役場の投稿と自分の投稿は、同じ画面でも扱いが違う
ゼミや学生団体で地域に入ると、たいてい途中で投稿の話になる。町の担当者から「学生の目線で発信してほしい」と言われ、自分のアカウントで写真を上げる。本人にとっては活動の記録でも、制度の上では「誰の表示か」という別の問いが立っている。並んで同じタイムラインに流れていても、町の公式アカウントの投稿と、依頼を受けた学生の投稿は、景品表示法の扱いが違う。
線を引いているのは、令和5年内閣府告示第19号である。消費者庁はステルスマーケティングの規制のページで、令和5年10月1日から、広告であるのに一般消費者が広告と分からない表示は景品表示法違反になると示している。あわせて押さえておきたいのは、規制の対象が商品やサービスを供給する事業者、つまり広告主の側だという点だ。依頼を受けて投稿したインフルエンサー等の第三者は、この告示の規制対象ではないと明記されている。
だからといって学生の側に関係がない話ではない。明示が抜けた投稿で処分を受けるのは依頼した自治体や事業者であり、その相手と来年も一緒に動くのは自分である。どこで線が引かれているかを先に知っておけば、投稿の文面を決める前に一言確認するだけで済む。
依頼が入った時点で、投稿は事業者の表示になる
判断のかなめは、投稿の内容を誰が決めたかにある。運用基準は、外形上は第三者の投稿に見えるものが事業者の表示とされるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合だとしている。具体例として挙がっているのが、事業者が第三者に対して、その第三者のSNS上に自らの商品や役務に係る表示をさせる場合である。町が学生に「この返礼品を取り上げてほしい」と頼めば、形式として学生の投稿でも、町の表示として読まれる。
逆に、事業者の表示とならない場合も列挙されている。第三者が自主的な意思に基づく内容として投稿する場合がまず挙がり、続いて、事業者が商品を無償で提供して投稿を依頼したものの、第三者が自主的な意思に基づく内容として投稿した場合も入る。宿泊や食事の提供を受けたこと自体が線を越える条件ではなく、内容のやり取りがあったかどうかが分かれ目になっている。SNS上のキャンペーンや懸賞に応募するための投稿も、自主的な内容であれば第三者の表示として扱われる。
現地で起きがちな形を、告示の枠組みに当てはめると次のように整理できる。
| 地域で起きる形 | 誰の表示とされるか | 広告であることの明示 |
|---|---|---|
| 役場の公式アカウントが自分の施策を投稿する | 事業者の表示 | 不要 |
| 観光大使が委嘱元の産品を投稿する | 事業者の表示 | 不要 |
| 学生が依頼を受けて自分のアカウントに投稿する | 事業者の表示 | 必要 |
| 学生が訪ねた先の産品を自分の判断で投稿する | 第三者の表示 | 不要 |
| 無償提供を受けたが、内容は自分で決めた | 第三者の表示 | 不要 |
| 自治体のSNS懸賞に応募して投稿する | 第三者の表示 | 不要 |
公式アカウントと観光大使は明示しなくてよい
表の上段二つには、根拠がきちんと書いてある。運用基準の第3には、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているかを問わない場合が並んでおり、そこに「事業者自身のSNSのアカウントを通じた表示を行う場合」が入っている。町のアカウントが町の催しを告知するのに、わざわざ広告と書く必要はないという整理である。
続く項目がもう一つ興味深い。「社会的な立場・職業等(例えば、観光大使等)から、一般消費者にとって事業者の依頼を受けて当該事業者の表示を行うことが社会通念上明らかな者を通じて、当該事業者が表示を行う場合」も、同じ扱いになっている。観光大使という肩書きが見えていれば、受け取る側は依頼に基づく発信だと分かる、という考え方だ。地域の委嘱を受けて動く立場なら、肩書きを隠さないほうが制度の上でも素直になる。
注意したいのは、この例外が「社会通念上明らかな者」に限られている点である。大学のゼミ生や学生団体のメンバーという立場は、画面の向こうから見て依頼関係が明らかとは言えない。学生としてPR大使を委嘱されているのか、単に依頼を受けただけなのかで扱いが変わるので、どちらの立場で動いているのかは、投稿を始める前に相手と言葉を合わせておきたい。
「広告」と書いてあっても埋もれていれば足りない
明示が必要だと決まった後、次に起きるのは書き方の問題である。運用基準は、記載があっても不明瞭とされる例を具体的に挙げている。文章の冒頭に広告と書きながら文中で第三者としての感想だと述べる場合、動画で一般消費者が認識できないほど短い時間しか示さない場合、周囲の文字より小さく表示して認識しにくくなった場合、薄い色や長文で読み取りにくくなった場合などが並ぶ。
地域の発信でとくに当てはまりやすいのは、ハッシュタグに関する項目だ。大量のハッシュタグを付けた文章の中に、事業者の表示である旨を埋もれさせる場合が、不明瞭なものとして名指しされている。地名と特産品と季節の語をいくつも並べる書き方は現地では定番だが、その列の末尾にPRの二文字を混ぜると、この例に当たりうる。末尾の位置に置いて視認しにくくする場合も、別項目で挙がっている。
やることはむずかしくない。本文の最初に、誰の依頼による投稿かが読み取れる言葉を一つ置く。委嘱を受けているなら肩書きを書く。これだけで、後から誰かに指摘されて消す作業が消える。投稿の作法そのものは学生団体のSNS運用の整理と重なる部分も多いので、団体として動いているなら合わせて確かめておくとよい。
地域の情報は、どの目的で見られているか
制度の話を片付けたら、次は届き方である。総務省が2026年6月26日に公表した令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書は、13歳から79歳の1,800人を対象に、2025年12月1日から7日までの行動を調べている。ここに、目的ごとに最も利用するメディアの集計がある。
「いち早く世の中のできごとや動きを知る」ために最も使われるのは、全年代でインターネットの55.4%だった。一方で「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」ためのメディアは、テレビの50.3%が最も高い。「趣味・娯楽に関する情報を得る」ではインターネットが70.8%で抜けている。同じ調査の信頼度では、インターネットは26.3%にとどまり、新聞の58.8%やテレビの57.9%と差がある。
この並びは、地域の発信を設計するときの目安になる。催しの日程や現地の様子を早く知らせる役は、SNSが向く。制度や数字の裏付けが要る話は、SNSだけで完結させると受け取る側の構えが足りない。移住や起業の相談につなげたいなら、投稿から自治体の要綱や統計のページへ渡す経路を用意しておく。一次情報の探し方は総務省の関係人口ポータルの読み方に整理がある。学生の側の関わり先を探す段階なら、FLASPOのような窓口から入ると、委嘱の有無や依頼の範囲が最初から文書で残る。
よくある質問
依頼されていないのに、勝手に町の特産品を褒める投稿をしても大丈夫か。運用基準は、第三者が自主的な意思に基づく内容として投稿する場合を、事業者の表示とならない例に挙げている。内容について先方とやり取りをしていなければ、明示は求められない。
交通費や宿泊費を出してもらった場合はどうなるか。無償提供そのものが線引きの決め手にはならないと運用基準は示しているが、同時に、事業者が表示内容の決定に関与したかどうかを客観的な状況で判断するとも書いている。日程に合わせて投稿を求められていたり、文面の確認が入っていたりすれば、関与があったと読まれる余地がある。迷う場面では明示しておくほうが安全である。
誤った数字を書いてしまったとき、投稿を消せば済むか。削除で画面からは消えても、引用や転載は残る。地域の統計は調査報告書の概要版のように公表資料の形で手に入るものが多いので、数字を使うときは出どころを本文かリンクに残しておく。訂正が必要になったときも、どこを直せばよいかがすぐ分かる。
町の公式アカウントの運用を任された場合、告示の対象はどちらになるか。アカウントの名義が自治体であれば、事業者自身のSNSアカウントを通じた表示として扱われ、広告であることの明示は求められない。ただし処分の相手は名義人である自治体になるため、投稿の決定権と承認の手順を書面で決めておく必要がある。学生が交代する前提の体制では、ここを口約束で済ませると引き継ぎのたびに揺れる。
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