移住先の人気ランキングは毎年いくつも出るが、そのほとんどは希望を聞いた結果である。行きたい場所と実際に住民票を移した場所は別物で、若い世代ではとくにずれが大きい。総務省が毎年1月に公表する住民基本台帳人口移動報告には、どの年齢層が何人どこへ移ったかが載っている。希望ではなく実数を見て、若者の移動先を確かめてみる。
県境を越えて移る人のうち、最も多いのは20代前半である
総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告 2024年結果によると、2024年に都道府県の境を越えて移動した人は252万3,249人だった。前年より2万1,390人、0.8パーセントの減少で、二年連続で減っている。
年齢5歳階級別に見ると、20〜24歳が58万3,571人で最も多く、次が25〜29歳の52万9,518人、その次が30〜34歳の31万358人である。外国人を除いた日本人だけで見ても順番は同じで、20〜24歳が49万1,814人、25〜29歳が43万5,006人、30〜34歳が25万4,669人となっている。一方で15〜19歳は12万1,527人にとどまる。進学で動く人よりも、就職や転職で動く人のほうが県をまたぐ移動では多いという構図である。移住先を考える材料としてどの年齢層の数字を見るかによって、浮かび上がる地域が変わる。全世代の合計だけを見ていると、若者の動きは埋もれてしまう。
入ってくる人が出ていく人より多い県は、7つしかない
2024年に転入超過、つまり転入者が転出者を上回った都道府県は7つだった。残る40道府県は転出超過である。
| 都道府県 | 2024年の転入超過数 | 2023年 | 前年からの増減 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 79,285人 | 68,285人 | +11,000人 |
| 神奈川県 | 26,963人 | 28,606人 | -1,643人 |
| 埼玉県 | 21,736人 | 24,839人 | -3,103人 |
| 大阪府 | 16,848人 | 10,792人 | +6,056人 |
| 千葉県 | 7,859人 | 4,785人 | +3,074人 |
| 福岡県 | 4,160人 | 4,387人 | -227人 |
| 山梨県 | 82人 | -586人 | +668人 |
上の4つで転入超過の大半を占める。山梨県は前年の転出超過から転入超過に転じ、逆に滋賀県は転入超過から転出超過に変わった。転出超過の側で最も多いのは広島県の1万711人、次いで愛知県の7,292人、兵庫県の7,287人、静岡県の7,271人である。県庁所在地に大学や企業が集まる県でも、県全体では出ていく人のほうが多い。移住先として名前が挙がりやすい長野県は1,530人、沖縄県は1,529人の転出超過だった。希望地ランキングとの差を扱った都道府県別の移住先ランキングの記事も合わせて見ると、順位と実数のずれがはっきりする。
東京圏の20代前半は、47都道府県のどこからでも入ってくる
若者の移動先を一点に絞るなら東京圏になる。埼玉・千葉・東京・神奈川の4都県を合わせた東京圏は、2024年に13万5,843人の転入超過で、前年より9,328人拡大した。年齢別の内訳を見ると、転入超過が最も多いのは20〜24歳の8万6,908人で、次が25〜29歳の3万2,065人、その次が15〜19歳の2万827人である。前年と比べて最も拡大したのも20〜24歳で、5,371人の増加だった。
この20〜24歳について道府県別に見ると、すべての道府県で東京圏への転入超過になっている。つまり東京圏から見れば、46道府県のどこからも20代前半が流入している状態である。前年より流入が拡大したのは茨城県の815人、静岡県の477人、宮城県の354人など37道府県で、縮小したのは滋賀県の72人、三重県の63人、大阪府の18人など6府県にとどまった。逆に東京圏から出ていく側では、60〜64歳の4,544人、55〜59歳の3,239人、65〜69歳の3,030人が多い。若いうちに入り、引退前後に出る流れが年齢別の数字に現れている。
大阪圏と名古屋圏では、若者の出入りの形が違う
三大都市圏をまとめると11万9,666人の転入超過だが、東京圏以外の二つは様子が異なる。大阪府・兵庫県・京都府・奈良県を合わせた大阪圏では、転入超過が最も多い年齢層は15〜19歳の6,231人である。前年より364人拡大し、15〜19歳はこれで11年連続の転入超過となった。ところが転出超過のほうを見ると、最も多いのは25〜29歳の1,749人、次が20〜24歳の1,711人である。進学で入り、就職の時期に出ていく形になっている。ただしこの20〜24歳の転出超過は前年より1,388人縮小しており、流出の勢いは弱まっている。
愛知県・岐阜県・三重県の名古屋圏は11年連続の転出超過で、年齢別では20〜24歳の5,723人が最も多い。次が25〜29歳の4,433人、その次が15〜19歳の1,953人である。前年より最も拡大したのも20〜24歳の329人だった。製造業の集積地として雇用はあるが、20代前半の流出が止まっていない。若者向けの移住先という観点では、都市圏の規模や求人数よりも、同じ年齢層で実際に出入りの差がどちら向きに出ているかを見たほうが実態に近い。
若者向けの移住先を探すなら、三つの数字を順に見る
一つ目は年齢別の転入超過である。県全体では転出超過でも、特定の年齢層では流入が出ている場合がある。大阪圏の15〜19歳がその例で、全体の数字だけでは見えない。移住を考える本人の年齢に近い階級で、入ってくる人と出ていく人の差を確かめるのが出発点になる。
二つ目は変化の方向である。2024年に転入超過へ転じた山梨県のように、水準は小さくても向きが変わった県がある。転出超過が縮小した側では福井県の1,718人、長崎県の1,442人が目立ち、逆に拡大した側では茨城県の4,177人が最大だった。三つ目は節目の年齢で何が起きているかである。15〜19歳と20〜24歳のどちらで動いているかによって、進学と就職のどちらが流出の入口になっているかが分かれ、受け入れ側が用意すべきものも変わる。学校を増やす話と仕事を作る話は別である。FLASPOのように学生が地域と関わる取組でも、関わる相手の地域がどの年齢で人を失っているかを知っているかどうかで、提案の精度が変わってくる。移住先の選び方の記事と移住の現状を数字で確かめる記事に、相談件数や支援制度の側から見た材料をまとめている。
よくある質問
住民基本台帳人口移動報告はどんな統計ですか
市区町村に届け出られた転入の記録をもとに、総務省統計局が毎月と毎年集計している統計である。日本人と外国人の両方を含み、都道府県別・年齢5歳階級別の転入者数、転出者数、その差である転入超過数が公表される。2024年分は2025年1月に公表され、都道府県間の移動者数は252万3,249人だった。アンケートによる希望調査ではなく、届け出の実数である点が特徴になる。
転入超過が7都府県だけというのは例年と比べて少ないのですか
2023年も転入超過は7都府県で、顔ぶれは滋賀県が抜けて山梨県が入った形である。転入超過数が拡大したのは千葉県・東京都・大阪府の3都府県、縮小したのは埼玉県・神奈川県・福岡県の3都府県だった。数が大きく動いているのは東京都で、前年より1万1,000人の拡大となっている。
地方へ移住する若者は増えていないのでしょうか
東京圏への20〜24歳の転入超過は8万6,908人で、前年より5,371人拡大している。すべての道府県から東京圏への転入超過が続いている状況で、全体の流れとしては地方から東京圏への移動が強まった年だった。ただし道府県別には流入が縮小した6府県があり、転出超過が縮小した県も14ある。全国の合計と個別の県の動きは分けて読む必要がある。
移住先を選ぶときにランキングを見るのは意味がないのですか
希望地のランキングは関心の所在を知る材料になるが、受け入れ体制や雇用の有無を保証するものではない。希望が多い県で実際には転出超過が続いている例もあるため、関心の高さを示す調査と、届け出に基づく転入超過の実数を並べて見るのが現実的である。年齢別の数字まで下りると、同じ県でも世代によって向きが違うことが分かる。
年齢別や都道府県別の細かい数字はどこで調べられますか
統計局の住民基本台帳人口移動報告のページに、結果の概要と統計表が年ごとに掲載されている。概要には都道府県別の転入・転出・転入超過の一覧表、三大都市圏ごとの年齢5歳階級別の転入超過数、東京圏については道府県別の内訳まで収録されている。市区町村単位の数字も統計表から追える。
出典
総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2024年結果」(2025年1月公表)結果の概要
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