7年4月1日以降に工事に着手するものについて、小規模の木造建築物の大規模の修繕・大規模の模様替は新たに建築確認・検査を要することとなった。階数2以上または延べ床面積200平方メートル超の建築物では、増改築と大規模の修繕・模様替の両方が建築確認と完了検査の対象になる。2階建ての古民家で屋根や外周壁を全面的に触るなら、この枠に入る。

費用の面では二つの項目が増える。ひとつは建築確認の申請と完了検査にかかる手数料で、これは自治体や指定確認検査機関の定めによる。もうひとつは設計側の作業で、既存建築物の現況調査と、既存不適格の規定に緩和を適用する設計の手間である。国土交通省は建築士が行う現況調査の手順を示したガイドラインを公表しており、作成した調査報告書は確認申請図書に活用できるとしている。

時間も費用の一部になる。確認済証の交付を受けなければ工事に着手してはならないため、審査の期間がそのまま工期の前に積まれる。仮住まいを借りている場合は、その分の家賃が増える。着工日から数えるのではなく、申請を出す日から積み上げて資金計画を組むほうが現実に近い。

契約書に貼る印紙も忘れやすい。建設工事の請負に関する契約書は印紙税の軽減措置の対象で、契約金額が300万円を超え500万円以下なら1千円、500万円を超え1,000万円以下なら5千円、1,000万円を超え5,000万円以下なら1万円である。金額は小さいが、契約の当日に用意しておくものとして頭に入れておきたい。

物件そのものの状態を先に知りたいなら、空き家バンクとは?仕組み・利用法・メリット5つ・デメリット4つで登録情報の見方を確かめておくとよい。改修を前提に地域を選ぶなら、先にその土地で過ごしてみる手もある。FLASPOのような地域体験の入口は、そうした下見の機会にあたる。

よくある質問

全面改修の総額はいくら見ておけばよいですか

官公庁の資料に古民家の全面改修の総額を示したものはない。示せるのは制度側からの目盛りである。長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助率3分の1と上限額から逆算すると、性能向上を伴う改修として240万円から630万円あたりの幅が想定されていることが読み取れる。これを下限の見当として、現況調査の結果で上に振れる前提を置くのが安全である。

補助金と所得税の控除は両方使えますか

制度ごとに併用の条件が決められているため、一律には言えない。住宅耐震改修特別控除については、増改築等に係る住宅借入金等特別控除との併用が認められる一方、要耐震改修住宅を取得した場合の住宅借入金等特別控除とは選択適用になると国税庁が示している。補助金を受けた分を工事費から差し引いて計算する扱いになる制度もあるため、申請の前に併用の可否を確かめる。

補助金の申請は自分でできますか

長期優良住宅化リフォーム推進事業はインスペクションの実施と維持保全計画・履歴の作成が条件になっており、実務上は事業者登録をした施工者が申請の手続きを担う形になる。施主が単独で完結させる制度ではない。見積もりを依頼する段階で、その事業者が制度を扱った実績があるかを聞いておくと確実である。

耐震改修の控除は工事費の10パーセントがそのまま戻るのですか

計算に使うのは実際に支払った額ではなく、告示で定められた標準的な工事費用相当額である。その基礎となる金額の限度額は250万円で、控除額は最大25万円になる。実額が限度額を大きく超える工事であっても、控除の上限は動かない。

出典

国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書」/国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」/国土交通省「子育てグリーン住宅支援事業」/国税庁「No.1222 耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)」/国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」/国土交通省住宅局建築指導課「建築物の改修における建築基準法のポイント説明会」


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