一覧を開く前に、何が数えられているのかを確かめる
「過疎地域の都道府県別一覧」を探すと、資料によって数が食い違って見えることがある。原因は、過疎地域が自治体の自己申告ではなく、法律の要件で線を引いた区域だという点にある。根拠になっているのは過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和3年法律第19号)で、令和3年4月1日に施行された。ここで定める人口要件と財政力要件の両方に当てはまる市町村の区域が、過疎地域として告示される。人口要件はひとつではない。昭和50年から平成27年までの人口減少率が28パーセント以上という基準のほか、財政力指数が0.40以下であれば減少率23パーセント以上でよく、減少率23パーセント以上で65歳以上の割合が35パーセント以上、あるいは15歳以上30歳未満の割合が11パーセント以下という組み合わせでも該当する。減っている速さと、残った人口の年齢のかたよりと、自治体の財政体力を掛け合わせて判定する仕組みだと考えるとわかりやすい。令和4年4月1日時点の過疎関係市町村は885で、全市町村の51.5パーセントにあたる。住んでいる人は全国のおよそ9パーセントにすぎないが、面積では国土のおよそ63パーセントを占める。
出典:総務省「過疎対策」、総務省「過疎対策の地域指定の要件について」。
同じ「過疎」でも、指定のされ方が三通りある
一覧を都道府県別に眺めるときにつまずきやすいのが、市町村の数え方だ。市の全域が過疎地域になっている場合もあれば、平成の大合併で編入された旧町村の区域だけが対象という場合もあり、どちらも一覧には一行として並ぶ。区分は三つある。全域が指定されるものを全部過疎、合併前に過疎地域だった旧市町村の区域だけが過疎地域とみなされるものを一部過疎、合併後の市町村が単独では要件に届かないのに全体が過疎地域とみなされるものをみなし過疎と呼ぶ。令和4年4月1日時点の内訳は次のとおりで、三つを足すと885になる。なお、前の法律では過疎地域だったが新しい要件には当てはまらなくなった団体が41あり、卒業団体として経過措置の対象に置かれている。一覧の団体数だけを見て地域の状況を判断すると、区域の広がりを取り違える。
| 区分 | 団体数 | 指定のされ方 |
|---|---|---|
| 全部過疎 | 713 | 市町村の全域が過疎地域 |
| 一部過疎 | 158 | 合併前に過疎地域だった旧市町村の区域のみが対象 |
| みなし過疎 | 14 | 合併後の市町村全体が過疎地域とみなされる |
| 合計 | 885 | 全市町村の51.5パーセント |
数値は令和4年4月1日現在。出典:総務省自治行政局過疎対策室「過疎関係市町村都道府県別分布図」。
地図を塗ると、どこが濃くなるか
都道府県別に並べたとき、群を抜いて多いのは北海道である。152団体が過疎関係で、その内訳は全部過疎145、一部過疎6、みなし過疎1。道内の市町村は179なので、8割を超える計算になる。島根県のように、県内のすべての市町村が過疎関係に含まれる県もある。全体としては、中国地方と四国、九州の南部、東北の日本海側、紀伊半島の内陸部といった、山地と海岸線に沿って集落が点在する地域で指定が連なる。逆に、埼玉県や千葉県のような大都市圏の県では指定が数えるほどしかない。ただし、まったく無いわけではない。首都圏でも、山間部や離島を抱える町村には指定がある。このため、一覧を「地方の話」として読むと実態を外す。ひとつの県の中で、県庁所在地から車で1時間ほどの町がすでに過疎地域になっている、という並びのほうが実際には多い。都道府県単位の集計は概観をつかむには便利だが、暮らしの感覚に近いのは市町村単位、さらに言えば旧市町村単位の地図のほうだ。
公式の一覧はどこに置かれているか
信頼できる表を手に入れたいなら、出どころは三層で考えるとよい。まず国のレベルでは、総務省の過疎対策のページに「過疎関係市町村都道府県別分布図」が置かれている。都道府県ごとの団体数と、全部・一部・みなしの内訳が一枚の表と地図にまとまった資料で、告示の内容がそのまま反映される。同じページから「過疎対策の現況」も辿れる。こちらは年度版の報告書で、人口や面積の推移、財政の状況、事業費の内訳まで載っているので、数の裏側にある動きを知りたいときに向く。次に都道府県のレベルでは、多くの県が地域振興の担当課のページに県内の過疎地域市町村一覧と過疎地域持続的発展方針を掲載している。旧市町村単位の区域がどこまでかを確かめられるのは、たいていこの層の資料だ。最後に、地図データとして扱いたい場合は、国土交通省の国土数値情報で過疎地域のポリゴンが配布されている。集計表ではなく面で見たいとき、たとえば人口分布や道路網と重ねたいときに使える。
この三層に加えて、自治体側の立場でまとめられた資料もある。全国過疎地域連盟は過疎関係市町村が加盟する団体で、県ごとの構成団体や過疎地域のデータを公開している。国の告示をそのまま写したものではないため一次資料としては総務省を優先すべきだが、どの町がどの県の過疎地域に含まれるかを名前で確かめたいときには早い。逆に、個人のブログや事業者のまとめ記事に載っている一覧は、更新が止まっていることが少なくない。数字を引用するなら、必ず時点が明記された資料まで遡っておきたい。
数を眺めるところから、関わるところへ
一覧が役に立つのは、課題の分布を知るときだけではない。過疎地域に指定されていることは、その市町村が使える制度が広がるという意味でもある。過疎対策事業債のように元利償還の多くが地方交付税で措置される起債の枠があり、施設の整備や交通の確保、移住定住の受け皿づくりに充てられている。移住を考えている側から見ても、住宅取得や就業に関する支援が手厚い自治体は過疎地域と重なりやすい。ここで注意したいのが、先に触れた一部過疎の扱いだ。同じ市の中でも、旧町村の区域に入るかどうかで対象になる制度が変わることがある。物件を決める前に、番地がどの区域に属するかを自治体の窓口で確かめておきたい。もうひとつ、一覧を「減っていく地域の名簿」としてだけ読まない見方もある。人口が少ないほど、ひとりが関わったときの手応えは大きくなる。学生や20代が地域と接点をつくる入口をまとめているFLASPOのような窓口を使えば、名簿の一行だった町が、来月訪ねる先に変わることもある。
あわせて読みたい:過疎地域とは?指定基準・移住のメリット・仕事・補助金まとめ、過疎化とは?総務省の定義・原因・問題・成功事例を20代向け解説、限界集落とは?定義・現状データ・再生事例を20代向けに解説。
よくある質問
一覧はどのくらいの頻度で更新されますか。
指定は官報で告示され、市町村合併や要件の見直しがあれば改められる。国勢調査の結果が出たあとに要件の判定材料が入れ替わるため、節目は調査の公表時期と重なりやすい。最新の状態を確かめたいときは、二次的にまとめられた記事ではなく総務省の資料に当たるのが確実だ。
過疎地域と限界集落は同じものですか。
別物である。限界集落は65歳以上が住民の半数以上を占める集落を指す言い方で、行政上の指定ではない。過疎地域は市町村またはその一部の区域に対する法律上の指定なので、過疎地域の中に限界集落ではない集落もあれば、過疎地域に指定されていない市にも高齢化の進んだ集落は存在する。
一部過疎の市に引っ越すと、支援は受けられますか。
住む区域による。旧町村の区域であれば対象になる制度が多いが、同じ市でも中心部は対象外ということが起こる。募集要項に「過疎地域に該当する区域に限る」と書かれている場合、判断の基準は住所であって市の名前ではない。
都道府県別の団体数だけで、地域の深刻さを比べられますか。
比べにくい。市町村の総数が県によって大きく違うためで、179市町村を抱える北海道の152と、19市町村の島根県の全域指定は、団体数では10倍近い差があっても意味するところは近い。県内の市町村数に対する割合、面積に占める割合、対象区域の人口といった別の軸を一緒に見ると、順位の印象はかなり変わる。
過疎関係市町村はこれからも増えますか。
要件が人口減少率と財政力で決まる以上、人口が減り続ける限り新たに該当する市町村は出てくる。一方で、合併や要件の改正で外れる団体もある。増減の両方が起きるため、前回の一覧との差分を見るほうが、総数の比較よりも地域の変化を捉えやすい。
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