九州で協力隊を探すと、候補の市町村が一気に増える。阿蘇の山あい、五島や奄美の島、宮崎の平野部まで性格がばらばらで、どこから手をつけるか決めにくい。令和7年度の公表値を八県で並べると、隊員の数より受け入れ側の数のほうが目立つ圏域だとわかる。
八県で1,131人、受け入れ自治体は206団体
令和8年4月24日公表の総務省の集計で福岡から沖縄までを足すと、隊員は1,131人になる。全国8,196人に占める割合は13.8パーセントだ。
一方、受け入れ自治体は206団体で全国1,187団体の17.4パーセントを占める。隊員の割合より自治体の割合が3.6ポイント高く、一か所あたりは5.5人と全国平均6.9人を下回る。少人数ずつ数多くの市町村が手を挙げている圏域という読み方になる。
九州は市町村の数そのものが多い。同じ資料で全国の取組自治体は前年度から11団体増えて1,187団体になり、受け入れ可能な1,461団体の約81パーセントに達した。八県の206団体はその一部だが、母集団の広さがそのまま選択肢の多さになっている。圏域ごとの比較は地域別の受け入れをまとめた記事にある。
全国の隊員数は前年度から286名増えて8,196人になった。ただし受け入れ可能な自治体の八割がすでに動いている以上、これから枠が倍増する展開は考えにくい。いま出ている募集の性格を見分けるほうが、待つより現実的だ。
熊本297人に対して佐賀は45人
県別に置き換えると、最多と最少で六倍以上の差がつく。面積や人口の違いだけでは説明しきれない開きがある。
| 県 | 隊員数(人) | 受入自治体数(団体) | 1自治体あたり(人) | 定住率 |
|---|---|---|---|---|
| 熊本県 | 297 | 40 | 7.4 | 70.2% |
| 宮崎県 | 203 | 24 | 8.5 | 55.6% |
| 鹿児島県 | 165 | 40 | 4.1 | 72.4% |
| 福岡県 | 135 | 31 | 4.4 | 69.2% |
| 長崎県 | 104 | 19 | 5.5 | 60.9% |
| 大分県 | 93 | 17 | 5.5 | 73.9% |
| 沖縄県 | 89 | 19 | 4.7 | 61.2% |
| 佐賀県 | 45 | 16 | 2.8 | 68.3% |
| 九州・沖縄8県 | 1,131 | 206 | 5.5 | 67.2% |
| 全国 | 8,196 | 1,187 | 6.9 | 70.3% |
熊本297人は全国で八番目に多い。阿蘇から天草、球磨まで40団体が受け入れており、県内のどの方角にも配属先がある。鹿児島も同じ40団体だが隊員は165人で、一か所あたりは4.1人と薄い。離島を含めて広く配っている形だ。
佐賀45人、沖縄89人、大分93人は八県の下位に並ぶ。ただし佐賀は16団体で45人なので、県内のほぼ全域に枠があるとまでは言えない。観光地のイメージが強い沖縄も、隊員数で見れば全国では小さいほうに入る。
九州七県だけを足すと1,042人、187団体になる。沖縄の89人と19団体を加えて1,131人という内訳だ。熊本と宮崎の二県で500人を占め、残る六県が631人を分け合う形になっている。
新富町36人と、一人だけの自治体
市町村まで下ろすと、同じ県の中で桁が違う。宮崎では新富町が36人を抱え、都農町25人、椎葉村21人、高鍋町19人と続く。県全体203人の半分強が、この四町村に集まっている計算になる。
熊本は高森町と南阿蘇村がそれぞれ21人、宇城市18人、御船町17人、天草市16人。阿蘇周辺と天草に厚みがある。大分では豊後高田市16人が最多で、宇佐市と佐伯市の10人が続く。福岡は福智町と八女市の17人、うきは市13人が目立つ。
島の受け入れも多い。長崎は五島市13人、新上五島町12人、壱岐市9人と離島が上位を占める。鹿児島はトカラ列島の十島村12人、大崎町11人、与論町8人。沖縄は本部町19人、久米島町13人、竹富町9人、国頭村8人で、本島北部と離島に分かれる。
その一方で、福岡市1人、北九州市1人、大牟田市3人のように一桁の自治体がずらりと並ぶ。206団体という数字の中身は、二桁を抱える数十の自治体と、一人か二人で回している多数の自治体の組み合わせになっている。
佐賀は16団体45人で、県の直轄枠5人のほか大町町6人、小城市5人、伊万里市5人、多久市4人と一桁が並ぶ。隊員数が少ない県ほど、募集が出たときに動けるかどうかで結果が変わる。
定住率67.2パーセント、宮崎は全国最低の55.6パーセント
任期後に残るかどうかでも八県は割れている。令和2年4月から令和7年3月までに任期を終えた1,429人のうち、同じ地域に定住したのは960人で67.2パーセント。全国の70.3パーセントを3.1ポイント下回る。
高いほうは大分73.9パーセント、鹿児島72.4パーセント、熊本70.2パーセント。低いほうは宮崎55.6パーセントで、これは47都道府県で最も低い値だ。長崎60.9パーセント、沖縄61.2パーセントも全国平均から十ポイント近く離れている。
宮崎の内訳は、任期終了223人に対して定住124人。新富町のように大人数を回している自治体があると、任期を終えて出ていく人数も増える。数が多い県ほど率が下がりやすいという傾向は、ここでもはっきり出ている。
母数そのものも県で大きく違う。熊本325人、鹿児島239人、宮崎223人、大分184人、福岡182人に対し、佐賀は63人、沖縄は98人しかいない。母数が小さい県の率は数人の増減で動くので、順位をそのまま受け取らないほうがよい。
全国では任期終了8,762人のうち6,163人が同じ地域に残り、5,038人は活動した市町村そのものに住み続けている。県内の別の市町村へ移る人も含まれるため、県の定住率と「その町に残った割合」は別物として読む必要がある。
選択肢が多い圏域での絞り方
206団体すべての募集要項を読むのは現実的ではない。先に県を絞るのではなく、一自治体あたりの人数から入ると早い。熊本7.4人や宮崎8.5人のように平均が高い県には、同期が何人もいる配属先が含まれている。
逆に鹿児島4.1人や佐賀2.8人の県では、一人配属が当たり前という前提で考えておきたい。相談相手が役場の担当者だけになる場面もあるので、着任前の面談でサポート体制を確かめておく価値がある。
島を志望する場合は、生活費の構造が本土と変わる点も見ておく。渡航費や物流コスト、住まいの確保しやすさは自治体ごとに扱いが異なり、募集要項に書かれていないこともある。
年齢の面では、全国の隊員の33.6パーセントが20代、30.1パーセントが30代を占める。40代が20.1パーセント、50代が11.5パーセントなので、どの年代でも入口はある。移住後の仕事や暮らしの組み立てまで含めて考えるなら、FLASPOのように地域とつながれるサービスも並行して見ておくとよい。似た構造の整理は中部5県をまとめた記事でも行っている。
よくある質問
九州で一番募集が多い県はどこか。隊員数では熊本の297人が最多で、受入自治体数は熊本と鹿児島がともに40団体で並ぶ。候補地の多さを重視するならこの二県から見ていくのが早い。
沖縄の協力隊は少ないのか。令和7年度は89人、19団体で、八県の中では下から二番目にあたる。本部町19人、久米島町13人、竹富町9人に集まっており、枠が限られるぶん時期を逃さない情報収集が要る。
宮崎の定住率が低いのは避けたほうがよいという意味か。そうとは限らない。55.6パーセントは任期終了223人を母数とした五年分の累計で、短期の受け入れを多く回している自治体を抱える県ほど下がりやすい。配属先ごとの実績を個別に聞くほうが実態に近い。
短期で試す方法はあるか。数日から数週間の「おためし」は令和7年度に全国1,450人、二週間から三か月程度のインターンは1,414人が参加している。本採用の募集が出ていない自治体でも、短期の枠なら動いていることがある。
数字の出典は何か。隊員数、受入自治体数、市町村別の人数、定住率はいずれも総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の調査結果による。定住率は直近五年に任期を終えた隊員を母数とした数値で、単年度の割合ではない。
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