スマート農業とは|データ活用4割の到達点と2024年に変わった前提

スマート農業とは|データ活用4割の到達点と2024年に変わった前提

定義そのものは、意外と素っ気ない

田んぼの上をドローンが飛ぶ映像を見たことがあるだろうか。あの絵は分かりやすい半面、話を狭くもする。国が使っている言い方は、もっと幅の広いものだ。

農林水産省は、ロボット、人工知能、モノのインターネットといった先端技術を活用する農業をスマート農業と呼んでいる。特定の機械を指す言葉ではなく、技術の力で作業を省いたり、勘に頼っていた判断を数字に置き換えたりする取り組み全般を束ねる名前である。

この定義のゆるさには理由がある。自動操舵のトラクターも、ハウスの温度を記録する小さなセンサーも、出荷記録を表計算に残す習慣も、目的は同じところに行き着くからだ。誰がやっても同じ結果になるように、作業を手順と数値に落とす。

背景にあるのは人の減り方だ。2025年農林業センサスによれば、基幹的農業従事者は103万6千人で、5年前から24.0パーセント減った。平均年齢は67.7歳である。同じ面積を、より少ない人数で扱わなければならない。

つまりこれは、儲けを増やすための上積みの話というより、人が減っても生産を保つための土台の話に近い。華やかな機械の写真より、この前提を先に置いたほうが理解が進む。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

データを使う経営体は、5年で4割に届いた

普及の度合いは、印象ではなく統計で測れる。センサスは、データを活用した農業を行っているかどうかを経営体ごとに聞いている。

2025年の結果では、データを活用している農業経営体の割合は40.0パーセント、実数で33万1千経営体にのぼった。2020年は17.0パーセントだったから、5年で23.0ポイント上がった計算になる。伸び方としては急である。

内訳を見ると、個人経営体が38.8パーセント、団体経営体が63.0パーセントで、組織で営農している側が先行している。2020年はそれぞれ15.9パーセントと45.6パーセントだったので、どちらも伸びてはいるが、差は開いたままだ。

区分 2020年 2025年 変化
農業経営体の全体 17.0% 40.0%(33万1千経営体) 23.0ポイント増
個人経営体 15.9% 38.8% 22.9ポイント増
団体経営体 45.6% 63.0% 17.4ポイント増

この差は規模とも結びついている。団体経営体は雇用を抱えている分、作業の指示や引き継ぎを口頭では回せない。記録を残すこと自体が経営の必要に組み込まれており、そこにデータ活用が自然に接続する。個人経営体の場合は、記録を取る手間が誰かの持ち出しになりやすい。

機械の側でも動きは早い。農業用ドローンは2019年の約4,000台から、2024年には約4万台へと5年でおよそ10倍に増えた。散布の受託サービスが各地に生まれ、自分で買わなくても使える形が整ってきたことが大きい。

2024年に、法律の側の前提が動いた

普及を後押しする枠組みも、ここ数年で入れ替わっている。転機は2024年だ。

農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律が同年6月14日に公布され、10月1日に施行された。スマート農業技術活用促進法と略されるこの法律は、技術を使う側と作る側の両方に認定の仕組みを置いた点に特徴がある。

一つは生産方式革新実施計画で、農業者が先端技術を前提に作業の組み立てを変えるときに申請する。もう一つが開発供給実施計画で、機械メーカーやソフトウェア事業者が現場向けの技術を開発し供給する計画を出す。認定を受けた者は、税制上の特例や日本政策金融公庫による長期低利の融資といった支援を受けられる。法令本文でも、この二つの計画が柱として並んでいる。

注目したいのは、作り手側にも認定を用意した点だ。現場の要望が小さく散らばっていると、企業は開発費を回収しづらい。供給側を制度で支えることで、使いたい技術が市場に現れるところから手を入れようという設計になっている。

言い換えれば、国の関心は補助金で機械を買わせることから、技術が売買される市場そのものを太らせることへと移っている。導入を考える経営体にとっては、選べる道具が増えるかどうかという形で影響が返ってくる。

4割の中身は、まだ入口寄りである

4割という数字を見て、自動化された農場が全国に広がっている姿を思い浮かべると、現場との落差に驚くことになる。中身を開くと、話はもっと手前にある。

活用されているデータとして最も多いのは気象情報で、半数を超える経営体が使っている。天気予報や気温の記録を作業判断に取り入れる、という水準だ。一方で、圃場にセンサーを置いたり機器から自動で記録を取ったりしている経営体は、数パーセントの水準にとどまる。

この差は、費用と手間の差でもある。気象データは無料で手に入り、明日の作業を決めるのにすぐ使える。センサーは買って設置して電源と通信を確保し、出てきた数字を読む時間も要る。効果が出るまでの距離が長い。

それでも、入口に立った経営体が4割いるという事実は軽くない。記録を取る習慣がある経営体は、次の一手を検討する土台を持っている。逆に紙の日誌すら残っていなければ、どの工程に時間がかかっているかを説明することすらできない。

導入の順番としては、まず作業時間と収量を記録に残し、次に判断の根拠になる外部データを足し、その後で自動化の機器を検討する。この順序を飛ばして高価な機器から入ると、使いこなせないまま倉庫で眠らせることになりやすい。

買わずに使う、という現実的な入り方

費用の壁は依然として高い。自動操舵の装置も、選果を助ける画像認識の仕組みも、小規模な経営体が単独で抱えるには重い買い物だ。だから所有以外の形が広がってきた。

一つはリースや共同利用である。地域の複数の経営体で一台を回す、あるいは作業そのものを請け負う事業者に頼む。ドローンの散布が急に広がったのは、機体を買う人より、飛ばしてもらう人が増えたからでもある。

もう一つは、人を通じた導入だ。機器の設定やデータの読み方は、年配の生産者ほど手が止まりやすい。ここは若い世代や外部人材が入りやすい隙間でもある。情報技術で地域の課題を解く取り組みは各地にあり、農業もその対象に入ってきた。

働き方の側から見れば、産地に人が関わる理由が一つ増えたということでもある。現場に住み込まなくても、記録の整理や機器の保守で関わる形が成り立つ。地方で働く選択肢を考えるとき、この領域は見落とされがちだ。

実際に手を動かす前に、季節を通して現場を見ておくと判断がぶれない。農業体験から入るのは遠回りに見えて堅実だし、産地と若い世代をつなぐFLASPOのような窓口を使えば、受け入れ側との距離も縮めやすい。

よくある質問

導入を検討する段階で迷いやすい点を、四つ整理しておく。

Q. 小規模な経営でも意味がありますか。

A. ある。ただし高額な機器から入る必要はない。作業時間と収量の記録を数か月続けるだけでも、どの工程が利益を削っているかは見えてくる。統計で最も使われているのが気象情報だという事実も、入口が軽くてよいことを示している。

Q. 補助金がないと導入できませんか。

A. 認定を受ければ税制や融資の特例は使えるが、前提として機器を買う必要がない道もある。リース、共同利用、作業受託を先に検討し、所有が有利になる規模かどうかを見極めてから制度を使うほうが順序として安全だ。

Q. スマート農業を入れれば人手不足は解決しますか。

A. 解決はしない。機械は一人あたりが扱える面積を広げるが、人を呼び込む力は持たない。基幹的農業従事者が5年で24.0パーセント減った現実に対しては、省力化と、来た人が続けられる条件づくりの両方が要る。

Q. どこから情報を集めればよいですか。

A. 農林水産省のスマート農業のページに、制度の解説と実証事業の結果が集約されている。実証で何が改善し何が改善しなかったかまで載っているので、売り文句だけを見て判断するより手堅い。

Q. 団体経営体のほうが導入率が高いのはなぜですか。

A. 人を雇って組織で動かしている以上、作業の指示と引き継ぎを言葉と数字で行う必要があるからだ。家族だけなら目配せで済むことも、従業員がいれば記録に残す。導入の動機が省力化だけでなく、意思疎通の必要から生まれている点が個人経営体との違いになる。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。