一会場に300自治体が並ぶ二日間|イベント相談9万7,776件の中身

担当者の顔は、要項には書いていない

募集要項をいくら読み込んでも、その町の担当者がどんな人かは分からない。移住や地域おこし協力隊を考える人が最初にぶつかるのはそこで、現地まで行くには旅費も休みも要る。そこを縮めるために置かれているのが、自治体が一会場に集まる大規模なフェアである。

内閣府の地方創生サイトが取材した回の様子が移住のための交流イベント お気に入りの地域の見つけ方に残っている。一般社団法人移住・交流推進機構などが主催する「JOIN 移住・交流&地域おこしフェア」で、会場は東京ビッグサイト、12月7日と8日の2日間。テーマは「ここからはじまる地域とのつながり」で、全国から約300の自治体が出展し、3,358人が来場した。

単純に割れば1自治体あたり11人ほどになる。人気の県には行列ができ、聞いたことのない町のブースは空いている時間帯があるということでもある。混む時間を外せば、担当者とかなり長く話せる。

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ブースは役割ごとに分かれている

会場の中はひとつながりではない。来場者の目的別にいくつかの区画が設けられていて、聞ける内容が違う。

最も大きいのが「移住・交流相談ブース」で、この回はのべ約280の自治体が出展した。地域の様子、住まい、仕事、子育ての環境といった暮らしの話を、担当者に直接ぶつける場所である。そのほかに「地域おこし協力隊募集ブース」が置かれ、任期付きで地域に入る制度の募集が紹介される。さらに、ワーケーションやふるさと納税を扱う「関係人口ブース」と、地域活性化に取り組む会社のサービスを紹介する「企業ブース」が並ぶ。

この回は内閣府も「いいかも地方暮らし」ブースを初めて出し、移住支援金の案内や移住者インタビューの紹介、冊子「移住のてびき」の配布を行っている。制度の説明を国の担当に、現場の実感を自治体の担当に、と聞き分けられる配置になっていた。

イベントで受けた相談は年に9万7,776件

こうした催しが全国でどれだけ開かれているかは、総務省の調査で分かる。令和7年11月14日に公表された令和6年度における移住相談に関する調査結果は、各都道府県と市町村の移住相談窓口等が受け付けた件数を集計したものである。

令和6年度の合計は433,810件で、調査を始めた平成27年度以降で最も多かった。内訳は常設の窓口が336,034件、イベントが97,776件。前年度の408,435件から25,375件増えたが、増加分の内訳を見ると窓口が6,258件、イベントが19,117件で、伸びの大半はイベント側から出ている。

相談件数には面談だけでなく電話やメールも含まれる。それでも、年間10万件近くが催しの場で発生している計算になる。都道府県別にイベントでの相談件数を見ると、北海道が8,743件で最も多く、長野県7,217件、群馬県5,038件、高知県4,228件、福島県3,613件と続く。

窓口とイベントを合わせた総数で並べると順位は入れ替わる。最も多いのは長野県の25,891件で、福島県20,505件、宮崎県19,245件が続く。北海道は18,813件、兵庫県16,745件である。イベントで強い県と窓口で強い県があり、たとえば宮崎県は19,245件のうち17,900件が窓口で、イベントは1,345件にとどまる。会いに行く場所を探すときは、合計ではなくイベントの列を見たほうが実情に合う。

催しの数字は、外の事情で大きく揺れる

窓口とイベントを分けて時系列に並べると、性格の違いが見えてくる。

年度 常設の窓口 イベント 合計
平成27年度 108,253件 33,430件 141,683件
令和元年度 242,118件 73,626件 315,744件
令和2年度 262,206件 28,876件 291,082件
令和3年度 285,448件 38,483件 323,931件
令和5年度 329,776件 78,659件 408,435件
令和6年度 336,034件 97,776件 433,810件
総務省「令和6年度における移住相談に関する調査結果」より作成

令和2年度に注目したい。窓口は前年の242,118件から262,206件へ増えているのに、イベントは73,626件から28,876件へ落ちている。会場に人を集める形式だけが止まったからで、相談したい人がいなくなったわけではなかった。そこから4年かけて97,776件まで戻り、平成30年度の76,220件も超えた。

この揺れ方は、催しに行けるかどうかが自分の都合だけで決まらないことを示している。フェアを軸に計画を立てるなら、開催が流れたときに何で代えるかも先に決めておきたい。

常設の窓口は179か所、その多くが同じ住所にある

代わりになるのが常設の相談窓口である。総務省が同じ調査でまとめた都道府県が設置している常設の移住相談窓口の一覧によれば、その数は令和7年3月31日現在で全国179か所あり、前年度と同数だった。

置き場所に特徴がある。179か所のうち首都圏内に69か所、近畿圏内に28か所、中京圏内に9か所が置かれ、残る73か所がそれ以外である。つまり半数以上が、移住先ではなく移住者が今いる都市圏に構えられている。一覧を追っていくと、東京都千代田区有楽町の東京交通会館8階という同じ住所が何度も現れる。ここにふるさと回帰支援センターが入っており、多くの県がその中に相談窓口を置いているためである。

窓口の数は県によってかなり違う。最も多いのは福島県の12か所で、徳島県が8か所、岩手県・福井県・兵庫県が7か所と続く。反対に茨城県、東京都、神奈川県、大阪府は1か所ずつである。首都圏や関西に複数の拠点を構える県は、それだけ県外在住者との接点に予算を割いていることになる。

協力隊の募集に絞って考えるなら、受け入れ側の数も押さえておきたい。総務省の令和7年度の地域おこし協力隊の隊員数等についてによると、令和7年度に協力隊に取り組んだ自治体は1,187団体で、受入可能な1,461団体の約81%にあたる。残る2割弱は、今年度は募集していない。自治体の数だけ選択肢があるわけではないという前提は、地域おこし協力隊の地域別ガイドで見た分布とあわせて読むと分かりやすい。

よくある質問

【フェアに行くとき、何を準備していけばよいか】聞きたいことを三つに絞っておくとよい。住まいの確保、収入の見込み、冬や夏の生活のしづらさは、どの地域でも答えが具体的に返ってくる。希望条件を先に並べるより、困りそうなことを聞くほうが担当者の口は軽い。

【参加費はかかるのか】自治体や公的機関が関わる移住フェアは、来場者の参加費を取らない形が一般的である。ただし事前の申し込みを求める催しもあるため、告知ページで受付方法を確かめてから出向きたい。

【フェアに行かないと協力隊には応募できないのか】そのようなことはない。募集は各自治体が随時出しており、応募の窓口はそれぞれの自治体にある。フェアは、応募する前に担当者の人柄や地域の雰囲気を確かめる場と考えるのが実情に近い。

【移住を決めていない段階で相談してもよいか】総務省の集計は、面談・電話・メールを問わず相談として数えている。年間43万件という規模は、決めた人だけが相談しているのでは説明がつかない。迷っている段階の情報収集も含まれていると考えてよい。地域との関わり方を広く見渡したい人は、移住の現状を数字で確かめるや、学生と地域をつなぐ取り組みを扱うFLASPOの事例も合わせて見ておきたい。

【イベントでの相談と窓口での相談は、どちらが向いているか】比べる地域が決まっていないうちはイベントが向く。一度に多くの自治体と話せるためである。地域が絞れたあとは、担当者と継続してやりとりできる常設の窓口のほうが具体的な話に進みやすい。住まいや仕事の条件を詰める段階では、移住先の選び方で整理している判断軸が役に立つ。


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