お試し移住は関係人口をどう動かすか|短期滞在の制度と参加者数を読む

関係人口2,263万人の内側

地域と関わる人の数は、国の調査で推計されている。国土交通省が2025年6月27日に公表した関係人口の実態把握の結果では、18歳以上の居住者約1億275万人のうち、約2,263万人が特定の地域に継続的かつ多様な形で関わっているとされた。割合では約2割強にあたる。

内訳を見ると、地域に足を運ぶ訪問系が約1,884万人で約18%、足を運ばずに関わる非訪問系が約379万人で約4%である。同じ省が2021年3月に公表した調査では、訪問系が約1,827万人で2割弱とされていた。数年を経て訪問系の推計は増え、訪問しない形も別枠で数えられるようになった。

ここで気づきたいのは、2,263万人の大半が「訪ねている」段階にとどまることである。暮らしの拠点を動かす人は、この母数のごく一部にすぎない。関わりの濃さには段があり、観光のような一度の訪問から、通う、滞在する、住まいを二つ持つ、移り住むという順に重くなる。

段の間には、気持ちだけでは越えられない距離がある。仕事をどうするか、住む場所をどう確保するか、往復の費用を誰が持つか。そこを埋める仕組みとして置かれているのが、短期の滞在を公的に支える制度である。関係人口のうち移住へ向かうのは2割という見立ても、この段差の話にほかならない。

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お試し移住は一つの制度ではない

「お試し移住」という言葉は制度名ではない。自治体が用意する体験住宅、国の事業として組まれた短期の受け入れ、民間の滞在プランなどが、まとめてそう呼ばれている。公的な裏づけと期間、費用の持ち方が違うため、同じ名前で語ると判断を誤る。

国の制度として数字が公表されているものを並べると、形の違いがはっきりする。総務省が令和8年4月に出した資料と、同省地域政策課の資料から、直近年度の参加者数を取ることができる。

仕組み 期間の目安 令和7年度の参加者 前年度
おためし地域おこし協力隊 2泊3日程度から 1,450人 1,149人
地域おこし協力隊インターン 2週間から3か月 1,414人 1,047人
ふるさとワーキングホリデー 2週間以上の就労型 877人(59団体) 858人(66団体)
地域おこし協力隊 最長3年 8,196人(1,187団体) 7,910人

上の三つは、いずれも任期のある協力隊に入る前の段に置かれている。おためしは2泊3日程度の短い体験で、令和6年度から参加者数の集計が始まった。インターンは2週間から3か月の幅で、活動の中身に踏み込む。ふるさとワーキングホリデーは滞在しながら働いて収入を得る形で、都市の学生や社会人が長期休暇に使いやすい。

自治体が運営する移住体験住宅は、この表には現れない。国の事業ではなく各市町村の単独事業であることが多く、全国の件数をまとめた統計がないためである。使えるかどうかは移住相談の窓口に直接当たるしかなく、空き状況も地域差が大きい。

数字の伸び方が示す使われ方

参加者数の変化を並べると、どの入り口が広がっているかが見える。協力隊インターンは令和3年度に106人、令和4年度に315人、令和5年度に393人と来て、令和6年度に1,047人へ跳ね、令和7年度は1,414人になった。2年で3倍を超える伸びである。

一方でふるさとワーキングホリデーは、令和6年度の858人から令和7年度の877人へと横ばいに近い。実施した団体数は66から59へ減っている。総務省がまとめた資料によれば、平成28年4月から令和8年3月までの累計参加者は6,856人で、参加者の約9割が満足し、約9割が再訪の意向を示したとされる。

同じ短期滞在でも、伸びているのは協力隊につながる経路の側である。背景として考えられるのは、受け入れ側の動機の違いである。協力隊のおためしやインターンは、自治体が隊員の確保を目的に組んでいるため、募集に力が入る。就労型の滞在は人手の確保が目的で、受け入れ側の体力に左右されやすい。

本体の協力隊は令和7年度に8,196人となり、取組自治体は1,187団体で受入可能な1,461団体の約81%に達した。年齢では20歳代が33.6%を占める。直近5年間に任期を終えた隊員のうち、およそ70.3%にあたる6,163人が同じ地域に定住している。短期の入り口を通った先に、残る人の層がある構図である。

住まいを二つ持つ形が制度になった

移住か否かの二択を崩す仕組みも整えられている。国土交通省は二地域居住の推進を掲げ、市町村が特定居住促進計画をつくり、空き家の活用や支援の体制を整える枠組みを設けた。計画をつくった市町村は交付金の要件で有利になる例もあり、制度の入り口として機能し始めている。

同省は二地域居住等支援法人の指定についても、施行後5年間で累計600法人という目標を示している。法人が窓口となって住まいや仕事の相談を受ける想定で、個人が自力で探す負担を下げる設計である。計画と法人の指定は各地で順次進んでおり、どの自治体が名乗りを上げているかは同省の資料で確かめられる。

この枠組みが関係人口の議論と重なるのは、住民票を動かさない関わりを公に数える土台になるからである。従来の人口統計は住民票の移動しか拾えず、週末だけ滞在する人や季節ごとに通う人は不在として扱われてきた。計画の中で滞在者を位置づければ、地域側も人数を前提に施策を組める。

注意すべきは費用である。住まいを二つ持てば家賃も光熱費も二重になり、往復の交通費が加わる。制度は相談や物件の確保を助けるが、負担そのものを消すわけではない。二地域居住の支援制度の使い分けを踏まえ、収入の見通しと合わせて考える必要がある。

学生が短期滞在を使うときの段取り

在学中に使いやすいのは、長期休暇に収まる形である。2泊3日のおためしは授業期間中の週末にも入れられ、2週間以上のインターンや就労型の滞在は春休みと夏休みに置くことになる。募集は年度の前半に出るものが多く、学年暦と照らして先に候補の時期を決めておくと動きやすい。

費用の扱いは制度ごとに違う。交通費や宿泊費を自治体が負担する枠が用意されていることもあり、募集要項に書かれた範囲を確認しておきたい。就労型の滞在は賃金が支払われる一方、飲食費が対象外とされるなど、どこまでが自己負担かが細かく定められている。差額を自分で埋められるかを先に計算しておく。

滞在中に何を見るかも、行く前に決めておくほうがよい。買い物と通院の場所、公共交通の最終便、携帯の電波、冬の路面。暮らしの条件は現地に数日いれば分かるが、意識していないと記憶に残らない。受け入れ側の人と何を話すかも、質問を三つほど用意しておけば時間の使い方が変わる。

終わった後の扱いも忘れずに置いておく。滞在で知り合った人との関わりは、連絡を取らなければ数か月で途切れる。訪問しない形で関わる人が約379万人と推計されている以上、離れた場所から続ける道はある。学生と地域の関わりの事例はFLASPOでも扱っている。Z世代が協力隊を選ぶ前に見る数字も、入り口の選び方の参考になる。

よくある質問

お試しの滞在に参加すると、その地域に移住する前提として見られないか。制度上はそのような縛りはない。おためしやインターンは、合わないと分かることも結果として位置づけられている。ただし受け入れ側は人手と時間を割いているため、判断の理由を言葉にして伝えるのが礼儀にあたる。

大学1年でも参加できるか。年齢や学年の要件は募集ごとに異なる。おためしの区分は社会人を含む幅広い層を想定しており、学生の参加を受け入れている自治体もある。要項に学年の指定がない場合は、窓口に問い合わせて滞在中の責任の持ち方を確認しておくと安心である。

ふるさとワーキングホリデーは単位になるか。制度としては単位認定を含まない。大学側がインターンシップ科目の対象として認める場合はあるため、学部の履修要項と就職支援の窓口の両方に当たる必要がある。認められないとしても、就労の経験として記録は残る。

訪問系と非訪問系の違いは実際の関わり方でどう出るか。訪問系は現地に足を運ぶ関わりで、祭りの手伝いや農作業の応援などが入る。非訪問系はふるさと納税や地域の産品の購入、オンラインでの手伝いなどである。推計では約4%と小さいが、学生にとっては交通費の壁を越えずに始められる入り口になる。

短期の滞在を何回くらい重ねれば判断できるか。回数の目安を示した公的な資料はない。季節で条件が大きく変わる地域では、暖かい時期と寒い時期の両方を見ておく価値がある。同じ場所に二度行くほうが、別の場所を二つ見るより暮らしの見通しは立てやすい。


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