東京の通勤電車は相変わらず混んでいるのに、帰省すると駅前の店が一軒また一軒と閉まっている。同じ国で同じ年に起きていることなのに、人口の減り方はこれほど違う。少子高齢化は全国一律に進む現象ではなく、地域ごとに速度も形も変わる。地方で何がどこまで進んでいるのかを、公的な統計で一つずつ確かめていきたい。
減り方の速度は、地域によってまるで違う
国立社会保障・人口問題研究所の日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)は、2020年の国勢調査を基準に2050年までの人口を市区町村ごとに割り出している。全国1,728市区町村のうち、この30年間で人口が減るのは1,651。割合にすれば95パーセントを超え、増えるほうが例外という状態になる。
減り方には偏りがある。非大都市圏に属し、人口規模の小さい市町村ほど減少率が高く、その大半は出生数が死亡数を下回ることによる自然減だとされている。転出で人が抜けているというより、次の世代が生まれてこない。0〜14歳人口の割合が2020年より下がる市区町村は1,659で、全体の96.0パーセントにのぼる。
民間の有識者でつくる人口戦略会議は2024年4月、この推計をもとに744の自治体を「消滅可能性自治体」と位置づけた。20〜39歳の女性人口が2020年から2050年までに半分以下になる市区町村、という定義で、全体の4割を超える。子どもを産む年代の女性が半減すれば、その後の出生数はさらに縮む。減少が次の減少を呼ぶ構造が、地域の側に埋め込まれている。地域ごとの深刻さの差については地方の人口減少はどのくらい深刻かでも扱っている。
高齢化率は、都道府県の間で10ポイント以上開いている
全国の高齢化率は、内閣府の令和7年版高齢社会白書によれば令和6年10月1日現在で29.3パーセント。ただしこれは平均値であって、どこも同じ水準というわけではない。最も高い秋田県は39.5パーセントで、全国平均を10ポイント以上引き離している。
| 区分 | 高齢化率(令和6年) | 2050年の見通し |
|---|---|---|
| 全国 | 29.3% | 37%台へ上昇 |
| 最も高い秋田県 | 39.5% | 49.9% |
| 都道府県間の開き | 10ポイント超 | すべての都道府県で上昇 |
白書は、今後すべての都道府県で高齢化率が上がると見込んでいる。秋田県は2050年に49.9パーセント、県民のほぼ二人に一人が65歳以上という計算になる。ここで注意したいのは、率の上昇が高齢者の増加だけで起きるわけではないことだ。若い世代が進学や就職で地域を出て分母の総人口が縮めば、高齢者の数が横ばいでも率は上がる。
だからこそ率と実数は分けて見たほうがいい。大都市圏では高齢者の実数が急に増え、医療機関や介護事業所の受け皿が追いつかない。対して地方には、率こそ高いものの高齢者数そのものが減り始めている地域がある。利用者が減れば事業所は採算に乗らず、撤退すればサービスの空白が生まれる。同じ言葉で語られていても、都市と地方で困り方はほとんど逆を向いている。
過疎地域は、すでに市町村の半数を超えた
制度の側から地方の縮小を眺めると、輪郭がもう少しはっきりする。過疎地域は、人口の減少率と財政力について法律が定めた基準に当てはまる市町村を国が指定する仕組みだ。2020年の国勢調査を反映した総務省の集計では、令和4年4月1日時点の指定は885市町村。全国1,718市町村の51.5パーセントにあたり、1970年に制度が始まって以来はじめて半数を超えた。
885の内訳は、区域全体が対象となる過疎市町村が713、みなし過疎が14、合併前の旧市町村単位で対象となる一部過疎が158。市町村合併で線引きが複雑になった分、制度も細かく分かれている。指定の意味や基準は過疎化とは何かを整理した記事にまとめた。
見落とされがちなのは、人口と面積のねじれである。この885市町村に住むのは約1,165万人で全国の9.2パーセント。ところが面積は全国の63.2パーセントを占める。人口の1割に満たない人たちが、国土のおよそ3分の2を日々管理している計算になる。森林の手入れ、農地の維持、水源の見回り、道路の除雪。人口が減るときに失われるのは住民だけではなく、そうした国土を支える手そのものだ。
集落の単位まで下りると、何が消えているかが見える
市町村より小さな単位で確かめた調査もある。総務省と国土交通省は2024年4月時点を基準に、過疎地域等の集落の現況を調べて結果を公表した。対象となった集落は78,485、暮らす人は1,432万9千人、高齢化率は40.2パーセントだった。全国平均より10ポイント以上高い。
5年前の調査と比較できる市町村で見ると、集落の数は694減っている。そのうち296は、住む人がいなくなったことによる消滅だ。前回の調査で「10年以内に無居住化する」と見込まれた499集落のうち、5年のあいだに実際に無人となったのは63。予測より歩みは緩やかだが、止まってはいない。1集落あたりの平均人口は194.8人から180.2人へ下がった。
この十数人の差が、暮らしには具体的に効いてくる。買い物先、路線バス、診療所、草刈りや水路の管理といった共同作業は、一定の人数がそろって初めて回る仕組みだ。人口が半分になれば不便さが倍になるという直線的な話ではなく、ある水準を下回った時点で機能そのものが止まる。限界集落という言葉の定義が65歳以上の割合50パーセントという線で引かれているのも、共同体の維持がそのあたりで難しくなるという経験則にもとづいている。
打ち手は「奪い合い」から「関わりを増やす」へ移りつつある
2025年6月13日に閣議決定された地方創生2.0基本構想は、それまでの10年をかなり率直に振り返っている。子育て支援や移住促進が中心となり、自治体間での人口の奪い合いにつながった、という反省が文章に残された。全体の母数が減っている以上、移住者を取り合っても全国の合計は1人も増えない。
新しい構想が前面に置いたのは「若者や女性にも選ばれる地域」という姿勢だ。地域に残る意味のある仕事をつくること、地域社会の側にある無意識の思い込みを見直すことが柱に挙がっている。人を呼ぶ前に、出ていく理由を減らすという順序への組み替えである。
とはいえ東京圏への集中は続いている。2025年の住民基本台帳人口移動報告によれば、東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県の転入超過は12万3,534人。前年より1万2,309人減って4年ぶりに縮小したものの、流れの向きは変わっていない。東京都単独では6万5,219人の転入超過だった。
そこで注目されているのが、定住だけを目標にしない関わり方である。住民票を移さなくても、地域の仕事や行事に継続して加わる人を増やす。学生や社会人が一定期間だけ地域のプロジェクトに入る取り組みもこの流れに属する。FLASPOが各地で手がけている企画も、若い世代と地域を細く長くつなぐことを狙いにしている。移住という重い決断の手前に、いくつも段差を用意しておくという発想だ。
よくある質問
地方の人口減少は、移住者が増えれば止まりますか。個々の自治体では止められても、全国では止まらない。自然減が減少の主因である以上、移住は人の配置を変える手段であって総数を増やす手段ではないからだ。地方創生2.0が奪い合いへの反省から出発しているのも、この点を踏まえている。
高齢化率が高い地域ほど困っている、と考えてよいのでしょうか。率だけでは判断できない。率が高くても高齢者数が減っていれば介護や医療の需要は縮み、事業者の撤退という別の問題が出る。逆に大都市圏は率が低いまま実数が急増し、受け皿が足りなくなる。率と実数、そして今後の増減の向きを合わせて見る必要がある。
消滅可能性自治体に指定されると、その自治体は本当になくなるのですか。行政区域が自動的に消えるわけではない。20〜39歳の女性人口が30年で半減するという推計上の分類であって、決定した未来ではない。指定は警告として受け取るものだが、名指しされた側が投資や人材の面で不利になるという指摘もあり、数字の扱いには慎重さが要る。
学生のうちから地域に関われる方法はありますか。短期のインターンや地域プロジェクトへの参加、副業やリモートワークを通じた関与など、入り口は広がっている。いきなり移住を決めるより、何度か通って地域の人と顔見知りになるほうが、結果として長い関係になりやすい。
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