過疎化と少子高齢化はなぜ重なるのか|データで読む地域の人口構造

過疎化と少子高齢化はなぜ重なるのか|データで読む地域の人口構造

人口が減る町で、高齢化だけが先に進む

山あいの集落を歩くと、家は残っているのに表札の文字が薄くなっている。畑は手入れされているが、鍬を持っているのはたいてい七十代だ。人が減っていく地域で最初に目につくのは空いた家ではなく、そこに残っている人の年齢層が上にそろっていく光景だった。過疎化と少子高齢化は、言葉としては別のものを指している。前者は地域から人が流出し、生活や産業の基盤を保ちにくくなる状態を指す。後者は生まれる子どもが減り、高齢者の割合が上がる人口構造そのものの変化を指す。それでも地方の現場で、この二つが切り離して語られることはまずない。理由は単純で、人口が減る過程そのものが年齢層を選んで進むからである。進学や就職で地域を離れるのは十代後半から二十代が中心で、高齢者はその場に残る。減っていくのは若い層ばかりになり、残った人口の平均年齢は何もしなくても上がっていく。全国の合計で眺めれば少子高齢化はなだらかな曲線に見えるが、市町村の単位に降りると階段状の急な変化になる。同じ「高齢化率が上がった」という一文でも、全国の数字と過疎地域の数字では中身がまるで違う。詳しい定義は過疎化とは?総務省の定義・原因・問題・成功事例で整理している。

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数字で並べると、差は十ポイントを超える

感覚だけで語ると話が大きくなりすぎる。総務省は毎年「過疎対策の現況」として、過疎地域と全国を並べた集計を公表している。それによると令和5年4月1日時点で、過疎地域の要件に該当する過疎関係市町村は885団体あった。全国の市町村の51.5パーセントにあたり、数のうえではすでに半数を超えている。ところが、そこに住む人は全国人口の9.3パーセントにすぎない。一方で面積は国土の63.2パーセントを占める。国土のおよそ三分の二を、一割に満たない人口で支えている構図が、この三つの割合に表れている。年齢構成の差はさらにはっきりしている。令和2年国勢調査をもとにした集計では、過疎地域で65歳以上が占める割合は39.7パーセント、全国では28.0パーセントだった。その開きは11.7ポイントある。五人に二人が高齢者という地域が、市町村の数では半分を占めている。全国平均の高齢化率だけを見ていると、この偏りはまったく見えてこない。

項目 過疎地域 全国に対する位置
過疎関係市町村数 885団体 全市町村の51.5%
人口 約1,167万人 全国人口の9.3%
面積 約23.9万平方キロメートル 国土の63.2%
65歳以上が占める割合 39.7% 全国は28.0%(差は11.7ポイント)

出典:総務省「令和5年度版 過疎対策の現況(概要版)」(市町村数・人口・面積は令和5年4月1日時点、年齢構成は令和2年国勢調査による)。

若者が出ていくと、出生数は二段構えで減る

高齢化率が上がる原因は、高齢者が増えることだけではない。割合を決める分母、つまり若い世代が抜けても数字は上がる。地方で起きているのは主にこちらだ。しかも若年層の流出は、その時点の人口を削って終わりにはならない。二十代の女性が地域を離れれば、十年後にその人が産んだかもしれない子どもも、この地域には生まれない。減少が次の世代の出生数を削り、それがさらに次の減少につながる。二段構えと呼ばれるのはこの連鎖のことである。全国の数字を見ても、出生の減り方は年々きつくなっている。厚生労働省の人口動態統計によれば、2024年の出生数は68万6,061人で、前年より4万1,227人少なかった。統計を取り始めて以来はじめて70万人を割り込んでいる。合計特殊出生率は1.15で、こちらも過去最低を更新した。同じ年の死亡数は160万5,378人と過去最多になり、差し引きの自然減は90万人を超える規模である。全国でこれだけの落ち込みが起きているのだから、若年層をあらかじめ欠いている地域で出生数だけが伸びると考える理由は乏しい。背景は少子化とは?出生率1.15の衝撃と若者世代が知るべき影響・対策も参考になる。

出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」。

割合が四割に近づくと、自治体の仕事の中身が変わる

人口構成の変化は、統計表の中だけで完結しない。高齢者の割合が四割に近づくと、自治体が抱える仕事の種類そのものが変わってくる。介護や見守りの需要は膨らむのに、それを担う現役世代と税収は細っていく。除雪、水道管の更新、橋の点検、公共交通の維持といった、住む人が減っても量の減らない仕事は残り続ける。国土の三分の二という広さは、少ない人数で保つにはあまりに広い。路線バスの減便や商店の撤退が「少し不便になった」で済まず、買い物や通院ができるかどうかに直結するのも、代わりの移動手段を持たない層の比率が高いからだ。加えて、地域の行事や消防団、用水路の共同管理といった住民自治の仕組みは、一定の人数と体力があることを前提に組み立てられてきた。担い手の年齢が上がりきると、仕組みのほうが先に立ち行かなくなる。過疎化と少子高齢化が重なるとは、人が減ることと、人が減っても減らない負担が残ることが、同じ場所で同時に進む状態を指している。

どこから手を入れれば流れは変えられるのか

では打つ手はあるのか。出生数を短い期間で反転させるのは、率直に言って難しい。国全体の出生率が下がり続けている以上、一つの市町村の施策だけで大きな流れを変えるのは現実的ではない。比較的手を入れやすいのは社会減のほう、つまり出ていく人と入ってくる人の差である。移住支援金や住まいの確保はその代表だが、定住だけを目標に置くと対象がどうしても狭くなる。近年は、生活の拠点を移さないまま地域と関わり続ける人を増やす考え方が広がってきた。副業、短期滞在、特産品の購入、祭りの手伝い。関わり方に幅を持たせておけば、担い手の年齢層も自然と分散する。学生や二十代が地域の現場に入る機会をつくるFLASPOのような取り組みも、この流れのなかに位置づけられる。どの手を選ぶにせよ、出発点は自分の地域の数字を確かめることだ。全国平均ではなく市町村単位の年齢構成を開くと、優先すべき順番は変わってくる。地域全体の人口動向は日本の人口減少はなぜ起きる?若者世代への影響と対策でも扱っている。

よくある質問

過疎化と少子高齢化は同じ意味ですか。
別の概念である。過疎化は地域から人が流出して社会機能を保ちにくくなる状態を指し、少子高齢化は出生の減少と高齢者比率の上昇という人口構造の変化を指す。ただし地方では、流出するのが主に若年層であるため、両者はほぼ同時に進む。

過疎地域の高齢化率はどこで確認できますか。
総務省が公表している「過疎対策の現況」に、過疎地域と全国を並べた年齢構成の集計が載っている。令和2年国勢調査に基づく数値では、過疎地域の65歳以上の割合は39.7パーセントだった。

高齢化率が高い地域は、これから必ず衰退するのですか。
そう決まってはいない。高齢化率は現在の年齢構成を示す指標であって、将来を確定させるものではない。社会増減は転入と転出の差で動くため、働く場や住まいの条件が変われば向きが変わる余地は残る。

若い世代が地域に関わるには、移住しかないのですか。
移住は選択肢の一つにすぎない。短期の滞在、副業、オンラインでの手伝い、特産品の定期購入といった、住まいを移さずに続けられる関わり方は年々増えている。こうした層は関係人口と呼ばれ、総務省も地域づくりの担い手として位置づけている。定住を前提にしない分だけ参加の敷居が低く、学生や社会人一年目でも関われる点が実務上は大きい。

高齢化率と過疎地域の指定は連動していますか。
直接は連動していない。過疎地域の指定は人口の減少率と財政力の要件をもとに行われるもので、高齢化率そのものが指定の基準になっているわけではない。ただし人口減少が長く続いた地域ほど若年層を失っているため、結果として指定を受けた地域の高齢化率は高くなりやすい。

集落の消滅はどの程度現実的な話なのでしょうか。
全国のすべての集落が消えるという話ではないが、住民の大半が高齢者となり、共同作業や行事の維持が難しくなっている集落は各地にある。人口の絶対数よりも、その集落で次の十年を担える世代が何人いるかを見るほうが、状況を正しくつかみやすい。


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