同じ募集に、二通りの読み手がいる
地方創生インターンの募集ページを並べて読むと、求めている学生像がそろっていないことに気づく。片方は「地元で働く選択肢を知ってほしい」と書き、もう片方は「県外に出た学生に戻ってきてほしい」と書く。どちらも同じ名前の事業なので、同じ文章を出して片方で落ちる。
この二系統は制度の側にもはっきり書かれている。内閣府の令和7年度地方創生インターンシップに関する取組状況調査結果は、調査でいう地方創生インターンシップに「東京圏在住の地方出身学生等の地方還流」と「地元在住学生の地方定着」の二つの取組が含まれると注記している。東京圏の学生だけを対象にした事業ではない、という断り書きである。
人数を見ると、どちらが主流かもわかる。令和6年度に道府県が推進する枠で受け入れた大学生等は10,621人、うち東京圏からの受け入れは346人だった。令和5年度は10,404人のうち429人である。割合にすれば東京圏からは3パーセント台にとどまり、残りは地元や近隣に住む学生が占めている。
この比率は、エントリーシートの書き出しを左右する。定着側の事業に「いずれは地方に貢献したい」と遠い将来を書くと、読み手が知りたい「この春にこの現場へ来るのか」という点に触れないまま終わる。還流側に出すなら、いま住んでいる場所と出身地の関係を省かずに書く。どちらの枠かは、募集要項の対象者の欄と助成の条件を見れば判断できる。
| 取組の区分 | 想定される学生 | 令和5年度の受入 | 令和6年度の受入 |
|---|---|---|---|
| 東京圏在住の地方出身学生等の地方還流 | 地方出身で東京圏に住む学生 | 429人 | 346人 |
| 地元在住学生の地方定着 | 地元や近隣に住む学生 | 9,975人 | 10,275人 |
| 合計(道府県が推進する枠) | 43道府県の集計 | 10,404人 | 10,621人 |
なお表の定着側の人数は、合計から東京圏からの受け入れを引いた数である。調査は東京圏の1都3県を除く43道府県を対象にしており、道府県ごとに施策の内容が違うため単純な比較は難しいと注記されている。
募集要項に並ぶ「求められる能力」が設問の種になる
設問を眺めて何を書くか迷うときは、同じページの上のほうに戻ったほうが早い。文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省合意は、令和4年6月13日の改正でキャリア形成支援の取組を四つの類型に整理し、タイプ3とタイプ4をインターンシップと定義した。そのタイプ3には、募集要項などに9項目を記載して公表する情報開示要件が付いている。
9項目のうち、エントリーシートに直接効くのは「就業体験を行う際に必要な(求められる)能力」の欄である。ここに書かれた言葉は、受け入れ側が現場で困っている作業の言い換えになっている。「住民との対話」とあれば聞き役が足りておらず、「資料の整理」とあれば手が足りていない。設問の文言より、この欄のほうが具体的である。
中身の重さも要件から読める。タイプ3は実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てることが求められ、期間は汎用的能力活用型で5日間以上、専門能力活用型で2週間以上とされている。5日の枠でも、半分以上は現場にいる設計である。見学の感想を書く場ではなく、手を動かせるかどうかを見られていると考えておく。
もう一つ、指導要件として終了後のフィードバックが前提になっている。つまり提出した文章は、受け入れ側が「この学生に何を返すか」を考える材料にもなる。到達点を書かずに意欲だけを並べると、返す側が困る。
志望理由に入れる地域の事実は、一つに絞って出所を書く
地域の事情を調べたことを示したくなると、人口と産業と観光を一度に詰め込みがちである。読み手の関心はそこにない。内閣府の令和7年度地方創生インターンシップに関する取組状況調査結果の別紙3には、43道府県が答えた課題が並んでいて、回答数の多い順に「参加学生の募集や事業の周知」が38、「インターンシップ参加者の就業・定着への接続」が31、「インターンシップの効果検証」が27、「質の高いインターンシッププログラムの設計」が22となっている。
周知と定着が上位に来ているのは、来てくれる学生を集めきれず、来たあとにつながらないという二つの詰まりを抱えているという意味である。だから志望理由では、知った経緯と、参加後に続ける気があるかどうかを先に示したほうが届く。
地域の事実は一つでよい。その一つに出所を添える。道府県の公表資料、市町村の広報、所管省庁の統計のいずれかであれば、読み手は確かめられる。数字を引くときは年度まで書く。古い数字をそのまま使うと、現場の人には一目でわかる。
書き方そのものを整えたいときは、ESの志望動機の書き方で扱っている組み立てを土台にして、地域の事実を一つ差し込む形にすると早い。制度の全体像があいまいなら、地方創生インターンとはを先に通しておくと設問の前提がそろう。
経験の欄は、期間の長さより関わり直した回数で読まれる
長く続けた話を書かなければいけないと思い込むと、材料がないという結論になりやすい。実際の枠は短いものが多い。調査の別紙3で実施期間を複数回答で聞いた結果は、数日が26、1日が14、通年が10、数週間が9、半年以上が6、数か月が2である。1週間に満たない枠が最も多い。
短い枠が主流なら、求められているのは継続の実績ではなく、短い時間で状況をつかむ力になる。三年続けた話を圧縮するより、半日で何を見て何を変えたかを書いたほうが、同じ字数で情報量が多い。
そのうえで効くのは、一度で終わらせなかったという痕跡である。参加後のフォローアップの回答も、参加報告書へのフィードバックが16、採用情報やUターン・Iターン就職に関する定期的な情報提供が14、継続的な就職支援や個別相談の実施が14と並ぶ。受け入れ側は、関係が続く相手を探している。
だから経験の欄では、通った回数や二度目に変えたことを一行入れる。素材の選び方に迷うなら、ESのガクチカの書き方にある記録から選ぶ手順が使える。記憶ではなく記録から拾うと、関わり直した回数が自然に出てくる。
出す前に確かめる三つの実務
一つめは助成の有無である。令和6年度に学生への助成を行ったのは20道府県で、実績は3,081人に44,226,920円だった。単純に割れば1人あたり1万4千円台になる。企業への助成は3道府県の46社に2,989,203円で、支援の重心は学生側にある。交通費や宿泊費の申請欄がある募集では、見積もりの数字を先に用意しておく。
二つめは選考の線引きである。厚生労働省が出しているQ&Aは、参加者の決定にあたって性別や年齢、障害の有無による差別的な取扱いを行うべきではないとし、公正な採用選考の観点で求めている「就職差別につながるおそれがある14事項」についても、募集にあたって配慮する必要があるとしている。家族の職業や住宅の状況のように、書かなくてよいことがあると知っておく。
三つめは、別の入口が同じ地域に用意されていることである。総務省の関連制度のページによれば、地域おこし協力隊インターンは期間が2週間から3か月で移住の要件がなく、必要に応じて書類審査や面接などの選考を設定できる。総務省の集計では令和6年度の参加者は1,047人で、うち150人が隊員に任用された。翌年度の任用見込みを含む数である。
この三つを確かめてから設問に戻ると、何を削るかが決まる。地域での活動の選択肢をもう少し広く見たい人は、FLASPOのような学生向けの地域プログラムの一覧とあわせて、同じ時期の募集を横に並べて比べてみるとよい。
よくある質問
地元出身ではない地域に出しても読まれるか。読まれる。調査が定義する二つの取組のうち、還流は地方出身で東京圏に住む学生を想定しているが、定着側の事業も対象者を出身地で区切っているとは限らない。募集要項の対象者欄に居住地や在学地の条件が書かれていなければ、志望理由で地域との接点を自分でつくって示す。
エントリーシートに書いた内容は、そのまま採用の選考に使われるのか。時期で変わる。三省合意の整理では、タイプ3のインターンシップに限り、取得した学生情報を採用活動開始以降に使えるとされ、その旨を募集要項に記載することが情報開示要件に含まれている。記載のない募集では、選考に回す前提になっていない。
数字を引く自信がないときはどうするか。無理に引かない。出所を確かめられない数字を書くほうが損である。代わりに、公表資料の中で自分が確かめた一文を引いて、そこから考えたことを書く。読み手は数字の多さではなく、確かめた跡を見ている。
複数の道府県に同じ文章を出してよいか。骨組みは共通で構わないが、地域の事実と参加後に続ける手段の二か所は書き換える。受け入れ側の課題の上位が周知と定着である以上、その二点が入れ替わっていない文章は、どこに出しても同じ読まれ方になる。
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