コンサル業界と若者|離職率36.5%の内訳と20代が置かれる場所

三年目の秋に辞めるかどうかを迷う人が、コンサルティング会社には一定数いる。提案書とヒアリングと分析に追われて二年半が過ぎ、気づくと同期の数が減っている。厚生労働省が令和7年10月に公表した離職状況を見ると、この肌感覚には裏づけがあった。学術研究、専門・技術サービス業に就いた令和4年3月卒の大学生は、三年以内に36.5%が職場を離れている。数字そのものより、どの時点でなぜ抜けるのかを先に知っておくほうが、二十代の判断には効く。

最初に割り当てられるのは、調べて揃える側の仕事

入社して半年のうちに任されるのは、たいてい資料の材料を集める役である。公開情報の洗い出し、インタビューの記録、表計算の一部を預かって数字を組み替える作業。顧客の前で話す場面は限られ、会議では議事を取りながら議論の流れを追う。仕事の単位が会社や部署ではなくプロジェクトなので、三か月から半年ごとに顧客も上司も同僚も入れ替わる。

この編成には二つの顔がある。短い周期で別の業界に触れられるため、場数は同年代より早く積み上がる。一方で、評価する人が案件ごとに変わるため、前の案件での働きぶりが次の評価にそのまま引き継がれるとは限らない。配属のたびに自分の立ち位置を説明し直す手間が生じる、という点は入る前に想像しておきたい。

一年目の一週間を具体に落とすと、月曜の朝に先週分の分析を直し、火曜と水曜で顧客の担当者に話を聞き、木曜に出す資料の骨組みを上席と詰め、金曜の報告会に向けて数字の裏取りをする、という往復になる。自分で主題を決める余地は小さい代わりに、一つの論点を何度も作り直す過程を間近で見られる。ここで言葉の精度を落とさない癖がつくかどうかが、二年目以降の持ち場の広さを決めていく。

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36.5%という離職率を、産業の並びに置き直す

同じ数字でも、比べる相手を変えると見え方が変わる。令和4年3月卒の大学生について、就職後三年以内の離職率を産業別に並べると次のようになる。

産業 3年以内離職率
宿泊業、飲食サービス業 55.4%
教育、学習支援業 44.2%
学術研究、専門・技術サービス業 36.5%
調査産業計 33.8%
卸売業 30.0%
情報通信業 27.2%
金融業、保険業 25.0%
製造業 21.2%
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」より。大学卒の就職後3年以内の離職率。コンサルティング会社の多くは「学術研究、専門・技術サービス業」に分類される。

全産業の平均である33.8%を2.7ポイント上回る位置にある。ただし飲食や教育のような五割前後の層とは明らかに離れており、金融や製造より高いという程度の差だと読むのが妥当である。しかも前年、令和3年3月卒の同じ産業は38.3%だったので、一年で1.8ポイント下がっている。離職の勢いが増しているわけではない。

時期の偏りも押さえておきたい。大学卒の全体で見ると、一年目に離れる人が12.1%、二年目が11.9%、三年目が9.9%である。辞める判断は最初の二年に寄っていて、三年目まで残った人の多くはそのまま続く。二十代前半の二年間が分かれ目になるという構図は、業界を問わず共通している。

もう一点、業界の括りが広いことにも注意したい。この産業分類には法律事務所や会計事務所、設計やデザインの事務所、学術研究機関も含まれる。コンサルティング会社だけを抜き出した離職率が公表されているわけではないので、36.5%は近い業種をまとめた目安として扱うのが正確である。

一社あたり416人という、意外に小さい器

業界の規模感は、就活の情報サイトではなく統計から掴むほうが早い。経済産業省の企業活動基本調査(2025年調査、2024年度実績の速報)によれば、学術研究、専門・技術サービス業の一企業当たり常時従業者数は416人、売上高は176.3億円、付加価値額は45.0億円だった。調査対象となった全産業の合計は511人・262.2億円・50.6億円なので、人も売上も平均を下回る。調査の対象は従業者50人以上かつ資本金等3,000万円以上の会社に限られるため、これは中堅以上の会社だけを数えた値である。

注目したいのは前年度との差で、常時従業者数は2.7%減ったのに営業利益は14.1%増え、経常利益も12.5%伸びた。人を増やさずに利益を押し上げた一年だったということになる。採用を広げる局面と、既存の人員で単価を上げる局面は、入社後の育成の手厚さが変わる。選考の説明会で採用人数の推移を聞いておく価値はここにある。

規模は離職率にも効く。事業所規模別に大学卒の三年以内離職率を見ると、1,000人以上では27.0%、100〜499人で33.9%、30〜99人では41.9%と階段状に上がる。数十人規模のブティックと総合系の大手を同じ「コンサル」として比べると、この差を見落とす。

二十代で伸びる力と、伸びにくい力

短い案件を回し続けると、情報を構造に落とす速度、議論を一枚にまとめる技術、初対面の相手から話を引き出す度胸は確実に上がる。問いを立てて検証し、結論を言葉にするまでの型が身につくので、どの業界へ移っても最初の三か月で戦力になれる。ここがコンサル業界が若者から支持される背景の中身でもある。

逆に、積みにくいものもある。一つの事業を数年にわたって担い、損益の責任を負い、現場の運用を自分の手で直す経験は、助言する立場では回ってこない。専門分野も偏る。たとえばM&Aの案件に入る働き方では財務と契約の知識が深まるが、製品を作って売る工程の勘所はつきにくい。三十代で事業側へ移る人が多いのは、この穴を埋めにいく動きだと理解できる。

入る前に確かめておきたい四つの点

一つ目は、最初に入るプロジェクトの長さである。三か月で終わる案件ばかりか、一年以上の常駐があるかで、学べる深さが変わる。二つ目は評価の単位。案件ごとの採点か半期の目標管理かで、動き方の正解が違ってくる。三つ目は稼働時間の実績値を、繁忙期の月で聞くこと。平均の数字は閑散期に引っ張られる。四つ目は二年目以降の道筋で、社内異動や出向、留学の制度が実際に何人使ったかまで確かめたい。

勤務地も見落とされがちな条件である。案件が都市部に集中する業界なので、入社と同時に住む場所がほぼ決まり、数年は動かしにくくなる。働く場所と暮らす場所をまとめて考えたい段では、FLASPOのように住まいと地域の情報をまとめて見られる場を併せて使うと、内定後に慌てて部屋を探す展開を避けられる。

よくある質問

離職率が平均より高いのは、やはり激務だからなのか。労働時間が理由の一つであることは否定しにくいが、数字はそれだけでは説明できない。転職市場で評価されやすい職種のため、辞める側の選択肢が多いことも離職率を押し上げる。同じ36.5%の中に、疲れて退く人と好条件で移る人が混ざっている。

三年は勤めたほうがよいのだろうか。年数そのものに意味があるわけではない。ただ一年目に離れた人が12.1%いる一方で、二年目を越えると離職の割合は下がっていく。案件を二周して評価の基準が見えてから判断するほうが、同じ悩みを短い間隔で繰り返さずに済む。

未経験でも入れるのか。新卒採用については、特定の学部や資格を前提にしない会社が多い。ただし選考でケース形式の課題が出るため、答えの正しさより、前提を置いて筋道を言葉にできるかを見られる。練習の有無が結果を分けやすい部分である。

大手と小規模のどちらを選ぶべきか。研修や制度の手厚さを重く見るなら前者、若いうちから顧客の意思決定に近い席に座りたいなら後者が合う。ただし事業所規模が小さいほど三年以内に離れる人の割合は高い。1,000人以上の27.0%と30〜99人の41.9%という開きを、覚悟の量として受け取っておきたい。

出典


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