10万人の町が5万人になるまで
新潟県十日町市の人口が最も多かったのは昭和25年で、104,318人が暮らしていた。それが令和2年には49,820人、ピーク時の47.8パーセントになっている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、令和32年に26,029人まで減る見通しだ。市が令和7年3月にまとめた第3期十日町市人口ビジョンが、この数字を正面から並べている。
内訳を見ると、減り方の質が途中で変わっている。出生数が死亡数を下回ったのは平成5年で、それ以降は自然減と社会減が同時に続いてきた。令和5年の出生数は190人で、昭和60年のおよそ4分の1。同じ年の死亡数は782人あり、生まれた数の約4倍にあたる。昭和60年と比べた死亡数は1.2倍で、つまり自然減の幅は出生側の落ち込みで広がってきた。
いっぽう社会減のほうは、平成20年代に広がったあと、平成30年代以降はやや縮まっている。令和5年の社会増減は380人の減で、平成28年の575人減からは縮小した。転入も転出も減るなかで、転出の減り方が転入を上回る年が多かったためだと市は説明している。人が入ってきたから縮まったのではなく、出ていく人の母数が細ったという読み方になる。
出ていくのは何歳で、理由は何か
年齢階級別の純移動を追うと、転出超過が大きいのは高校卒業の年齢を含む15〜19歳と、大学卒業や就職の年代である20〜24歳および25〜29歳である。令和5年の転出数は20〜24歳が最も多く、そのうち約7割が「職業」を理由に挙げている。進学より就職が、この年代を外に出している。
長期の動きには、別の層が重なって見える。国勢調査で5年ごとの移動を追うと、「10〜14歳から15〜19歳へ」と「15〜19歳から20〜24歳へ」の転出超過が毎回大きく、その直後の「20〜24歳から25〜29歳へ」では一貫して転入超過が出ている。出ていった世代の一部が、20代の半ばに戻ってきているということだ。ただし、この出入りの幅はどちらも過去より小さくなっている。
行き先も意外かもしれない。地域ブロック別で最も転出超過が多いのは東京圏ではなく、十日町市を除く新潟県内の他市町村である。次が埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県の東京圏で、茨城県・栃木県・群馬県の北関東も増加傾向にある。都市と地方という対立軸だけでは、この流れは捉えられない。20代前半の転出超過を都道府県別に見た整理と突き合わせると、県内移動の層の厚さが際立つ。
市は2,656人に調査票を送った
この人口ビジョンで目を引くのは、推計の後ろに本人たちの回答が置かれている点である。市は令和6年7月31日時点で市内に住民登録のある高校1年生から22歳までの2,656人を対象に、進路と定住、結婚観をたずねる調査を行った。期間は同年9月24日から10月20日まで、郵送で配り、返送とウェブの両方で回収している。
回収数は652件、回収率は24.5パーセントだった。回答者の内訳は高校生が52.8パーセント、大学生19.8パーセント、専門学校生11.4パーセント、会社員7.4パーセントで、進路を決める直前と直後の層が中心を占めている。
市への愛着をたずねた結果は、「愛着を感じる」36.7パーセントと「どちらかといえば愛着を感じる」38.4パーセントを合わせて75.1パーセント。愛着が低い側は合計8.0パーセントにとどまり、前回の令和元年調査より愛着を感じる割合はやや増えている。高校生に19歳時点の進路をたずねると、大学や短大への進学が53.8パーセント、専門学校が18.6パーセント、就職が10.5パーセントで、約7割が進学を見込んでいた。
「出る予定」と「いつか戻りたい」は同時に成り立つ
同じ高校生に19歳時点の居住地をたずねると、市内に住み続ける予定は11.8パーセントしかない。市外に住む予定を合わせると5割を超え、未定が36.6パーセントを占める。前回調査と比べると、市内に住み続ける予定が減り、未定が増えた。
| 質問 | 市内・戻る側 | 市外側 | 未定 |
|---|---|---|---|
| 19歳時点の居住地(高校生) | 市内に住み続ける 11.8% | 県内他市町村 18.5%/県外 33.1% | 36.6% |
| 25歳時点の居住地(全回答者) | 住み続けたい・戻りたい 49.9% | 住み続けたくない・戻りたくない 50.1% | — |
| 戻りたいタイミング | 20歳代 14.5%/30歳代 6.2%/40歳代 2.7%/時期未定だがいつかは 48.2% | 戻るつもりはない 28.4% | — |
25歳時点の意向は、ちょうど半分に割れた。一方で戻るタイミングを問う設問では、時期を決めていないが「いつかは戻って定住したい」が48.2パーセントに達し、年代を答えた人と合わせると7割強が定住を望んでいる。出る予定であることと、戻りたいと思っていることは、この年代では矛盾なく同居している。
分かれ目として市が挙げるのは愛着の度合いだ。愛着度が高い層で「戻るつもりはない」と答えたのは20.8パーセントだが、愛着度が低い層では68.1パーセントに跳ね上がる。性別では女性のほうが市外に住みたい割合がやや高く、学業・職業別では高校生と大学生・専門学校生が社会人より市外志向が強かった。18歳までに何を経験したかが、その後の選択の幅を決めていることになる。
同じ市内でも、時間の進み方が違う
十日町市をひとつの単位として見ると、実像を取り違える。昭和55年を100とした令和2年の人口は、松代地域で39.6パーセント、松之山地域で35.2パーセントまで落ちている。高齢化率も松之山地域が57.7パーセント、松代地域が50.1パーセントで、市全体の39.9パーセントを大きく上回る。13地区別に見ると、平成22年から令和2年までのどの5年でも全地区が減っていた。
県内の同規模の市と並べると、位置づけがはっきりする。昭和55年比で令和2年の人口は、佐渡市が60.6パーセント、十日町市が63.2パーセント、村上市が71.6パーセント、五泉市が76.2パーセント。十日町市は下から2番目で、村上市や五泉市より10ポイントほど低い。合計特殊出生率は従来は全国や新潟県より高い水準で推移してきたが、令和元年以降は他市と同程度に近づいた。
こうした地区差は、関わりの入口をどこに置くかという話に直結する。協力隊や移住の受け入れが市全体の平均で語られても、松之山と市街地では求められる担い手が違う。新潟県を含む北陸4県の協力隊の配置や過疎地域のUターンの実際を併せて見ると、同じ市の中にある濃淡が読み取りやすくなる。学生が関われる余地を探すなら、まず地区単位の数字を開くのが早い。地域との関わり方の選択肢はFLASPOでも整理されている。
よくある質問
十日町市は人口が減り続けているのに、なぜ事例として読む価値があるのでしょうか。減少そのものを止めた自治体はほとんどありません。この市が珍しいのは、推計値の横に当事者2,656人への調査結果を並べ、戻る意思がどこで折れるのかまで公表している点にあります。
社会減の幅が縮んだのは、移住策が効いたということでしょうか。市の分析はそう書いていません。転入数と転出数がともに減るなかで、転出の減り幅のほうが大きい年が続いたことを理由に挙げています。母数が小さくなった結果として差が縮んだという説明です。
若者が戻ってくる年代は特定できるのでしょうか。国勢調査ベースの長期的な動きでは、20〜24歳から25〜29歳になる区間で転入超過が続いています。アンケートで20歳代のうちに戻りたいと答えたのは14.5パーセントで、実際の移動と意向はおおむね同じ方向を指しています。
愛着はどうやって測られているのでしょうか。市への愛着を5段階でたずね、上の2つを愛着度が高い層として集計しています。この層とそれ以外で定住意向に大きな差が出たことから、市は若い世代が地域と接する機会そのものを施策の対象として扱っています。
高校生の回答と大学生の回答で違いはありましたか。25歳時点の居住地では、高校生と専門学校生・大学生のほうが社会人より市外志向が強く出ました。進路が確定していない段階ほど選択の幅を広く取るためと考えられ、働き始めた層では市内志向がやや戻っています。
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