ワーケーション向きの仕事と向かない仕事|職種別の適性を整理

ワーケーション向きの仕事と向かない仕事|職種別の適性を整理

制度を作った会社で、使う人が現れないという話をよく聞く。宿泊費の補助まで用意したのに申請がゼロ、という状態である。原因を福利厚生の設計に求めたくなるが、調査の数字はもっと手前を指している。旅先で働けるかどうかは、意欲や制度より前に、その人が抱えている業務の性質でほとんど決まってしまう。

企業がつまずく理由の一位は、意識ではなく業務だった

観光庁が令和4年3月に公表した「新たな旅のスタイル」に関する実態調査報告書では、導入にあたっての課題を企業に尋ねている。最も多かった回答は「業務としてワーケーションが向いていない」で61.7%。次いで「ワークと休暇の区別が難しい」が43.2%、「運用できる部署や従業員が限定的になり、社内で不公平感が生じる」が42.1%と続く。

一位と三位は、言い方を変えれば同じことを指している。社内の全員が同じ条件で働いているわけではないので、旅先に持ち出せる業務を抱えた人と、そうでない人が必ず生まれる。制度を一律に設計すると、使える人だけが使う仕組みになり、使えない側から不満が出る。

従業員側の回答も同じ方向を向いている。同報告書では、取り組んでいない理由として「自分の仕事はテレワークできない」が54.2%を占め、「テレワークは可能だが勤務時間に制約がある」が16.3%となっている。半数超が、そもそも持ち出せない業務だと答えている。

この構図を踏まえると、社内で広げる順番が見えてくる。全社に告知する前に、どの部署のどの業務なら成立するかを洗い出す。数字の全体像は観光庁の実態調査報告書にまとまっている。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

向き不向きを分けるのは四つの軸

職種名で線を引こうとすると、同じ営業職でも成立する人としない人が出てきて破綻する。見るべきは肩書きではなく、その業務が満たしている条件のほうだ。判断の軸は四つに整理できる。

軸 成立しやすい業務 成立しにくい業務
成果の測り方 提出物や到達点で評価される その場にいた時間で評価される
場所への依存 手元の端末だけで完結する 設備や在庫、対面の相手が必要
応答の速さ 半日以内の返信で回る 数分単位の一次対応を求められる
情報の扱い 持ち出しが認められた範囲で足りる 社内限定の環境でしか触れない

四つのうち一つでも欠けると難しくなるが、決定的なのは二番目である。工場の生産ラインや対面の接客のように、物理的にその場所にいることが仕事の中身そのものになっている業務は、切り出しようがない。逆に一番目と三番目は、運用の工夫で動かせる余地がある。

四番目については、自社がどこまで持ち出しを認めているかを先に確認しておきたい。同じ資料でも、閲覧だけなら可、編集は不可という線引きがある会社は珍しくない。個人としての適性の見立てはテレワークとの違いから向き不向きを整理した記事も合わせて読むと立体的になる。

職種で見ると、境目はどこに来るか

四つの軸を実際の職種に当ててみる。最も相性がよいのは、開発や設計、執筆や編集、デザインといった、成果物が明確で端末上で完結する仕事だ。総務省の令和7年通信利用動向調査でも、産業別のテレワーク導入率は情報通信業が最も高い水準にある。基盤が整っている業界ほど、旅先への持ち出しも現実的になる。

次の層に来るのが、企画や調査、経理や人事の一部といった内部業務である。これらは端末で完結する作業と、押印や原本確認のように社内でしかできない作業が混ざっている。混在している場合は、月のうち特定の週に社内業務を寄せておくと、残りの週が持ち出し可能になる。

難しいのは、応答の速さを求められる職種だ。障害対応の当番や、電話の一次受けを担う窓口業務は、数分単位の反応が仕事の価値そのものになっている。この場合は当番を外した期間に滞在を合わせるという形しか取りようがない。

成立しないのは、場所への依存が外せない仕事である。医療や介護の現場、建設の施工管理、店舗の販売、車両の運行などが該当する。ここに一律の制度を当てても使われないため、別の形の休暇制度で埋めるほうが筋が通る。エンジニア職の働き方の幅はプログラミングとリモートワークの関係をまとめた記事が具体的だ。

向かない仕事でも、切り出せる業務は残っている

職種単位で不可と判断すると、そこで話が終わってしまう。ところが業務を分解すると、例外が見つかることがある。店舗の販売職であっても、来期の品揃えを考える作業や、研修資料を作る作業は端末上で完結する。

この発想に近いのが、観光庁の整理でいう合宿型である。日常業務を旅先に持ち込むのではなく、普段まとまった時間が取れない検討作業のために場所を変える。生産ラインを止められない現場でも、企画のための数日なら確保できる余地がある。

切り出すときの目安は、その作業が締切までに数日の幅を持っていて、他人の即時の応答を必要としないかどうかだ。この二つを満たす作業は、意外なほど多くの職種に残っている。棚卸しをしてみると、部署ごとに二つか三つは見つかる。

なお、切り出した作業を旅先で進めるなら、成果の形をあらかじめ決めておくとよい。何を持ち帰るかが曖昧なままだと、滞在の評価が印象論になり、次回の承認が通りにくくなる。地域に軸足を置いた働き方の事例はFLASPOでも紹介している。

勤務時間と労務の制約は、先に畳んでおく

業務の性質が合っていても、時間の扱いが決まっていないと止まる。先ほどの調査で、テレワークは可能だが勤務時間に制約があると答えた人が16.3%いたのは、この部分である。

企業側が挙げた課題にも同じ論点が並ぶ。「労災適用の判断が難しい」が33.1%、「社員の勤怠管理およびそれに伴う給与計算が難しい」が27.4%、「情報漏洩の可能性がある」が33.5%となっている。いずれも業務の適性とは別に、運用側で決めておく事柄だ。

実務としては、滞在中の勤務時間帯を申請時に確定させ、その時間内は自宅勤務と同じ扱いにする形が扱いやすい。移動日を勤務にするのか休暇にするのかも、あらかじめ一方に決めておく。ここを個別判断に委ねると、申請のたびに上司と経理で解釈が分かれる。

通信の安全については、総務省のテレワークセキュリティガイドライン第5版が実現方式を7つに整理しており、自社がどの方式に当たるかで必要な対策が変わる。方式の詳細は総務省のガイドライン本文で確認できる。

よくある質問

上司にどう説明すれば通りやすいか。滞在中に進める作業と、持ち帰る成果物を具体的に示すことだ。働く場所を変えたいという言い方では判断材料にならないが、この期間にこの資料を仕上げると示せば、承認する側も判断しやすい。

制度がない会社ではどうするか。まず在宅勤務の規程を読み、勤務場所の指定がどう書かれているかを確かめる。自宅に限定されていなければ、届け出の運用だけで足りる場合もある。限定されていれば、規程の改定を人事に相談する話になる。

オンライン会議が多い職種でも成立するか。成立する。必要なのは静かに話せる場所と安定した回線で、そこが確保できれば会議の本数自体は問題になりにくい。ただし時差のある海外を選ぶと、深夜の会議が続いて滞在の意味が薄れる。

フリーランスの場合に注意することは何か。労務の論点が消える代わりに、費用と納期の管理が自分に寄る。移動と宿泊の支出を経費として説明できる形に整え、納期には移動日の分を含めた余裕を持たせておきたい。

部署によって使える人が偏るのは避けられないか。完全には避けられない。ただし持ち出せない職種には別の休暇制度を割り当て、制度全体として釣り合いを取る設計にすれば、不公平感は和らぐ。旅先勤務だけを単独の制度として掲げると、偏りがそのまま見えてしまう。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。