総務省の名簿に郡上市は載っていない
郡上おどりで知られる町で協力隊として働けるのか。そう考えて総務省の資料を開くと、最初に戸惑うことになる。総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の隊員数等についてには、全国1,187の受入自治体が市町村名と隊員数まで並んでいる。岐阜県の欄は16自治体・58人。そこに郡上市の名前はない。
この一覧は特別交付税の措置実績をもとにした年度集計なので、その年度に隊員が在籍していなければ名前が出ない。つまり郡上市に受入れの経験がないという意味ではなく、令和7年度という一点では隊員が数えられなかったということである。実際に市の公式な計画を読むと、協力隊の記述は何度も出てくる。全国の隊員数は8,196人、受入可能な自治体1,461団体のうち約81%が取り組んでいる制度で、1自治体あたりの在籍はごく少人数という年もある。名簿に載るかどうかは、その年の募集と任期の切れ目に左右される。
市の計画に残された、隊員の実数と定住の結果
郡上市が令和3年度から令和7年度までを期間として定めた郡上市過疎地域持続的発展計画には、地域ごとの受入実績が具体的な人数で書き込まれている。八幡地域にはこれまで8名の隊員が派遣され、退任した7名のうち6名が定住した。市はこれを「担い手の確保に一定の成果を上げています」と評価している。大和地域では2名が派遣され、退任した1名が定住して地域の担い手になった。
受入れの主体が市の役所だけではないところも、この市の特徴である。八幡地域では口明方地域づくり協議会、川合東部地域づくり協議会、西和良まちづくり協議会といった地域づくり団体が協働団体として隊員を受け入れてきた。白鳥町の石徹白地区では石徹白地域づくり協議会が受入団体になり、自治会と協力して状態の良い空き家を借り上げ、軽微な改修をして移住希望者に貸し出している。平成27年から3組の入居に結びついたが、それでも地域の人口減は緩やかに続いていると計画は率直に書いている。和良地域は平成23年度から隊員による地域づくりに取り組み、和良鮎のブランディングと交流移住支援を柱に据えてきた。応募先を選ぶ段階でこの違いを確かめておくと、配属後に誰と働くのかが読める。
7つの地域で、減り方がこれだけ違う
郡上市は平成16年に7つの町村が合併して生まれた。面積は1,030.75平方キロメートルで岐阜県全体の約1割を占め、県内では高山市に次ぐ広さがある。市全体の人口は昭和25年の65,569人がピークで、昭和55年の52,690人から令和2年の38,997人へ、40年間で13,693人、26%減った。令和2年国勢調査の高齢者比率は37.5%、15歳から29歳までは3,578人で全体の9.2%にあたる。
ただし市内を一つの数字で語ると実態を見失う。計画は旧町村ごとに昭和55年と令和2年を並べており、40年の減少率には3倍近い開きがある。
| 地域 | 昭和55年 | 令和2年 | 40年の減少率 |
|---|---|---|---|
| 八幡 | 18,813人 | 12,532人 | 33.4% |
| 白鳥 | 12,648人 | 10,431人 | 17.5% |
| 大和 | 7,190人 | 6,096人 | 15.2% |
| 美並 | 5,586人 | 4,090人 | 26.8% |
| 高鷲 | 3,380人 | 2,866人 | 15.2% |
| 明宝 | 2,359人 | 1,446人 | 38.7% |
| 和良 | 2,714人 | 1,536人 | 43.4% |
最も減ったのは和良で43.4%、次が明宝の38.7%。いずれも計画が集落維持の困難を正面から書いている地域である。逆に大和と高鷲は15.2%にとどまる。大和は商業集積地と基幹道路があるため市内の他地域から移ってくる人が一定数あり、高鷲はスキー場をはじめ観光客が多く訪れる。同じ市の募集でも、配属先がどの地域かで課題の性質がまるで違ってくる。募集要項に地域名が書かれていたら、まずこの減少率を見ておきたい。地域おこし協力隊の地域別ガイドでは都道府県の単位で同じ見方を扱っている。
お金の条件は市ではなく国の措置で枠が決まる
報酬がいくらになるかは自治体が決めるが、その原資には国の枠がある。地域力創造グループの令和7年度新規・拡充施策についてによれば、令和7年度の特別交付税措置は隊員1人あたり550万円を上限とし、内訳は報償費等が350万円、その他活動経費が200万円。報償費等の上限は令和6年度の320万円から引き上げられた。このほか募集等に要する経費が1団体350万円、日々のサポートに要する経費が1団体200万円、任期2年目から任期終了翌年までに起業する人には1人100万円が上限として置かれている。
注意したいのは、350万円が受け取れる額ではなく措置の上限だという点である。実際の支給額は自治体が条件や任用形態に応じて決めるため、同じ制度のもとでも募集ごとにばらつく。地域おこし協力隊の給料はいくら?で手取りの考え方を確かめたうえで、郡上市の募集が出たときは報償費の額と住居の扱い、兼業の可否を要項で突き合わせるのが早い。国は令和8年度に全国で10,000人という目標を置いており、受入れの枠そのものは広がる方向にある。
郡上で割り当てられる仕事の、現実的な中身
計画の対策欄を読むと、隊員に期待されている仕事の輪郭が見えてくる。八幡では空き家と町家の活用が中心にある。八幡市街地では一般財団法人郡上八幡産業振興公社の「チームまちや」が、空き家になった町家を所有者から借り受けて改修し移住者へ貸し付けており、これまでに33棟を改修して令和3年3月末現在で60人の移住につながった。高鷲でも空き家の利活用を隊員や地域協議会と連携して進めることが明記され、別荘の空き家が一定数あるという独特の事情も書かれている。
和良では、地域づくり団体の和良おこし協議会が体験農園「田んぼオーナー」を年4回開き、都市部からの参加者を募って「古民家再生塾」という参加体験型のリフォーム塾も開催している。白鳥では隊員が市外在住者へ地域の情報を発信し、PRを通じて関係人口や移住につなげる役割を担う。石徹白では山村留学のような学びの場を関係人口の創出と組み合わせる方向が示された。明宝では特定地域づくり事業の実施に向けた調査研究が進められ、通年雇用が難しい農林業と観光業の担い手確保が狙いに据えられている。市全体では郡上カンパニープロジェクトが地域資源を使った仕事づくりと新規事業の創出を担う。地域と関わる働き方の全体像はFLASPOでも扱っている領域だが、郡上の場合は空き家と交流プログラムという二本の柱が先に立っている。
よくある質問
郡上市は今も協力隊を募集しているのか。令和7年度の総務省一覧には市名がないため、その年度の在籍は確認できない。募集の有無は年度ごとに変わるので、市の公式サイトと移住関連の募集サイトを直接見るのが確実である。募集の探し方・応募方法に窓口の探し方をまとめている。
任期を終えたあと、郡上に残れるのか。市の計画が示した実績では、八幡で退任した7名のうち6名、大和で退任した1名が定住した。全国の数字と比べても低くはない。岐阜県全体では直近5年間に任期を終えた80人のうち55人が定住し、定住率は68.8%。全国は8,762人のうち6,163人で70.3%である。
どの地域を選ぶのが有利か。有利不利ではなく、課題の種類が違うと考えたい。減少率が4割を超える和良や明宝は集落の維持そのものが論点で、住民との距離が近い代わりに仕事の裁量も大きくなりやすい。減少率が低い大和や白鳥は生活基盤が整っており、発信や団体づくりといった役割が前に出る。
住まいはどうなるのか。計画には空き家バンクや町家の改修を通じた住居の確保が繰り返し書かれているが、隊員の住居を市が用意するかどうかは募集ごとの条件である。石徹白のように地域の協議会が空き家を借り上げて貸し出す仕組みがある地区もあるため、受入団体がどこかによって住まいの話の進み方が変わる。
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